10.昼休み
白龍騒ぎの後は、とくに何事もなく過ぎていった。
精霊達についての知識はとても面白かった。
ちらっと魔法の民について話されたけど、魔法の民は精霊には見えないらしく、精霊術を使えないらしい。だから、魔法を開発して魔法の民となったという。
「一緒に食堂いこう?」
そう話しかけてきたのは、クラスのエルトと言う子だ。
たしか、公爵家のお嬢様だったような。
「いいですよ。」
そういうと、エルトは少しムッとしたようだ.
「敬語は必要ないから。気軽に接して。」
気軽でいいのか?いや、でも確かにこの学園では立場は関係ないけれども。でも、公爵たぞ?王様に一番近い家柄だよな?
「迷わなくていいよ。気軽に接してね。」
二度言われた。これは、気軽に接していいのかな。
まぁ、どうにでもなれ。
「分かった。これでいい?」
そういうと、エルトは嬉しそうにうなずいた。
「じゃあ、行こう。」
でも、何故小走りなのですかー。
―――場所移動中ー――
「ハァハァ」
「何で、小走り始めたエルトが息切れしてるの?」
隣のお嬢様の体力なめてました。
まさか、小走り3分で息切れするなんて。
私?私は息切れしてないよ。このくらいで息切れすると、最初のジオルグで死んでるから。
結局、酸欠と恐怖で気絶してテライトに助けられたな。まあ、時間稼ぎはできたと思っとこう。
「だって....急がないと......席が..うまる。」
何か庶民的な行動。それでいいのかお嬢様。
「はいはい。もうすぐだからがんばって。」
立場逆だよね。私は今日転校してきたばっかりなのに。
エルトの行く末が不安だ。
「やっと着いたー!」
「席ある?」
私達が着いた時にはけっこうな人がもう来ていた。
これ席あるかなぁ?
「向こうにあるよ。急ごうか。」
おぉ、目がいいお嬢様だな。
行ってみると確かに席があった。
荷物をおいて、席を取っておく。
「アイはランチAかランチBどっちを食べる?」
メニューを見てみると、Aにジオルグの肉が入っていたので、そちらを頼む。
「ランチAで。」
「なら、ランチAを二つ頼んでくるね。ちょっと待ってて。」
そういわれたけど、心配なのでついていく。
「ほれ、ランチA二つ」
食堂のおばさんから、ランチAを二つ貰った。お盆に入っている。
最初、エルトが一人で持とうとしたけど、こぼしそうだったので、一人ひとつもって席についた。
「アイよりお姉さんなのに....」
そうなのだ。エルトは19歳で私の2つ上なのだ。エルトの入学が遅れたため同学年にいる。ちなみに、この世界の結婚適齢期は20から35くらいだという。結構長い。平均寿命100歳。長い。精霊との関わりで、寿命が延びるときいた。
「エルトが、小さいからですよ。」
ニヤニヤしながら嫌味のように言う。
そうすると、エルトはちょっと拗ねたようになる。
「アイが身長高いだけ....」
かわいい。エルトとは仲良く出来そうだ。
ランチAは日本の唐揚げ弁当っぽい見た目だった。
とても美味しかった。
その後はエルトが学園を案内してくれた。途中途中、他のクラスメートがついてきて、詳しく教えてくれた。
学園は、とても広く迷いそうだったけど、地図を渡してくれたので、大丈夫そうだ。
キーンコーンカーンコーン。
「あっ、授業が始まるよ。アイ、教室に戻ろう。」
大体のところを見回り終えたところでチャイムがなってしまった。
「うん。案内ありがとう、エルト。」
「気にしないでいいよ。私はお姉さんだもん。」
だから、その態度が子供に見えるんだって。
エルト気付いてないのかな?