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滅亡世界 前編  作者: 紙本臨夢
第四章
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五話

 少女は突然この家──リンジカ家がエルザ家と言われる最近権力を握ってきた家に取り込まれるということを言われた。

 少女──ミリカ・リンジカにとっては興味が無いことだ。

 だから、親戚全員が泣いている意味もミリカには分からない。

 誰も死んでいないのにお通夜状態の家にミリカは居心地が悪くなり散歩してくるといい家を出る。

 いつもなら出かける時に誰か付いてくるが今回は誰も付いてこない。

 ミリカにとっては嬉しいことだ。

 誰にも縛られなく好きな所に好きなだけ行けるからだ。

 今のミリカの年齢は六歳。つまり小学一年生だ。

 ミリカは数時間散歩してから家に戻った。

 すると、なぜか親戚全員が大慌てで服を着替えている。

 なぜこういう状況になっているか分からなく首を傾げていると母親が「ミリカも早く着替えて」と突然言う。

 ミリカが「どうして?」と聞こうとする前に母親が「エルザ家に今から歓迎会するから来て言われたの」と言い中々動かないミリカを無理矢理着替えさせる。

 数分後。親戚全員が着替え終わったのでこの家を出る。

 この家は今ので最後だ。荷物は引越し業者が今日中にエルザ家に運びこむらしい。

 エルザ家に着いた。

 エルザ家はリンジカ家の屋敷の二か三倍の大きさだ。

 リンジカ家はみんな唖然だ。

 すると


「ようこそ。リンジカ家の皆さん。私達エルザ家はあなた方を歓迎します」


 と突然声が聞こえる。

 リンジカ家のみんなは一斉にその声が聞こえた方へ振り向く。

 そこに居たのはいかにも優しそうな初老だ。

 彼を見てリンジカ家の人達がみんな固まる。

 彼はこのエルザ家を大きくした張本人のアルグダ・エルザ。

 アルグダの後ろから小さな少女が出てきた。

 少女はミリカより小さな少女だ。


「こらこら、今日から新しい家族の一員となるリンジカ家の皆さんに挨拶しなさい」


 アルグダがそう言うとミリカより小さな少女はアルグダの後ろから出てくる。


「クラル・エルザです。これからよろしくお願いします」


 ミリカより小さな少女──クラルはそう自分の名前を名乗る。

 アルグダはそのクラルを見て「よくできました」と優しい微笑みを見せながら言う。

 クラルはそれに喜んでいる。


「実はこの子が次期当主候補なのです」


 アルグダがそう言う。


「あれ? その子のご両親は?」


 ミリカの母親がそう聞く。


「実はこの子を産んですぐに他界したのです」


 アルグダはそう答える。


「すみません」


 ミリカの母親はまずいことを聞いてしまったと思い謝るがアルグダが「いえいえ、気になさらないでください」と優しい微笑みをしながら言う。


「そちらの家があった時の次期当主候補はどなたなのですか?」


 アルグダがそう聞き返す。


「今の当主が私なので次期当主候補はこの子ですかね」


 ミリカの母親がそう言いミリカを手招きで呼んだ。


「自分一人で挨拶してみなさい」


 ミリカの母親は優しくミリカにそう言う。

 ミリカは笑顔で頷く。


「ミリカ・リンジカだよ! これからよろしく!」


 ミリカはそう挨拶する。


「やっぱりダメだったか」


 ミリカの母親は額を押さえながら誰にも聞こえない声で言う。


「すみません。実は今、決めたばかりなのでしつけをしてなくて」


 ミリカの母親はそうエルザ家の人達に謝る。


「さてと、屋敷の中に入りましょう」


 アルグダはそう言い中に入っていく。エルザ家の人達はそれについていく。

 ミリカの母親はそれについていく。リンジカ家の人達はそれについていく。

 クラルとミリカはその場に取り残される。


「えっ……と。クラルで良いのかな? あたし達も行こう」


 ミリカはクラルにそう聞く。


「わかったよ。入ろうか。ミリカ」


 クラルはミリカにそう言う。

 ミリカは少し安心する。

 喋り方が年相応だったからだ。

 屋敷の中に入るとみんな盛り上がっている。


「えっ⁉︎ こんなご馳走好きに食べて良いの?」


 豚の丸焼きや鮫のフカヒレスープやフォアグラパスタが置いてあったからミリカは驚く。

 クラルにこの屋敷に入る前に好きな物を食べて良いからと言われていたからだ。


「これって……果汁百パーセントで搾りたてのフルーツジュース⁉︎ これも好きに飲んで良いの」


 ミリカは大好きなジュースがあったので興奮気味にクラルに聞くとクラルは優しい微笑みをしながら頷く。


「あっ。母さん達が交友の儀をするために大きな舞台の上でお酒を飲み始めている」


 ミリカはジュースを取る前に舞台を見てそう言う。


「これで私達は友達ね」


 クラルがそう言う。

 ミリカは何となくだか、クラルは友達が欲しかったんだろうなと思った。

 ミリカはそれに頷くと果汁百パーセントの搾りたてジュースのオレンジ味を取って豚の丸焼きの一部を食べている。


「あぁ、幸せ。まるで、夢みたい」


 ミリカはそう感じたのでそのまま口に出した。

 すると、突然この部屋が真っ暗になった。


「えっ? なになに? 停電?」


 ミリカは真っ暗闇の中クラルに聞いた。


「わからないけど、停電だったらもうすぐ復旧するよ」


 すると、クラルが言った通り復旧した。


「キャァァァァァァァァァァァァァァ‼︎」


 電気が復旧した瞬間に女性が突然悲鳴をあげたので、そちらを見るが何もなかった。

 その代わり妙に静かだった。

 ミリカとクラルは舞台を見る。

 すると、ミリカの母親とアルグダが血塗れで倒れている。

 そして、互いに包丁を持っている。


「あっ……あっ……あっ……お爺様……」


 クラルはそう掠れた声を上げる。


「お爺様ァァァァァァァァァァァ‼︎」


 クラルは叫ぶ。

 お爺様はあの血の量だったら確実に死んでいる。ミリカは諦める。

 だが、不思議に思う。

 隣から声が聞こえてこないからだ。

 隣にはミリカが居るはず。クラルはそう思い横を向くとミリカが居る。少し、安堵したが何か様子がおかしい。


「あっ……あっ……あっ……あっ……」


 声が隣に居るミリカにギリギリ聞こえるくらいまで掠れている。


「………………………」


 そして、無言になっている。

 すると、いつの間にか舞台の上に黒いマスクを被って黒いマントを羽織っているものがいた。

 そして


「みんな隣を見てみて。私らと同じイカしているマスクをマントが付いているよ」


 ミリカは隣を見る。クラルはそんな物が付いていなかった。

 だが、その代わりにこの部屋に居るクラルとミリカ以外の者全てにマスクとマントが付いている。


「さて、この二人を殺したのは黒いマントとマスクを付けている者だよ。誰が殺したのだろうね」


 そう言うとあちこちから言い争いが始まる。

 それでも、ミリカは無言だ。

 クラルはミリカの身体を揺すり「大丈夫? ねぇ、大丈夫?」と何度も聞く。

 それでも反応がない。


「クックックックッ」


 突然ミリカは笑い出した。


「アハハハハハハハハハ‼︎ 誰が殺したのだろうねだって。黒いマスクとマスクを付けている奴全員殺せば良いだけの話でしょ」


 ミリカがそう言うと舞台上の黒いマスクとマントを付けている者がミリカの方に振り向いた。


「おやおや。子供じゃないか。だったらそんなことを言っても何もできないでちゅよね」


 黒いマスクとマントを付けている者がそう言う。


「本当にそう思いますか?」


「何?」


「本当に何もできないと思いますか?」


 ミリカがいや、ミリカの姿をした別の何かがそう言う。

 すると、突然ミリカの身体に変化が訪れる。

 銀色の髪はなぜか光り、目が血に染められたように真っ赤になる。

 そして、身体が大人の女性に変化した。


「何を言っているのかね。この子供は」


 舞台上の黒いマスクとマントを付けている者がそう言う。

 だが、クラルの目にはミリカが大人の女性に映っている。


「さてと、変化」


 ミリカではない大人の女性がそう言うと服が大きい胸を強調するように変わり露出も多くなる。

 さらに髪も腰ほどまでの長さになり雪の結晶の形をした髪留めが後ろ髪付き髪の毛がロングポニーテールになる。

 そして、どこからか汚れが全く付いていない雪のように白い色のレイピアが出てくる。

 そして、一番大きく変わったのは雰囲気だ。

 さっきまではミリカの雰囲気を漂わせていたが今は色気がある大人の女性の雰囲気を漂わせてその中に殺気が散り散りに混ざる。


「さて、殺しましょうか。まずは貴方」


 大人の女性がそう言うと瞬時に舞台上の黒いマスクとマントを付けている者の目の前に辿り着き問答無用でレイピアでその者の首を斬り落とす。

 次の標的に移る。


「ダメ‼︎」


 クラルがそう叫ぶがその声は届かずに次の標的──まだ、微かに息があったアルグダとミリカの母親にトドメを刺した。

 次にクラル以外の観客を一斉にレイピアを振るい凍らせて繋がっている部分を壊す。

 それで、氷が壊れて一気に倒す。

 そして、この屋敷の外に瞬時に出る。

 外に居た黒いマントとマスクを付けている者達の首を斬り落としたり、凍られてその氷を壊したりした。

 それで、全ての黒いマントとマスクを付けている者達を全て殺した。

 すると、屋敷の中からクラルが出てきた。


「はっ⁉︎ 貴女ミリカじゃないよね」


 クラルは全身血塗れの存在を見てそう言う。

 クラルにはわかっている。

 本当に短時間だが一緒に行動してミリカの人柄はわかっている。

 ミリカは人が死んだり傷付いたりするのが一番嫌いで、外面では明るくしているが内面では色々考え過ぎている。

 だから、クラルは今の自分の目の前に居る存在はミリカじゃないことはわかっている。


「この死神‼︎」


 クラルはそう言う。


「ミリカを返しなさい。あの人は……私の初めての友達。だから、死神なんかに絶対に渡さない‼︎ 返せ。ミリカを返せ‼︎」


 クラルはそう叫び背中からスナイパーライフルを取り出しロックオンせずに目の前の存在を撃つ。

 だが、何かに阻まれる。

 それでも、クラルは撃ち続ける。


「仕方ないですね。今回は返してあげます。いつかまた、この世界に現れた時は貰っていきます」


 目の前の存在はそう言うと地面に倒れていく。

 姿は元のミリカの姿に戻っている。

 だが、すぐに目を開けて


「あぁ、そうでした。この屋敷を壊すのでした」


 目を前の存在はまた立ち上がりミリカの姿から変わっていた。

 目の前の存在はレイピアを振るい屋敷を全体凍らせてその氷を壊す。


「それでは今度こそまた」


 また、目の前の存在は元のミリカの姿に戻る。

 クラルはまた何かあると思い身構える。

 だが、何もなかった。

 クラルは跡形も無い屋敷を見てショックを受けたがとりあえず今はミリカをどうにかするために公衆電話で救急車を呼ぶ。

 そして、二人は念のため救急車に運ばれた。

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