三話
圭兎は今、よくわからない場所にいる。だが、圭兎は貴族達と喧嘩をした後、夕飯を食べて体を拭いてから寝たはずだった。
「初めまして。志水圭兎さん」
圭兎が周りを確認していたら、目の前に着物を着ている黒髪黒目の女性がいた。
そして、その女性が圭兎の名前を言った。
「あの、ここはどこですか? それと、あなたは誰ですか?」
圭兎は不思議思ったので、その女性に聞いてみた。
「申し遅れました。私の名前は、水川忌楼です。そして、ここは貴方の夢の中ですよ。志水圭兎さん」
忌楼は礼儀正しく圭兎に挨拶をした。
「あ、それとどうして俺の名前を知っているんですか?」
圭兎は一つ聞き忘れていた事を思い出し忌楼に聞いた。
「それは...貴方が妖刀罪殺の今の持ち主だからです」
忌楼は、少し言いにくそうに言った。
「え? どうして、罪殺の事を!?」
圭兎は誰にも話していない妖刀の事を忌楼が知っていたので身構えた。
「そんなに、身構えないでください! 信じられないでしょうが、私が罪殺の事を知っているのは、私が罪殺の前の持ち主だったからですよ!」
忌楼が慌てながら圭兎にそう言った。
「前の持ち主...。そうですか。身構えたりしてすみません」
圭兎は素直に謝った。
「信じてくれるんですか? 自分で言うのもなんですが、突拍子の無い事なのに」
忌楼は、驚きながら言った。
「はい、信じますよ。こういうことは、よくあることでしょうから。何か、やってはいけないこと等を注意してくれるんでしょう?」
圭兎は、マンガ等でその様なことを読んだのを思い出して言った。
「えぇ、そうです。ですが、罪殺の注意点が無くて、この世界...滅亡世界での注意点があります」
忌楼は、圭兎の言ったことを普通だったらと肯定したが、罪殺の注意点は無いと否定したが滅亡世界での注意点はあると言った。
だか、圭兎はなぜ滅亡世界のことを過去の人が知っているのか気になったが聞かなかった。
「まず滅亡世界では、貴方の元いた世界と同じ時間帯に新しい商品が入荷します。
次に、滅亡世界では、元いた世界との時間差があります。滅亡世界で一日経過すると元いた世界では、一時間経過します。
最後に、滅亡世界でのゾンビ等はきっちり殺して下さい。以上です」
忌楼は、滅亡世界での注意点を圭兎に言った。
「わかりました」
圭兎は、忌楼が言ったことを全て理解した。
「それでは、俺はこの辺りで。水川さん...いや、忌楼さん色々教えてくれてありがとうございました」
圭兎はそろそろ、目が覚めそうだと思いこの場から立ち去ろうとした。
「待って」
だが、忌楼に止められた。
「妖刀罪殺の力に呑み込まれないで下さい。さもなくば、私みたいに人を殺すためだけに生きる化け物になりますよ。そんなこと貴方の、死んでしまった家族も悲しむでしょうから」
忌楼は、遠くを見るような目をしていた。
「多分、大丈夫ですよ」
圭兎は少し不安だったので多分を付けて言った。
「それでは、さようなら」
圭兎は忌楼にお別れを言った。
「えぇ。また、会いましょう」
「はい。それでは、また」
圭兎は忌楼にもう一度お別れを言って、この夢の中の世界から出た。
翌朝、圭兎は昨夜の夢のことを思い返していた。
(随分と不思議な夢を見たな)
圭兎は夢の内容を全て思い返し、そう思った。
すると、足音が遠くから聞こえてきた。その足音が近くに来たので圭兎は顔を確かめると、全く知らない初老だった。
初老は、エリカの近付くと
「お久しぶりです。お嬢様」
そう言った。その言葉にエリカが振り返った。
「パトリック!?」
エリカは、その初老を見て驚きながらそう言った。
「そうです、パトリックです」
パトリックと名乗った初老はエリカの言葉を肯定した。エリカはそのパトリックの言葉で泣いていた。
すると
「その人、エリカの知り合い?」
その様子を見て、トシカリは初めて圭兎に会った時と同じ事をエリカに聞いた。
「はい、そうです。私の家にいる使用人です」
エリカは涙を拭ってトシカリに初老の紹介をした。
「パトリックと申します。以後、お見知りおきを」
パトリックは、深々とお辞儀をしながら言った。
「はい。よろしくお願いします」
トシカリは笑顔で挨拶を返した。
朝から時が過ぎ、今は夕時だ。
パトリックは圭兎以外の人達と仲良くなっていた。
なぜなら圭兎は、町中をあちこち歩き回っていたからだ。そして、今帰ってきたところだ。
圭兎は朝と同じ位置にいた。
すると、パトリックは圭兎の横を通り過ぎ、エリカの背後に立った。
すると、どこからか
「私を誰か殺してください!」
と言う声が聞こえた。
それと同時にパトリックはエリカを後ろから噛もうとしていた。圭兎はそれを見てすぐさま理解し動いた。
そして、圭兎は妖刀罪殺を抜き放ちパトリックの首を落とした。圭兎はパトリックの血を全身に浴びた。
「汚ねぇの」
圭兎は心にも無いことを言った。
「え.......?」
エリカは圭兎の方を向きながらも状況が読めていなかった。
「志水!! お前!!」
トシカリは怒って圭兎の方に振り返ったがそこにはいなかった。
「ふっ」
圭兎は遠くで微かに笑っていた。
「貴女があの人を追いかけなさい!」
美佐が圭兎を指して急いで金髪の神に言った。
「わかりました?」
金髪の神はそう言い、圭兎を追いかけていった。
「クソ!」
トシカリは、圭兎に対する怒りをあらわにしていた。トシカリ以外も皆、圭兎に怒っている。二人を除いてだが。
「圭兎...」
エリカは、圭兎が向かった方をそう言いながらずっと見ていた。
「エリカ、アイツは人殺しなんだよ。しかも、エリカの家族を殺したな」
トシカリはそう言った。
「それならまだいい...いや、よくないな。ともかく、アイツは人を殺して笑っていたからな!」
トシカリは最後の部分を強調し言った。
「あ、そう言えば神様。どうして、仲間の神様をアイツのところに行かしたんですか?」
トシカリは美佐が最後にしたことを思い出して聞いた。すると、美佐は
「圭兎さんは、パトリック様の首を落としたとき一瞬だけ顔をしかめていました。なので最後のあの笑いは人を殺せたので嬉しくて笑ったのではなく、もう自分はいつ死んでも、おかしくないなと思い笑ったのでしょう。ですから、圭兎さんが一人にならないようにと思いあの子を行かしたのです」
美佐はトシカリの問いにそう返した。だが、
「それは検討違いだと思いますよ。つまり、アイツからあの神様を連れ返さないと」
トシカリがそう言うとエリカと美佐を置いて歩いていった。
「美佐さん、行きましょう。圭兎の真意は捕まえてから聞き出しましょう」
エリカは無理に微笑みながら美佐にそう言った。
「わかりました。それでは行きましょう」
美佐はそう言い、エリカと一緒にトシカリの場所まで小走りで行った。