花の月 壱陽の日 カイの日記
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花月十日(晴れ)
今日から僕たちの診療所を開いた。
学院が休みの休息日だけしか開けられないけど、それでも僕たちの診療所だ。
その名も『アウィ村出張診療所』!
師匠が掲げていた看板は、単に『診療所』ってだけだったから、そこに僕たちの村の名前をくっつけて、店舗とかの所有者は師匠になっているから、僕たちのじゃないよって意味で出張所ってことにしたんだ。
お客さんも沢山来たよ。
クラートのおっさん、肉屋のイズさん、料理人のラェアさん。みんな常備薬を買っていってくれたんだ。
それに、アル先輩にアル先輩の師匠さんも。
師匠さんには立派に薬師だねって褒められちゃった。
あ、勿論それ以外にもお客さんは来たよ。でもね、僕たちが対応に出ると、子供が売っているところなんてってすぐに回れ右していっちゃったんだよね。
買ってくれた人もいたけど、それよりもちょっとのぞくだけで買わずに帰る人が多かったなあ。
王都には沢山の薬師がいるんだから、新参の僕たちはまだまだこれからだよね!
それにしても、薬も薬草もずいぶん余ってしまった。
最初から買ってもらえると思ってなかったから少なめにしておいたのに、こんなにも余るなんて。
乾燥させておくか、薬にしてしまうか……。
特にキト熊の胆嚢や肝はやっぱり生のままがいいんだけど、日持ちしないからなぁ。乾燥させると効能がガクンと落ちるし。
でも、捨てるのはもったいないからやっぱり乾燥させるしかないよねぇ。塩漬けより乾燥させた方が、まだ薬に使いやすいから。
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