表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
滅亡世界 前編  作者: 紙本臨夢
第四章
46/58

四話

 圭兎の身体は全身血塗(ちまみ)れになっている。

 だが、血は全て知能があるゾンビを殺した時の返り血だ。

 クマナとミヤナも圭兎よりはましだが血塗れ状態になっている。

 圭兎は妖刀罪殺と生成した刀を同時に横に振るい二人同時に殺した。その返り血が体に付着した。

 圭兎はずっとこんな感じで知能があるゾンビを殺しているので返り血をかなり浴びている。

 クマナとミヤナは一体一体確実に倒している。

 だから、二人は圭兎よりはましだが血塗れなのだ。

 さっきと同じように圭兎は二本の刀を振るった。

 だが、知能があるゾンビに避けられたので空振った。

 だが、圭兎は逆にニヤリと笑う。

 そして「凍れ」と言うと生成された刀から、かなり低い温度の冷気がゾンビめがけて放った。

 圭兎は凍らしたゾンビを流れ作業のように妖刀罪殺で氷を壊し殺す。

 斬れたら殺し避けられたら凍らして氷を壊し殺す。

 圭兎は何度も同じことを繰り返した。

 圭兎はまた、避けられたのでかなり低い温度冷気を生成した刀から放つ。

 だが、それも避けられた。

 圭兎は少し焦ったが落ち着いて凍らした。

 だが、ゾンビは凍ったゾンビの氷をすぐに溶かした。

 溶かした方法は簡単だ。どこにあったのか分からない水を沸騰させその沸騰した水を凍ったゾンビにかけ溶かす。

 それが知能のあるゾンビがやったことだ。

 圭兎はその沸騰した水をかけたゾンビが今まで居なかったことに気付く。


「へぇ。ゾンビなのに考えたな」


 圭兎はそう言いながらどうするか考える。

 そして、思い至ったのは妖刀罪殺の形態を使うことだ。

 だが


『今ハ使ウナ』


『力に飲み込まれるよ』


 と心の中と頭の中から圭兎に言う。


「はぁ? どういうことだ」


 圭兎はそう聞いた。


『アイツラニ飲ミ込マレル。アイツラハ我ラヲ汝ノ中カラ出ソウトシテイル。汝ガアノ力ヲ使ウト汝トノ結ビツキガカナリ緩クナル』


 心の中に何かがそう答える。


「お前らには都合が良いことだろ。なぜ止める」


 圭兎はもう一度聞く。


『僕達はもう死んだ存在だよ。もう、生き返りたくない。もう、その世界とはおさらばしたいからね。君の中に居るとこの世界とは別の世界に行けるしね』


 今度は頭の中の何かが答える。


「分かった。仕方ないが、当たって砕けろ戦法でいくか」


 圭兎はそう誰にも聞こえないほどの小声で言う。

 すると、凍らせれる刀が砕け散った。

 圭兎はそれを見て時間かと思う。


『チャージスピード。武器生成。シールド生成』


 シールド生成と聞いたことも無い呪文名を言う。

 圭兎は武器生成が終わるとチャージスピードがかかっている速度で走る。

 普通ならGで身体が潰れるがシールド生成をしたお陰か全く動じていない。

 そして、数分で知能があるゾンビ達を殺した。

 知能があるゾンビの中には助けを求めている者もいたが圭兎は問答無用で殺した。

 圭兎は「解除」と言い全ての呪文を解除した。

 圭兎はクマナとミヤナが居る方へ振り返る。

 そして、ゆっくりと歩いて行く。

 二人の元へ辿り着いた。


「怪我は無いか?」


 圭兎は二人が自分の中の存在を生き返らせるために協力したと知っているがそう聞いた。


「えぇ、私達は大丈夫です」


 圭兎は「そうか」と言い少し安堵したが何かがクマナとミヤナに向かって来ているのに気付き、二人を後ろにして両手を広げる。

 そして、何かが刺さるいや、貫通した。


「クソ‼︎ こういう時に回復が出来ないようにする薬が入った銃弾かよ‼︎ 軽総都‼︎」


 圭兎はそう叫ぶが銃弾を撃った状態の軽総都は居なかった。

 だが、圭兎の目には見えていた。


「怪我は無いか……」


 圭兎はガハッと口から血を吐きながら二人に聞いた。

 銃弾は圭兎の両方の肺を貫通していた。

 圭兎以外は見えないが軽総都は銃弾を二発撃っていた。


「私達は大丈夫ですけど貴方が‼︎」


 クマナに圭兎はそう言われだが軽く微笑み


「大丈夫だ……。これぐらい‥‥‥ほっとけば……治る……」


 と言う。


「無理です‼︎ 今、治します‼︎」


 ミヤナがそう言い返す。だが


「それこそ無理だ」


 と圭兎は反論する。


「どうして?」


「俺の身体……全身黒い痣が出来ている……だろう……? この痣が……外部からの……力を……受け……付けない」


 圭兎は言葉を途切れ途切れ言いながら自分の今の身体の状態を説明する。


「やってみないと分かりません‼︎」


 圭兎の身体の説明を聞きながらもミヤナは回復の力を使う。

 それにクマナも手伝う。

 だが、圭兎の身体は何の反応も起こらない。


「そんな⁉︎」


 その現象に二人は同時に声を出し驚いている。

 今までこんなことは無かったんだろうなと圭兎は思う。

 すると


『それじゃあ、内部からだったら』


 と頭の中から声が聞こえる。


『我モ手伝オウ』


 と心の中から声が聞こえる。


『我ノ生命力ヲ少シ分ケ与エル』


 二人がそう呪文を唱えると内部から温かいものを飲んだような気持ちになり癒されていく。


「まさか⁉︎」


 圭兎は何かに気付きそう心の中で言う。


『そのまさかだよ』


 心の中の何かが微笑む。


『我ラハオ前ノ中カラ消エル』


「どうしてそんなことを‼︎」


 圭兎は心の中で言ったつもりが声に出ていたのでクマナとミヤナが驚いている。

 圭兎が瞬きをすると、身体の中から何かが抜けた気持ちになっていた。いや、抜けていた。

 だが、二人の存在は霊体みたいな感じで圭兎の目の前にボヤけて居た。

 それは、クマナもミヤナも見えている。


「どうしてお前らが消えなくちゃいけないんだ‼︎ 俺の中では何も悪さをしてないじゃないか‼︎ むしろ良いことをしているはずだろう‼︎」


 圭兎がこの理不尽な状況に腹を立ててそう叫ぶ。その圭兎の叫びのおかげでミヤナとクマナは今の状況を理解して「そんな⁉︎」と言う。


「お前らが消える理由は無いだろう‼︎」


 圭兎がそう叫ぶ。

 すると、圭兎の頬に暖かさを感じるほどの冷たい手が触れる。

 圭兎は驚いて目を見開くとそこにはミヤナやクマナとは違う女性が居た。

 片方は圭兎と同じ漆黒の髪と漆黒の瞳を持っている女性だ。

 もう片方は鉄のような銀色の髪も血に染まったかのような瞳を持っている女性だ。


「我ラハコノ世界デ生前ニ悪イコトヲシテイタ。ソノ報イダ」


 漆黒の髪の女性はそう言う。

 圭兎はその女性の話し方で心の中に飼っていた存在だと理解しもしかしたらもう片方はと思う。


「そうだよ。僕達は消えて当然のことをしてきた存在なんだから」


 銀色の髪の女性がそう言う。

 圭兎はその女性が予想通りの存在だと理解する。


「……クッ‼︎」


 圭兎は彼女らに言い返そうとしたが出来なかった。


「あぁそうだ。一応名乗ろう。僕の名前はミスカル・オルセイン」


 頭の中の存在──ミスカル・オルセインはそう名乗る。


「我ノ名ハ阿満來未奈(あみつくみな)ダ」


 心の中の存在──阿満來未奈がそう名乗る。


「あぁ、もう時間だ。僕達は消えるよ。会えることは無いだろうけどまたいつか」


 ミスカルはそう言う。


「ミスカル様‼︎ 私も付いていきます‼︎」


 クマナがそう叫ぶ。


「來未奈様‼︎ 私も貴女に付き添います‼︎」


 ミヤナがそう叫ぶ。


「駄目だ‼︎」「付イテ来ルナ‼︎」


 二人ともそう叫び拒否した。


「汝ラハ圭兎ト共ニ行動シロ‼︎」


「彼女の言う通り。君達は圭兎君に付き添ってあげて。そして、彼が血迷った時に元の道に止めてあげて」


 來未奈とミスカルはそう言う。


「いや、駄目だ‼︎ お前らが止めるのだろう‼︎ 約束しただろ‼︎ 俺が血迷った時は止めるって‼︎」


 圭兎はそう叫ぶ。


「分かった。それじゃあ、血迷った時に止めるよ」


 ミスカルのその言葉に圭兎は安堵する。


「ソウダ止メテヤル」


 來未奈もそう言ったので圭兎は完全に安堵した。

 だが


「汝ハ今血迷ッテイル。ダカラ止メル」


 と來未奈が圭兎に言う。


「そうだね。君は今血迷っているね。僕達は君の身体を乗っ取ろうとして居たんだよ。つまり、君の敵だ。その敵が消えるのを心配している。これを血迷っていると言わずにどうするんだ?」


 ミスカルはそう言う。


「そ、それは……」


 圭兎は言い返せない。


「でも、ありがとう。僕達のことを心配してくれて」


「確カニナ。我ラガ入ッテ居タコトニ気付イテ消エルト分カッタ時ニ心配スルノハ汝が初メテダ」


 來未奈とミスカルはそう圭兎に感謝していることを伝えた。

 二人は圭兎の左右の頬にキスをした。

 そして、二人は満足したかのように完全に身体は消えた。

 ミヤナとクマナは完全に目の焦点が合っていない。

 圭兎は最後のキスには驚いたが、自分が血迷っていたことに気付いた。


「あいつらの言う通りだ。俺は何を血迷っていたんだ? 世界には俺の敵しか居ないのに。何を勘違いして居たんだ? 俺は。世界の全ては敵だ。俺を助けたのは利用するためだ。そうだ。俺は血迷っていたんだ。俺は世界を全て殺さないといけないんだから」


 圭兎はぶつぶつとそう言いながら目からは涙を流していた。

 涙が止まるのを待って圭兎は地面を見た。

 ミヤナと來未奈は意識を失っている。

 目の色も元の色に戻っている。

 圭兎は二人を持ち上げて今の自宅に運び込んだ。

 そして、二人を同じ部屋の別々のベットにそっと寝かせる。

 圭兎はその時に少し穏やかな目で見たが首を横に振り部屋を出る。

 そして、風呂場に行きシャワーを浴び身体の返り血を洗い流す。

 圭兎はシャワーを浴びている時にミリカとクラルの身体の血を拭いてないことに気付く。

 圭兎は自分がシャワーを浴び終わると服を着替えて水を入れた桶を二つと空のバケツを一つとタオルを四枚持ってクラルとミリカの部屋に入った。

 圭兎は二人の服を脱がし見ないようにしながら二人の返り血が着いた身体を拭いた。

 拭き終わりまた、見ないように服を着替えさせる。


「ふぅ」


 圭兎はコーヒーで一息入れた。

 そして、自分の部屋に行き布団に入り寝ようとしたが目が冴えて寝れなかったので考え事をし始める。

 俺には本当に味方が本当に居ないのか?

 圭兎は今日のことを経験してそう不思議に思い考えていたが何も分からなかった。

 その他にも知能があるゾンビの対処法や妖刀罪殺の今後の使い方や遺跡に書かれていたことなどのことを圭兎は考えていたが結局何も分からなかった。

 圭兎は目を開けると気付かない内に朝になっていた。


「寝ていたか」


 圭兎はそう独り言を言う。

 目が覚めたのは午前九時だった。

 寝坊した。

 圭兎はそう思った。

 そして、朝食を作らないといけないことに気付いたので急いで部屋のクローゼットの中に入っていた全身真っ黒の服に着替えてキッチンに向かった。

 だが、ミリカとクラルが起きていて朝食を作ってくれていた。


「悪いな。寝坊して」


 圭兎はそう言う。

 二人はそれで圭兎が降りてきていたことに気付いて「おはようございます」と挨拶する。

 圭兎は「あぁ、おはよう」と返した。


「寝坊することは普通にありますから仕方ありませんよ。昨晩は激しかったようで」


 クラルが冷めた目で圭兎を見てそう言った。


「ん? 昨晩の記憶があるのか?」


 圭兎は不思議に思った。


「はい、ありますよ。私達が死神に身体を乗っ取られたことも。圭兎さんが綺麗な二人の女性に頬にキスをされていたことも。全てありますよ。何のためか死神が意識を残してくれていたから」


 クラルはそう言う。

 圭兎は不安になり「その後の記憶は?」と聞いた。


「残念なことに無いわよ。あの後何をしたかも。何をされたかも」


 クラルに聞いたが圭兎の疑問にミリカが答えてくれた。

 真面目状態で。


「そうか。なら良いんだ」


 圭兎は少し安堵する。

 自分が泣いたことも。彼女達の服を見ないようにしながらも着替えさせたことも。覚えていないことに。


「ちなみにあたしがこの状態だと何か真面目な話があると思いますか? 圭兎さん」


 ミリカは真面目状態で圭兎に質問した。


「俺はあると思うが無いのか?」


 圭兎は普通に返した。


「いや、ありますけど。今からする話はあたしとクラルの過去の話です」


 ミリカはそう言った。

 圭兎はリビングの座椅子に座り姿勢を正した。


「そんなに緊張しなくても大丈夫です。朝食を食べながら話しましょう」


 ミリカがそう言い朝食を渡して来たので圭兎はそれを素直に受け取りミリカが話すのを待つ。


「それでは話しましょう。あたしとクラルの過去を」


 ミリカはそう言い過去の話を始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ