表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
滅亡世界 前編  作者: 紙本臨夢
第五章
58/58

最終話

 圭兎は気がつくと、軽総都に斬りかかっていた。

 だが、軽総都よ身体を捉えたはずの斬撃が、まるで、霧を斬ったかのように感じる。

 いや、実際に霧というか幻覚を斬っていたのだ。


「残〜念。私はそこに居ないよ。私を探して、殺してみなさいよ。まぁ、見つけれるならの話だけど」


 そう言うと、モニターが消える。存在そのものが。


「クソ‼︎ どうして俺は気付けなかったんだ⁉︎」


 そう自分を追い込む。

 何か居場所がわかる方法さえあったら!

 そう考えるが、そんな方法あるはずが無い。

 俺は、何も出来ずに終わるのか? いや、終われない。何かあるはずだ。

 そう考えるが、やはり出てこない。

 それから、数分間。一応は移動しながらだが、何か場所がわかる方法があるか考える。考え続けるが何も浮かばない。

 もう、ダメなのか……。

 そう思い、諦めそうになった途端に、声が聞こえてくる。


『地面に妖刀罪殺を突き刺せ』


 それは聞いたことが無い声だ。

 だが、妖刀罪殺の名を知っているので、怪しく思いながらも、指示通りに妖刀罪殺を地面に突き刺す。

 すると、赤いリングみたいなのが、圭兎を中心に大きくなっていく。


『目を瞑れ』


 これも指示通りに目を瞑る。


『居場所を知りたい者達の顔を思い浮かべろ』


 指示通りに、三人の顔を思い浮かべる。

 すると


『「居場所がわかった」』


 と圭兎と圭兎の内からの声が同時に言う。

 そして、圭兎はわかった、三人の居場所にものすごい勢いで飛んで行く。

 すると、数十秒で着いた。

 そこには、軽総都とモニター通りに、鉄でできた十字架にバラの棘が無数に生えている、植物の茎に縛られている。

 圭兎がたどり着くと、軽総都は嬉しそうな顔をする。

 十字架に縛り付けられている三人は、悲しそうな顔と逃げてという顔をしている。


「やぁ、来ると信じていたよ」


「お前に信じられても嬉しくない」


 圭兎がそう言うと、軽総都は肩を竦めてそれもそうかみたいな顔をしている。


「今、助けてやる‼︎」


 軽総都のことを無視して、圭兎は三人にそう言い、三人のところへと向かう。

 だが、当たり前に行かせてもらえずに、軽総都に……いや、軽総都の実験生物に道を塞がれる。


「邪魔だどけ‼︎」


 そう言い、薙ぎ払う。

 すると、本当にあちこちに、実験生物の肉片が散らばる。

 圭兎はその間に、三人のバラの棘が無数に生えている茎を斬りつけるが、なぜか、棘か茎かは分からないが、非常に硬く、斬れない。

 むしろ、斬りつけるたびにこちらが、手が痺れるほどだ。

 すると、いつの間にか肉片が全てくっついて巨大になっている。

 その変化に圭兎は、茎を斬ることに夢中で、気づかなかった。

 そのため、圭兎はその巨大な何かの手で思いっ切り飛ばされ、近くにあった廃墟に突っ込んだ。

 その勢いのあまりか、三つほど廃墟を貫通していく。

 もちろん、貫通された廃墟は崩壊する。

 やっと、四つ目辺りで、飛ばされた勢いが弱くなり、身体が廃墟に埋まる。

 それだけなら、まだ、良かったが、その身体が埋まっている廃墟も崩壊し始める。

 数秒で廃墟は全壊した。

 囚われて、(はりつけ)にされている三人が、叫ぼうとしたが、口が痺れて動かない。

 時間を少し遡る。

 実は、三人共、睡眠薬で眠らされている間に、捕らえられて、磔にされていたのだ。

 三人共それは理解した。

 だから、口が痺れて動かないのも、軽総都に眠っている間に何かの薬を飲まされたと解釈している。

 三人共、睡眠薬で眠らされていて、目を開けると軽総都に言われたのだ。


「きっと、志水圭兎はお前ら助けに来る。だが、あいつには勝ち目がない。だから、あいつを殺してからお前らも殺す」


 それを聞いた雨美が何か言おうとして、言えなかったから、雨美達、三人は、薬で口を痺れさせられていると解釈したのだ。

 時間を戻す。

 軽総都は圭兎が、廃墟の全壊くらいで死ぬのとは思っていないらしく、三人を殺そうとはまだ、しない。

 圭兎は、軽総都の予想通りに、全壊した廃墟から戻ってきた。

 目では追いかけられないほどの勢いでだ。


「死ね」


 圭兎はそう淡々と言い、軽総都の首を刺そうとするが、させない。

 なぜなら、軽総都が自分で首を守ったからだ。

 しかも、剣で。

 すると、もう一本の剣をどこからか、取り出し、その剣を剣を今、持ってない方で受け取り、掴む。

 万事休すか。

 圭兎はそう思う。

 すると


「そろそろ切れるころだな」


 と軽総都が小声で言う。


「圭兎逃げて‼︎」


 希楽夢がそう叫ぶ。

 だが、軽総都が小声で


「やっとか」


 と言い、希楽夢に向けてさっき、どこからか取り出した剣を投げる。


「はっ⁉︎」


 圭兎はそうとだけ言い、その剣を弾き落としに行こうとしたが、できなかった。

 なぜなら、軽総都に首を刺そうとしていた方の腕を持たれていたからだ。

 もちろん、圭兎も色々と動いて、抜け出そうとした。

 だが、それも無意味に終わった。

 そうこうしている内に、無防備の希楽夢の心臓を見事に軽総都が投げた剣が貫く。


「あっ……あっ⁉︎」


「き……ら……む?」


 真横で剣が貫いたのを見た、雨美と美佐は二人ともか細い声で言う。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」


「希楽夢……。ねぇ、冗談はよしてよ。ねぇ? こんな時に冗談している場合じゃないよ? だから、早く目を覚まして」


 美佐は悲痛な叫び声を上げ、雨美は現実を直視していない。

 だが、軽総都はそんな二人に目もくれずに、ずっと、圭兎を待っている。

 早く叫んでくれないかな? 楽しみだなぁ、楽しみだなぁ。

 そう期待の眼差しを圭兎に向けながら、見ている。

 だが、圭兎はずっと、俯いたままだ。

 数分、そうしていただろう。


「ねぇ、早く悲痛な叫び声を上げてよ。ねぇねぇねぇねぇねぇ」


 とうとう、待ちきれなくなり、圭兎の肩を触りそう言う。


「触ルナ」


「ん? 何か言った?」


 圭兎はかなりの小声でそう言ったので、軽総都には聞こえていなかった。

 軽総都は、もう片方の手を置いていない方の肩へと置く。

 すると


『触ルナ‼︎』


 とさっきよりも大きな声で言ったので、軽総都だけではなく、雨美や美佐にも聞こえる。

 何か、危険だと本能的に感じ取った、軽総都は大きく後退するが、両腕が既に無くなっていた。

 あれは圭兎では無い。危険なモノだ。この世界を跡形も無く消し去れるほどに。

 雨美も美佐もそう思う。

 すると、危険なモノが突然、自分で自分の身体を斬りつけ始める。

 しかも、笑顔で。

 その笑顔も誰から見ても恐怖でしか無い。

 なぜなら、目も口も全てが黒くさらに、黒い禍々しいオーラをも醸し出している。

 全てが黒い。

 だが、身体を斬りつけることで、さらに恐怖を増加させている。

 危険なモノの身体中が、血で埋め尽くされていく。

 しばらくしてから、危険なモノの衝動は治る。

 だが、それはそれで恐怖だ。

 なぜなら、今の危険なモノの姿は、黒い目と口そして、オーラ 。さらに、他のところも赤に染められている。


『……』


 危険なモノは無言で、軽総都を斬る。

 軽総都は細切れにされる。

 しかも、一瞬で。

 すると、危険なモノは身体の力が抜けたように、倒れた。

 そして、赤に染められているところ以外は元に戻る。

 そして、すぐに赤に染められているところも元の肌の色に戻る。

 危険なモノから圭兎に戻ったのだ。


「なっ⁉︎」


 軽総都は黒い球体の物から出てくる。

 その身体は無傷だった。


「良い資料を見せて貰ったよ」


 そう言うと、軽総都は圭兎に近づく。


「「何をする気⁉︎」」


 精神が安定した二人は、声を揃えてそう言う。

 だが、当たり前のように、軽総都はそれに答えない。

 すると、羽織っている白衣のポケットの中から、何かの液体が入った注射器を取り出す。

 そして、その注射器の針を出して、圭兎に近づいていく。


「さぁ、これで私の命令に何でも、従う人形になる。これで、解剖が楽になるな」


 雨美達に聞こえないほどの大きさで、軽総都はそう言うと、圭兎の身体……いや、正確には頭を優しく両手で持ち上げる。

 その持ち上げた、頭に注射器の針を刺す。

 そして、ゆっくりと圭兎の頭の中に注射器の中の液体を入れていく。

 すると、液体がどんどん入るにつれて


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」


 と圭兎は叫ぶ。

 雨美達はそんな光景を見たく無くて、顔を背ける。


「あっ……あっ……」


「これで完成した。私の様々な欲求を満たしてくれる身体が」


「っ⁉︎」


 顔を背けていた、雨美達にもその軽総受け都の声が聞こえた。


「それじゃあ、まずはあの子達を殺してくれない?」


 今まで、雨美達の言葉を完全に無視だった、軽総都が二人を指差しそう言う。


「わかりました。都様」


 そう言いながら、圭兎は頷き、雨美達の元へと一瞬で来る。

 そして、妖刀罪殺振り上げる。

 だが、そこで、雨美達は見た。

 振り上げた手が激しく震えている圭兎を。

 だが、圭兎はそんな震えている手なんかお構えなしに、振り下ろす。

 そんな光景を見て、皆、様々な反応をする。


「あはははははははははは‼︎」


 軽総都は狂ったように笑う。


「ごめんなさい。私達のせいで」


 雨美は目を瞑り謝る。


「あの時(わたくし)達が軽総都に抵抗できていれば」


 美佐は自分達の無力さを改めて感じ、そう言う。

 二人の命運は圭兎に委ねられる。

 だが、軽総都は、自分の勝利が確実だと思い、この後のことに思いをはせる。

 だが、その軽総都の思いはあっけなく砕け散る。

 なぜなら、雨美達の身体ではなく、雨美達の身体を縛っていた、バラの棘が無数に生えた茎が真っ二つになっていたからだ。


「えっ⁉︎」


 二人は呆気にとられている。


「どうして、どうして、自分の意思で行動ができるんだ⁉︎」


「妖刀罪殺のおかげさ。まぁ、でも、お前がやったことは成功だ。俺の頭に記憶を喰う、寄生虫を入れたのはな。今でも、頭の中で蠢いているからな」


 その毛糸の言葉に軽総都は嘘だと思ったが、圭兎の表情を見て本当だと気づく。

 圭兎の表情は苦痛と虫に脳を喰われる痛みに、耐えている表情だ。

 それに身体も少しフラフラしている。


「圭兎⁉︎ 大丈夫なの?」


 大丈夫じゃないと、分かりながらも雨美はそう聞く。


「あぁ、大丈夫だ。お前らはどこか安全なところに」


「嫌。美佐さんアレをやりましょう。そうしたら、圭兎も助かるはずです」


「わかったわ。アレをやるのね」


 二人は圭兎の言葉など全く聞いていなかった。


「何をやるかは分からないが、早く安全なところへ‼︎ っ⁉︎」


 そう大声で指示を出すと、最後に激しい頭痛が襲ってきた。


「あいつらを守らないとな‼︎」


 逃げる気が無かった二人を見てそう言い、斬りかかろうとした瞬間に、何かが入っている、試験管投げてきた。

 よかった。こいつは本物だ。それにしても、記憶を喰う寄生虫を作れるとはな。

 圭兎はそう思う。

 よかった。こいつは本物だということが、どういうことかというと、この戦いに今まで居た軽総都は、全て偽物だったということだ。

 その偽物はもちろん、軽総都本人が作った。

 試験管から現れたのは、スライムだった。

 まさか一番、弱いのが来るとはな。

 そう思い圭兎は手を前に出す。

 そして


『フレイムバースト』


 と呪文をなしで、使うと、手から炎が出てくる。

 これで終わりだと思っていたが、スライムは口から水を吹き出し、フレイムバーストが消化される。


「あぁ、面倒くさい‼︎」


 そう言ったのも、理由がある。

 今まで、スライムは一体だったが、複数それも、百体を超える量のスライムが現れたからだ。

 圭兎は、このスライム達には魔法は効かないんだろうなと思い、妖刀罪殺を右肩から左肩へと、貫き


「血を吸え‼︎」


 と叫ぶ。

 すると、妖刀罪殺は全身の血を吸い、圭兎は寄生虫に脳を喰われているのとは違う理由で、気絶しそうになる。

 だが、なんとか持ち堪える。

 すると、妖刀罪殺は吸った血で鎧を着けようとしていた。


「防御はいらない。全て攻撃に回せ」


 そう言うと、頭の中から


『正気なの⁉︎ そのままだったら、一発でもスライムの攻撃を食らっても、死ぬのよ⁉︎ それなのに』


 とかなり心配している、忌楼の声が聞こえる。


『それでも、従うしか無いようですよ』


 いつの間にか、妖刀罪殺の中に戻っていた、颯華の声に驚きつつも、まぁ、これが正しい状態なんだなと思い直す。


『まぁ、確かに私達には、止める権利が無いのからね』


「悪いな」


『本当に次に会った時は、一つ私の願い事を叶えてもらうからね』


『それは良いですね』


「はいはい、わかったよ。次に会ったら俺が出来る範囲で二人の願いを叶えてやるよ。まぁ、生きてたらの話だが」


「何を一人でぶつぶつと‼︎」


 軽総都は圭兎のことを睨みつけてそう叫ぶ。

 だが、そんな軽総都を無視して、後ろへ剣を下げて、一気に前に突き出す。

 すると、かなりの風圧が刃物のように鋭くなり、敵を全て切り刻んでいく。

 だが、軽総都だけは普通にそれを避ける。

 薬で肉体強化しているんだな。

 そう思っていると、突如、足元に魔法陣が生まれる。


「クソ‼︎ 逃げれないのかよ‼︎」


 魔法陣の端まで走ってみたら、何かの結界に囲まれており、抜け出せない。

 もう、死んだな。俺。

 そう思い圭兎は、謝るために雨美達の方を見た。

 だが、それでこの魔法陣が何のためかわかった。

 それは


「っ⁉︎ ふざけるなよ‼︎ どうして、俺を元の世界へと戻そうとする‼︎ こいつは…軽総都は今、殺さないといけないんだよ‼︎」


「それだったら貴方が助かりません‼︎」


 雨美は初めて会った時のように、神様のような雰囲気と口調でそう言う。

 さすがに、圭兎もそれには言葉を返せない。


「お前らは何をしている⁉︎」


 軽総都はそう言い、雨美達に向かい、素手で心臓を貫く。


「っ⁉︎」


「こ、これが、貴方方の世界の言葉で言う、運……命というやつですから…………受け入れるしか……無いのです…………」


「そうですよ………。だから……貴方は……何も……悪く………無いの………です………から………………」


「もういい‼︎ 喋るな‼︎」


「なら……最期に……一つ…だけ………」


「どうか………ご無事で…………」


「やめろぉぉぉぉぉぉぉ‼︎」


 最期まで、雨美と美佐は圭兎の足元に作った魔法陣を解かずにいた。


 そのおかげで、圭兎は元の世界へと戻れた。


「助けないと」


 圭兎は朦朧としている意識でそう言う。


「俺にしか助けられないんだ」


 朦朧とした意識の中にまだ、圭兎は喋る。


「うっ⁉︎ あっ⁉︎」


 頭の激痛に耐えれなくなり、圭兎は意識を暗闇の中に投げた。

前編はこれにて終了です。

それでは、また、いつか後編で……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ