八話
少年は真っ白な世界にいた。
何もいない。
何も変化のない。
何も思い出せない。
そんな真っ白な世界に少年はいた。
すると、いきなりこの真っ白な世界の全ての場所からそれぞれ違う言葉が聞こえてきた。
だが、全て同じ種類の言葉だった。
負の感情。
それに、まとめられる。
気がつくと真っ白な世界が真っ黒な世界に変化していた。
あまりの恐怖に少年は叫んだ。いや、叫ぼうとした。だが、声が出なかった。なぜなら、この世界は何も変化のない世界。
そう、身体にも変化が起きない世界だ。
少年がそう気付いた瞬間に息苦しくなった。
そして、少年が自分の身体は本当に存在するのか疑問に思い始めたら身体がボロボロと崩れ始めていった。
すると、真っ黒な世界に一筋の光が差し込んできた。その光には人影が少しだけ混ざっていた。
少年はその人影に助けを求めるため手を伸ばした。
その人影も少年に手を伸ばしてきた。
少年はその人影の手を取った。
『全てを思い出してください』
人影がそう言うと少年に不思議な現象が起きた。
ボロボロになって崩壊寸前だった身体が元に戻り、少年に無かったものが戻り、記憶も復活した。
「そうだ…俺の名前は…志水圭兎だ」
圭兎は滅亡世界や現実世界での思い出したくもない過去も思い出しながらもそう言った。
すると、どんどん思い出していくと元の真っ白な世界に戻っていた。
『あなたは、生き返りたいですか?』
人影はいきなりそう言った。圭兎はちょうど、全てのことを思い出したところだ。そして圭兎は自分が死んだことも思い出した。
「いや、遠慮しておく」
だが、圭兎はきっぱりと断った。
なぜなら、死んだ自分が生き返ってきたら周りに迷惑をかけると思っているからだ。圭兎そんなことよりずっと、気になっていることを聞こうと思った。
「あんたは、誰だ」
圭兎は睨む様に目を細めてそう言った。
だが、人影は
『さぁ、私は誰でしょう?』
と質問するような口調で言った。
そして、人影は
『ヒントを与えます。私はあなたともうすでに会ってます。ですが、あなたは私を私だと認知していない』
と続けて言った。
圭兎は数分のあいだ考えて出した答えを言った。
「妖刀罪殺か」
圭兎がそう言ったら、人影は驚いた顔をした様な気がした。
『正解です。頭の回転が速いですね』
罪殺がそう言った。すると、圭兎は
「昔に、頭の回転を速くする特訓をしたからな」
と言って遠い目をした。
『話を元に戻しますが、あなたは、生き返りたいですか?』
罪殺はまた、さっきと同じ質問を圭兎にした。
その行動に圭兎は
「さっきも言ったが遠慮しておく。理由は言わない」
ときっぱりと言った。
『そうですか。それでしたら、もし誰かがあなたのことを思って帰りを待っていたら生き返るつもりですか?』
「まぁ、一応な」
罪殺の質問に圭兎は曖昧な答えを返した。
『それでしたら、生き返らないとなりませんね。生き返る方法は後にお教えします』
「え? ちょっと待っ…」
罪殺はそう言うとすぐさまこの世界から去ろうとしたので圭兎は止めようとしたがもう、罪殺はこの世界にはいなかった。
真っ白の世界から罪殺がいなくなってから数分がたった。
圭兎は悩んでいた。
「誰も、いないのに俺にどうしろって言うんだ」
何も、する事が無いのでついつい、圭兎は愚痴をこぼしていた。
すると、真っ白な世界に違う色が混ざった。
その様子を見てやっと戻ってきたかと圭兎は思った。
すると、圭兎の予想していた通りに罪殺がいた。
「おい、罪殺ちょっと聞きた」
『それよりも、志水圭兎さん。あなたには、すぐに生き返ってもらわないと大変な事になります』
圭兎の言葉を罪殺は途中で切り、要件を早口で言った。
「大変な事ってなんだ」
圭兎は少し声を荒げてそう質問した。
『あなたの事を思って帰りを待っている人が今、死に直面しているんです。ですからこのままだと、死んでしまいます』
圭兎の質問にすぐさま罪殺は答えた。
「っ!? わかった。生き返る方法を早く教えてくれ」
圭兎は罪殺の答えに最初は驚いたが、すぐさま平静を取り戻してそう言った。
『わかりました。ですが、その前にあなたの頭の中に浮かぶ文字を口に出して唱えて下さい』
罪殺は、その言った。だが、圭兎は「そんな事をしている暇は無い」と言おうとしたがやめた。
なぜなら、頭の中に文字が浮かんできたからだ。
『我は、罪殺の持ち主なり』
圭兎はその文字を唱えた。
『これで、準備完了です。次も浮かぶ文字を唱えるのですが、今度は振り仮名が振ってある橋があるので、そこは、振り仮名で唱えて下さい』
罪殺がそう言うと今度はすぐに文字が浮かんできた。
『我は、天より、世界を見下ろす者なり。我、黒き羽根により、天へと到達せし者なり。我、復活せし力を解放する。妖刀罪殺飛行形態』
そう唱えると圭兎の姿が変わっていった。
赤黒い色をした軽重量の鎧が圭兎の身体全体を包み込んでいた。
鎧の背中の部分からは黒い羽が六枚生えていた。
「へぇ、軽いなこの装備」
圭兎は冷静だった。
『動揺しないのですか?』
その圭兎の様子をみて罪殺は驚いた。
「動揺? これでも、動揺しているのだけどな」
圭兎は落ち着いた雰囲気でそう言った。
「さて、罪殺。どうしたら生き返れるんだ?」
圭兎は話を変えてそう聞いた。
『ここから、ずっと上へ飛んで行ったら生き返れますよ』
罪殺は、簡単に教えた。
「わかった。ここからまっすぐに上へ行くんだな」
圭兎はそう言って、背中の黒い羽を羽ばたかせ、罪殺を置いて真っ白な世界を飛び去った。
海の中が突然光った。
すると、赤黒い姿をしたもの──圭兎が姿を現した。
圭兎は黒い羽を羽ばたかせてちゃんと、生きていてくれよと思いながらこの世界を飛び回った。
だが、この世界には何も存在していなかった。
人も、ゾンビ達も何も存在していなかった。
「どうなってるんだ?」
圭兎は一人で呟いた。
だが、その呟きに答える者がいた。
『それは多分ここが、あなたがいた滅亡世界とは違う滅亡世界だからだと思います』
罪殺はそう言った。
「俺もとうとう、幻聴が聞こえてきたか」
圭兎は自分の頭を抑えながらそう言った。
『幻聴では、ありません。よく考えてください。この装備は全て私なのですよ』
罪殺はそう言った。
「え? そうなのか?」
圭兎は疑問に思ってそう言った。
『はい、そうです』
罪殺は即答した。
「そうか。まぁ、それは良い。元の滅亡世界に戻る方法を教えてくれ」
圭兎は突然真面目になりそう言った。
『確信は無いですが、今から頭に浮かぶ文字を唱えた後にあなたの手元にある私…つまり妖刀罪殺を振ってください』
罪殺はそう言った。
圭兎は「分かった」とすぐに承諾した。
すると、頭に文字が浮かんだ。
『我、時空を切り裂く者なり。我、復活せし力を解放する。妖刀罪殺剣士形態』
そう、圭兎が唱えたら妖刀罪殺が青白く光った。そして、圭兎は妖刀罪殺を振るった。
すると、空間に人が一人ぐらい通れる穴が開いた。
「この中か」
圭兎はそう言うと穴の中に入った。
圭兎が目を開けるとさっきの滅亡世界と同じ景色の場所に出た。
「ちゃんと移動できたのか?」
圭兎は全く同じ景色だったので疑問に思いそう聞いた。
『はい、ちゃんと移動出来てます』
圭兎の期待していた通り罪殺は答えてくれた。
そして、圭兎はその後すぐにこの世界を飛び回った。
だが、この世界にも誰も存在していなかった。
その後も、時空を切り裂いて飛び回って、時空を切り裂いて、飛び回ってと何度も繰り返した。
そして、ようやく人を見つけた。だが、全く知らない人だった。
なので、圭兎はまた同じことを繰り返し始めた。
それから、四回同じことを繰り返した。
圭兎は諦めていたが、飛び回った。
だが、そこには雨美達が大きな四足歩行の機械とゾンビやモンスター達に囲まれていた。
「っ!?」
圭兎は羽を羽ばたかせて猛スピードで雨美達の方へ向かって行った。