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滅亡世界 前編  作者: 紙本臨夢
第四章
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八話

 圭兎は軽総都を見つけた途端に人間ではありえない速度で移動する。


「ガァァァァァァァァァ‼︎」


 圭兎は獣のような声を上げて軽総都に斬りかかる。

 だが、軽総都を斬りつけれなかった。

 なぜなら、軽総都が密かに微笑んだ瞬間に彼女の周りに居る知能が無い種類のゾンビ達が彼女を守るため彼女と圭兎の間に来たからだ。

 だから、圭兎は軽総都では無くゾンビを斬りつけていた。


「殺ス殺ス殺スコロスコロスコロスコロス‼︎」


 圭兎は狂ったようにそう言い続ける。


「完全に怪物になっているね。だが、実験材料としてはこれ以上無いほどに嬉しいね」


 軽総都はそう独り言を呟く。

 圭兎にはもちろんそんな声は聞こえない。


「ア……アアアアアアアアアアアアアアアアアア‼︎」


 なぜか圭兎は自分で自分の身体を刺す。

 そして、圭兎は自分の手が動くことを確認するためか右手を閉じたり開いたりする。

 そして、右手を閉じたり開いたりするのを閉じるのも開くのも合わせて十回ほどすると圭兎の身体は止まる。


「コレデシバラクコイツハ出テコナイカ」


 圭兎──化物がそうボソボソと言う。


「………」


 化物はさっきの獣のような声を上げずに無言で目を閉じながら軽総都に斬りかかる。

 殺気と視界が無いのに寸分違わずに軽総都に斬りかかった。

 そのため軽総都は化物の攻撃をさっきみたいに余裕で避けられなかったがギリギリ避けて化物が振り下ろした妖刀罪殺が肩をかすった。

 そのせいで少し、軽総都の着ている服が破けた。

 さっきまでこいつは殺気を丸出しにしていたのに今は殺気がまるで感じられない。どうしてだ?

 軽総都はそう考える。

 そう考えている間も殺気無き殺しが続く。

 避けいるだけでは埒があかないと思った軽総都は地面に緑色の液体が入っている試験管を投げつける。

 すると、試験管が割れる。

 軽総都は試験管が割れたのを見てその試験管から少し離れる。

 だが、化物が軽総都の方に向かってきた。

 すると、その試験管から出てきた緑色の液体が生き物のように形を変えていき大きな鎌を持ったカマキリが作られた。

 すると、そのカマキリは化物の身体を見ると本能に動かされたように化物の身体に飛んで行った。

 そして、カマキリは化物の身体に付く。

 その様子を見た軽総都は後ろに引いた。

 だが、さっきのように化物は軽総都を追いかけなかった。

 なぜなら、カマキリが目と目の間に付いているのを目を閉じているのに見つけたからだ。

 すると、カマキリはそのまま鎌を振り下ろす。

 そして、化物の両目の上瞼(うわまぶた)を根本から切り落とした。

 軽総都はその状況を見て化物に何かの薬を打つために化物に接近していく。

 カマキリは危険だが軽総都の予想通りに化物は上瞼を切り落とされたが冷静にそのカマキリを手に持ち握り潰す。

 だから、軽総都は安全に化物に近づける。

 化物は上瞼が切り落とされて前が見えなくて危険なカマキリは化物の手によって握り潰された。

 ここまでは軽総都の計画通りに事が進んでいる。

 だから軽総都は少し油断しながら化物に近づく。

 その油断のせいで軽総都は化物の目を見てしまった。

 化物の目は黒一色。

 軽総都はその目を見て少し驚いたがそのまま進もうとする。

 だが、身体が動かなかった。

 思考や生命維持に必要なところは動いているのに。


「コノ目ヲ見タ者ハ、コノ黒ノ世界ニ身体ヲ動カス神経ガ吸イ込マレル。オ前ハモウ俺ガ力ヲ解カナイ限リ身体ガ動カナイ。ダガ、戦場デ身体ガ動カナクナルコトガドウイウ意味カワカルダロウ」


 化物は人では出せないほどの圧迫感がある声でそう言う。

 軽総都は冷や汗を流す。

 化物はそんな軽総都を痛めつけようと残虐にも思いとりあえず足から斬り落とすことにする。


「マズハ一本」


 化物は圧迫感がある声でそう言い軽総都の足を斬り落とす。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」


 軽総都は痛みのあまりか悲鳴を上げる。

 化物はその悲鳴を聞いて愉快に思う。

 そして、次に右腕を肩から斬り落とす。

 すると、また同じ悲鳴を上げる。

 その悲鳴を聞いてさらに愉快になる。

 そして、次に左足を斬り落とす。

 また、さっきと同じ悲鳴を上げる。

 さらに愉快になる。

 化物はモウ終ワリカと残念に思いながら左足を斬り落とす。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」


 最後にそう全く同じ悲鳴を上げる。

 モウ終ワリカ。残念ダナ。

 化物はもう一度同じことを思う。

 だが、まだ斬り落とすところが残っていることに気付く。

 アァ、首ガアルジャナイカ。悲鳴ハ聞ケナイガ怯エル顔ガ見レルジャナイカ。

 化物はそう思い気を取り直すと上瞼がいつの間にか元に戻っていた。化物はそれを気にせずに首を斬り落とすために妖刀罪殺を振るう。

 だが、首筋に後ろから何か刺された。

 化物はそのまま地面に倒れ伏せる。

 目の前には両手両足が無い軽総都が居た。

 クソガ……。コイツニ仲間ガ居タナンテナ。

 化物はそう思いまだ、背後を見る力があったので背後に振り返るとそこには軽総都が居た。


「ッ⁉︎」


 化物は驚きもう一度前を見たがそこにも軽総都が居た。

 ドウイウコトダ? ナゼ同ジ人間ガ二人モ居ル?

 化物は化物はなりにそう疑問に思う。

 すると、背後の軽総都が口を開く。


「私は背後にいる方が本物だよ。君の目の前にいるのは私とは全くの別人。私が幻覚で君の目の前にいるのが私だと勘違いさせたのさ。さぁ、前を見てごらん」


 軽総都はそう説明し化物に前を向くことを勧めたので化物は前を見る。


「アッ……あっ……」


 化物は圭兎に戻った。

 化物にとってはどうでもいいことだが圭兎にとっては受け入れ難い現実が圭兎の目の前に広がっている。

 すると、そこに廃墟から出てきたトシカリ達が来た。

 その光景はトシカリ達にとっては衝撃的な光景だった。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」


 目の前の受け入れ難い現実のせいで圭兎は叫ぶ。

 圭兎の目の前に広がって居た光景とは両手両足が無い水川忌楼が血を流して倒れていて妖刀罪殺を見ると血が付着していた。

 つまり圭兎は忌楼の両手両足を斬り落とした犯人が自分だと理解する。

 その両手両足が斬り落とされた忌楼は今にも息を引き取りそうだった。


「よかったね。私のおかげで君は仲間を殺した化物になれたよ」


 軽総都は笑顔で圭兎にそう言う。

 圭兎にはその声すら聞こえていない。

 反応が無い圭兎を見て回収しても意味が無いと判断した軽総都は肩をすくめてこの場から消える。

 すると、今まで目を閉じていた忌楼が目を開けて圭兎と目が合う。

 そして忌楼は圭兎に苦しそうな顔をしながら優しく微笑む。


「圭……兎……。貴方……は…何も…悪く…無い……わ………」


 忌楼は苦しそうに言う。


「さぁ……圭……兎……。最…後……は……貴……方……が……終わ…ら……せて……。妖…刀……罪…殺……で…私…を……刺し…て………。そ……し…て……この…身…体……を…吸え…と……言っ………て…………。そう……たら………私……は……妖…刀………罪…殺……の…中…で……生き…残る…から……。。また…会え…る……かも…しれ…ない……し…ね。だ…か…ら…お……願……い…………」


 忌楼は必死そう言う。

 圭兎は涙を流しながら「わかった……」と頷く。


「だが、残念なこと喋ること意外に身体が動かないんだ」


 圭兎は涙を流し苦笑しながらそう言う。

 その言葉を聞いた忌楼は優しく微笑み力を振り絞って圭兎に顔を近づけてきて唇と唇が重なり合う。


「これ…で……解け…た…は……ず……。速く……私…を…刺し…て……この…身…体……を…吸え…と……言っ………て………。もう……、時間……が…無い…の……」


 忌楼は涙を流してながら頬を少し赤くして必死に言う。

 すると、圭兎が迷っていると忌楼の身体が光り始める。


「速くして‼︎」


 忌楼は最後の力を振り絞って圭兎にそう言う。


「クソが‼︎」


 圭兎はそう言いながらも忌楼の心臓に妖刀罪殺を刺す。

 そして


「この身体を吸え‼︎」


 と涙を左腕で拭き取り力強く言った。


「ありがとう」


 忌楼は妖刀罪殺に吸い込まれる前にそう圭兎にお礼を言った。


 トシカリ達はその現象が終わるまで驚き過ぎて固まっていた。


「お礼を言われる筋合いなんて俺には無い。俺が忌楼、お前を殺したのだからな。むしろ恨む方が理解できる」


 圭兎は小声でそう言う。

 その声は言った本人でさえギリギリ聞こえるくらいの大きさだった。

 すると、足音を立ててトシカリは圭兎に走って近づいてきた。

 そのトシカリの手にはトシカリの武器の細剣があった。

 その細剣で圭兎を殺そうとしているのは誰でも見てわかるほどにあからさまだ。

 もちろん、圭兎にもそれは見えている。

 だが、避けようとは思わない。

 俺が忌楼を殺したから俺が死ぬことで(つぐ)いきれないほどの罪が少しでも償えるなら死んでもいい。

 圭兎はそう思い細剣を持ちながら近づいてきているトシカリの攻撃を避けないまたは防がないために妖刀罪殺を地面に投げ捨てる。


「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼︎」


 トシカリはそう言い高く跳び圭兎に斬りかかる。

 圭兎はトシカリが心臓を外さないようにトシカリの動きに合わせて調整する。

 出来る限り気づいていないフリをしてだ。

 だが、トシカリは圭兎に細剣が刺さる前に細剣を腰の鞘に直す。

 そして、地面に着地する。


「どうして俺を殺さない」


 圭兎は冷たい声でトシカリに言う。


「君が人はもちろんゾンビやモンスターなどを殺すのに罪悪感があるのが今のでわかったから」


 トシカリはそう言う。


「どうしてそう思う」


 圭兎はさっきよりも冷たい声でトシカリに言う。


「さっき、僕が高く跳んだ時に心臓を外さないように調整していたよね。バレバレだったよ。それに武器の妖刀罪殺も地面に投げ捨てた。まぁ、もし調整や地面に武器を捨てていなかったら問答無用で殺させてもらったよ」


 トシカリがそう言う。

 圭兎はその言葉に反応しない。

 そして、圭兎は無言でこの場をトシカリ達を置いていって去って行った。


 その圭兎の状況を見たミレイは


「また、この世界に来た当初に戻ったわね」


 と言う。


「追いかけよう」


 トシカリはなぜかそんなことを言い出す。


「止めよう。今は、そっとしておきましょう」


 ミレイはトシカリの言葉にそう返す。


「そうだな。無神経だったね、僕」


 トシカリはそう反省する。


 圭兎は誰も居ないことを確認する。


「クソッ‼︎ あの時に俺が妖刀罪殺に飲み込まれなかったらあんなことにならなかったのに。今回に限っては全て俺が悪い。俺はこの世界に来て何も成長していない‼︎ また、ゾンビではなく普通に生きている人を殺した‼︎ 俺はもう、人殺しだ。誰とも関わったらダメだ‼︎ もう、二度と‼︎ 今後一切‼︎ 幸せを感じたらダメだ‼︎ 幸せになったらダメだ‼︎ 俺はもうこんな表の世界の人々と一緒に居たらダメだ‼︎」


 圭兎はそう涙を流しながら叫ぶ。

 もう、元の世界の奴らとこの世界の軽総都以外の奴らとは関わったらダメだ。もう、あいつらとは行動しない。

 圭兎は心の中でそう決意する。

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