七話
日本人形の動きは早い。
圭兎がギリギリ目で追えるほどの速度だ。
圭兎の肉体は妖刀罪殺のおかげで常人を優に超えている。
つまりその常人を優に超えている圭兎でさえギリギリ目で追える速度だから常人は到底目で追えない。
日本人形の隙を見つけたので操っている者を殺せば日本人形も止まると思った圭兎は日本人形の隙を突いて等身大の日本人形を操っているであろうチャラ男に斬りかかる。
すると、チャラ男が右手を前に突き出し人差し指と中指の先だけを曲げると日本人形は一瞬にしてチャラ男と圭兎の間に現れる。
「操っているのがバレバレだ‼︎」
圭兎はチャラ男にそう言い日本人形の後ろに回り込み日本人形を操っている糸を断ち切るために妖刀罪殺を振り下ろす。
だが、妖刀罪殺は硬い刃物に当たったように弾かれる。
「どういうことだ?」
圭兎はチャラ男に聞く。
だが
「答えるわけ無いじゃん」
とチャラ男が言う。
やっぱり、アニメや漫画みたいに教えてくれるわけ無いか。
圭兎はそう思う。
日本人形に斬られそうになったので後ろに跳躍する。
だが、瞬時にその間を詰めてきて日本人形は日本刀を振り下ろす。
「ハハ……。危ない危ない」
その日本刀をそう言いながらギリギリの所で避ける。
なぜかチャラ男が右の小指の先だけ曲げる。
すると
『殺……ス。御主人様ノタメニ』
と日本人形が片言で声を発する。
「これで怯むとでも思ったか?」
圭兎は少し見下したように笑いながらそう言う。
「いいや。そんなことは思ってないさ」
「じゃあ、どうしてそんなことをした?」
「特に意味は無いが強いて言うなれば俺の士気を上げるためさ」
チャラ男は圭兎の質問にそう答える。
チャラ男の返答に人形の言葉で士気が上がるなんて、めでたい頭をしているなと圭兎は思う。
すると、突然チャラ男は左手を前に突き出す。
そして、チャラ男は左手の全指を折り曲げる。
すると、人形が五体増える。
それぞれ服装はメイド服にナース服にセーラー服などの色々な服装だ。
そして、人形の武器はその服装の職業で使う道具で殺傷能力がある物を持っている。
一体でもキツイのにさらに五体増えるか。マジでやばいな。まぁ、動きはどうせ鈍いだろう……⁉︎
なを思う前に全ての人形が日本人形と同じよう速度で圭兎に攻撃を仕掛けてきた。
圭兎はその攻撃を全て紙一重で避ける。日本人形一体では余裕で避けられていたのにだ。
だが、人形の服装の一つの警察官の服を着た人形がピストルを俺に向けてくる。
そのピストルから発射された弾は狙ってかまぐれでか圭兎の左腕に当たった。
「っ⁉︎」
圭兎は左腕を右手で押さえながら全ての人形の攻撃を避ける。
クソ‼︎ 銃弾が貫通せずに内部で止まったか。
つまり回復出来ないしその弾に菌を沢山付着させてかおかしいくらいに痛い。
圭兎は左腕が痛いが冷静に判断する。
とりあえず左腕の痛みをなくすために圭兎は自分の左腕を叩き斬る。
「うっ⁉︎」
痛みを感じたがすぐに斬った腕が生えてきたので痛みが無くなる。
「あの人が言った通り本当に化物じゃん」
チャラ男は珍しく真剣な顔をしてそう言う。
だが、人形の操作は止めない。
人形達はそれぞれの武器で一斉に斬りかかってくる。
圭兎はそれをギリギリまで引きつけて避ける。
すると、人形同士が圭兎の予想通り相打ちになる。
あとは、あいつを殺すだけだ。
圭兎はそう思ってチャラ男に斬りかかる。
だが、人形は全滅したかと圭兎は思っていたが、普通に動く。
そして、人形達がそれぞれの武器で一斉に圭兎を刺す。
人形達は全員同じところを刺す。
その同じ所とは心臓。圭兎は心臓を刺された。
そのまま地面に倒れ伏せる。
圭兎の心臓があった部分から血が流れてきて圭兎の下には血溜まりができていた。
「あの人が言うほど強くなかったな。この程度の力ならあの人だけでも倒せたはずだ。なぜだ……」
チャラ男は右の人差し指の先を折り曲げてくちびるの下に当てて真剣な顔で考えている。
人形達を戻さない状態で。
圭兎が倒れて数分経った。
チャラ男は圭兎はもう死んだと思いこの場を立ち去ることにする。
そして、この場を立ち去ろうとした瞬間にチャラ男の右頬が切れて血が出てきた。
その血は赤では無い。桃色だった。
チャラ男の血が桃色の理由は軽総都が作った、知能を残したままゾンビ化させる薬の副作用。
チャラ男はその血を右の人差し指で拭う。
そして、その血を舌ですくい上げる。
すると、チャラ男の身体中から力が溢れてくる。力が具現化するぐらいに。具現化した力の色は赤色。その赤色がオーラのように靄になって出てきている。
「早く起き上がれよ。生きているのは知っているんだぞ」
チャラ男はそう地面に倒れ伏せている圭兎に言う。
「やっぱり。ばれたか」
圭兎はそう苦笑しながらそう言いで起き上がる。
「完全に化物だな」
チャラ男の口調と雰囲気が変わる。
今のチャラ男を見て誰もチャラ男と言わないほどに雰囲気が変わった。
「俺がお前を殺さないとな‼︎」
チャラ男──男性はそう言う。
すると、男性の空いている両手の指が無くなった。
なぜなら、空いている指は全ての人形を操っているのだ。
人形は四体増える。人形の合計は十体いる。
六体でも苦戦していたのにさらに四体も増えたから圭兎は気を引き締める。
「血を吸え」
圭兎は小声でそう言うと妖刀罪殺が右腕をの皮を斬って血を出させる。そして、妖刀罪殺はその血を吸う。
「妖刀罪殺激戦形態」
頭の中に浮いた呪文を圭兎は頭の中で唱えて形態名だけを小声で口に出す。
すると圭兎の姿は、鎧は変わらないが盾が背中に付き腰に分離した鞘と妖刀罪殺がある。
なぜ、妖刀罪殺と分かるかというと鞘から男性の力が溢れて具現化した赤色のオーラよりも黒色が強い赤黒い色の光が漏れているからだ。
圭兎は腰から分離した妖刀罪殺を二振り抜く。
すると、鎧の背中から手が一本生えてきて盾を持つ。
今の圭兎の状況は二振りの妖刀罪殺を両手で持ち鎧のよう背中から生えてきた手が盾を持ち前に構えている状況だ。
「化物が‼︎」
男性はそう吠える。
そして、全ての人形を一体ずつ上下左右、東西南北に動かす。
残りの二体は自由に動き始める。
つまり圭兎はどこを見ても人形しかいない。
ここは廃墟の中だから後ろに下がろうにも下がれない。
圭兎は二振りの妖刀罪殺振るった。
すると、衝撃波が発生し人形達の陣形が崩れる。
圭兎はその隙を逃さずに最初から操られていた日本人形に斬りかかり日本人形の首を跳ねる。
圭兎はその勢いのまま日本人形の横にいた警察の服の人形の首を跳ねる。
次にナース服の人形の首を跳ねる。
一分もしないうちに圭兎は最後の一体の黒装束の人形の首を跳ねよとしている。
すると、突然廃墟の戦っている部屋を出入りするための扉が開かれる。
そして、その扉から妖刀罪殺に居た存在の軌際颯華が入ってきた。
圭兎がその姿を見て安堵すると黒装束の人形に蹴り飛ばされる。
圭兎は扉から入ってくる存在を確認をするために最後の一体と油断をしてかよそ見をしてしまい人形に蹴り飛ばされる。
圭兎はそのまま地面に倒れ伏せる。
黒装束は圭兎を殺すために凄まじい速度で圭兎の元まで移動し、黒装束の中身から拳銃を取り出しセーフティを外し圭兎の頭に向けて引き金を引く。
耳を劈くような銃声がこの廃墟のコンクリート部屋中に響く。
男性はこれで圭兎を殺せたと思ったが殺せていなかった。
なぜなら、颯華が拳銃を引き金を引くコンマ数秒前に上に飛ばしたからだ。
銃弾が貫けないコンクリートだから天井を撃ったと男性は勘違いしたのだ。
こんな状況だが男性はニヤリを笑う。
すると、圭兎が首を跳ねたはずの人形達が全て動き始める。
「っ⁉︎」
颯華は驚きのあまり息を飲んだ。
だが、そんなことを気にせずに颯華は人形達と男性に立ち向かっていった。
すると、圭兎はゆっくりと立ち上がる。
それと同時に扉がもう一度開きトシカリ達が入ってきた。
「圭兎様‼︎ よかったご無事」
颯華の言葉は途中で遮られる。
「っ⁉︎」
トシカリ達がその光景を見て絶句した。
なぜなら、颯華の右腕が刃物で斬り落とされてその刃物で斬り落とされた右腕から左腕に刃物を貫通させられたからだ。
その刃物とは妖刀罪殺だからだ。
つまり、颯華の右腕を斬り落としさらに左腕まで妖刀罪殺を貫通させたのは圭兎だからだ。
「…………」
圭兎は無言で颯華から妖刀罪殺を抜く。
その抜いた勢いで目を隠していた髪の毛が浮いて目を隠していた髪の毛の下をトシカリ達が見る。
圭兎の髪の下は全て黒い痣が埋め尽くしている。
「まさか……?」
そう水川忌楼だけが反応する。
「俺ニ立チハダカルノハ全テ敵ダ」
圭兎の口から言葉がそう漏れてきた。
「ダメ‼︎」
忌楼は圭兎に抱きつき止めようとする。
だが
「キサマモ敵ダ‼︎」
圭兎はそう言い忌楼を斬りつける。
だが、忌楼は弧卯未に引っ張られ圭兎の攻撃を受けなかった。
「キサマラモテ敵ダ‼︎」
圭兎はそう言い弧卯未達の方を見る。
弧卯未達が居る方はトシカリ達も居る。
圭兎はトシカリ達に斬りかかる。
だが
「チッ‼︎ 避けたか」
日本人形が圭兎に斬りかかったが圭兎はそれを避けて男性は舌打ちをする。
「どうしてあたし達を救ってくれたの?」
弧卯未は男性に聞く。
「研究出来そうな材料が居たら一応生き残らせておいて私のところに持ってきて。解剖するからとあの人から言われたからな。こいつを殺したらお前らも目覚めるかわからないけど気絶されるからな」
男性は素直に弧卯未の質問に答える。
弧卯未はそれで理解する。
あの人は研究長の仲間だと。
そんな話をしている間に圭兎は人形を全滅させていて男性に向かっている。
圭兎は右手で持っていた妖刀罪殺だけを腰の鞘に戻して素手で男性の首を絞めて窓ガラスから一緒に降りて行った。
美佐はこれをチャンスと見て
「颯華さんをこちらに運んできてください」
とトシカリに指示する。
トシカリはその指示に従って颯華を美佐の元へと運んで行く。
「雨美」
「はい」
美佐と雨美の話はそれだけで終わる。
トシカリが颯華を美佐の元に運んで来た。
「ヒーリング」
美佐と雨美は二人でそう回復呪文を唱える。
数十秒後「はい、おしまい」と美佐が言うと颯華の傷は治っていた。
そして、颯華は目を覚ます。
それを見た美佐は笑顔で颯華の首の裏をチョップしてもう一度気絶させる。
「疑問だと思いますがこれは必要なことなのです」
美佐がそう言うとトシカリ達は何も言葉を返せなかった。
少し前、廃墟の外壁では圭兎と男性が居た。
圭兎に首を絞められながらも男性はニヤリと笑い両手の指を動かす。
すると、圭兎の背後から人形が来た。
そして、圭兎の身体中を撃たれたり刺されたりした。
だが、瞬時に回復して男性の首から圭兎は手を離し、離した手で鞘に収めた妖刀罪殺を抜いた。
すると、妖刀罪殺は一つになっていた。
なぜわかったかというと妖刀罪殺の大きさが戻っていたからだ。
「……」
圭兎は無言で男性の全ての指を斬り落とす。
そして、男性の首も跳ねる。
ゾンビなのでそれで死んだ。
圭兎はさらに男性の身体を細切れにする。
圭兎は妖刀罪殺を地面に向けて着地態勢に入る。
妖刀罪殺を地面に刺したが静かに地面に着地する。
すると突然、圭兎は頭に衝撃を感じる。
それはゾンビに頭を殴られたのだ。
圭兎は目を細くするとゾンビが大量にいた。
「敵ダ敵ダ敵ダ敵ダ敵ダ‼︎」
圭兎は何度も同じ言葉を繰り返す。
圭兎が妖刀罪殺を力強く振ると衝撃波でゾンビが全て吹き飛んだ。
「すごいすごい」
「っ⁉︎」
気配を察知出来なかったので圭兎は息を飲んでその声が聞こえてきた方向を見た。
「久しぶりに良い研究材料を見つけた」
軽総都がそこに居た。




