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滅亡世界 前編  作者: 紙本臨夢
第三章
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五話

 圭兎は辺りを見た時の希楽夢の反応を見てうっすら笑った。


「ここは屋根が無い商店街だが、その大きさの機械だったら戦闘がちゃんと出来ないだろう。だから、出て来いよ」


 圭兎はそう言った。圭兎がこの場所を選んだ理由は希楽夢を二足歩行大きな機械から出すためだ。圭兎は一度だけ希楽夢が二足歩行の機械から出ていたのは見た事があるがそれを信じたくなかった。なので、もう一度出て来るように仕組んだ。


『仕方無い。出てあげよう』


 希楽夢は諦めたような声でそう言った。だが、希楽夢が何か企んでいるか生身でも自分に勝てる自信があるのかその二択だと圭兎は思った。

 だが、希楽夢は出て来なかった。

 圭兎は無理矢理出そうと思った。


「フフフフフ」


 だが、背後から突然声が聞こえてきたので圭兎はすぐに振り向く。

 圭兎の目の前に居たのは正真正銘希楽夢だ。

 瞬きをすると目の前に居たはずの希楽夢が居なくなっている。


「っ!? 妖刀罪殺飛行剣士形態‼︎」


 背後から凄まじい程の殺気を感じたので圭兎は一瞬息を飲んだが、すぐに呪文を唱えて羽根が生え始める。

 だが、遅かった。

 希楽夢は圭兎が振り向いた時にはすでに目の前に居て西洋の形の剣を振り下ろす。

 圭兎は急いで後ろに緊急回避をしたが間に合わなくて希楽夢に右の手の甲だけ斬りつけられた。

 だが、希楽夢が振り下ろした剣が右手に当たったはずなのに甲高い音が響く。

 希楽夢はその音に驚く。

 圭兎は全てを察する。妖刀罪殺を使い過ぎている影響で自分の皮膚が完全に硬化している事を。


「斬り落とせたと思っただろう。だが、残念だったな」


 圭兎はついさっき、皮膚が完全に硬化している事に気付いたが戦闘が始まる最初から知っていたかのようにニヤリと笑う。

 希楽夢がどうやって圭兎を殺すか迷っている間に圭兎は羽根が完全に生え、赤黒い色のした鎧を身に纏った。


『チャージスピード……武器を』


 圭兎はまだ、希楽夢が迷っていたので速度が速くなる呪文と武器を生成する呪文を簡略化して唱えた。

 速度は速くなり、妖刀罪殺とは対になるような武器を手に持った。

 妖刀罪殺は呪文を唱える前は赤黒い色をしていて唱えた後は青白い色になるが、今回圭兎が生成した武器はその逆だ。

 呪文を唱える前は青白い色で、唱えた後は赤黒い色になる。

 圭兎がそれを知った理由は、生成した時に一瞬だけ青白い色が見えたからだ。

 圭兎は一瞬にして希楽夢を斬れる位置に着く。

 そして、少し迷ったがその迷いを捨て去って希楽夢を斬るため妖刀罪殺を振り下ろす。

 だが、迷っていたはずの希楽夢にその攻撃を防がれる。圭兎はすかさず、もう片方の刀も振り下ろす。それも、受け止められる。

 すると、希楽夢は圭兎を殺す方法が思いついたのか目を見開いている。


「別に殺さなくて良いんだ」


 圭兎には聞こえないぐらいの大きさの声で希楽夢はそう呟き一瞬にして圭兎の両腕と両脚を斬り落とした。


「……!? ……!?」


 圭兎は痛さのあまり声が出ない。


「これで終わりよ。まぁ、でも解剖はさせてもらうよ。圭兎の身体を」


 希楽夢は圭兎の身体を解剖するのが楽しみで目を輝かせながらそう言う。

 希楽夢は目を輝かせながら静かに圭兎に近付いてきている。そして、圭兎に触れられる数メートル前で希楽夢は足を止めならざる終えなかった。

 なぜなら、圭兎が突然


「ぁ……ぁ……」


 と掠れた声を漏らしたからだ。そのため、希楽夢は何かあると思い足を止めた。

 すると、突然カタカタと音が聞こえた。

 希楽夢はその音が聞こえた方を見る。

 すると、妖刀罪殺が誰も触ったいないのに動いている。

 その現象を見た希楽夢は後ろに大きく飛んだ。

 すると、妖刀罪殺が圭兎が流している血を全部吸い、倒れていた妖刀罪殺が急に立ち上がった。

 そして、空中に浮き圭兎の方に向かっていった。

 希楽夢はポケットに隠していたナイスを取り出し投げる。

 この世界の希楽夢は投擲が得意だ。

 なので、妖刀罪殺に直撃する軌道で投げて、妖刀罪殺に当たると思っていた希楽夢だが、その思いは一瞬にして打ち砕かれた。

 なぜなら、妖刀罪殺がナイフを避けたからだ。

 それには、さすがの希楽夢も目を見開いた。

 そして、圭兎の方に向かった妖刀罪殺は圭兎の所に辿り着くと圭兎の方に刃が向き心臓の部分に刺さる。


「ガハッ‼︎」


 圭兎はそう声を出して血を吐いた。

 妖刀罪殺にはそれが驚きだったらしく心臓から抜けようとした。だが、圭兎はその妖刀罪殺を何とか押しとどめて、自分の心臓にさらに深く刺し込んだ。


「罪殺……俺の血を……大量に……吸わせてやる。だから、俺に力を貸せ‼︎」


 圭兎がそう言うと妖刀罪殺はそれを承諾したかのように血を大量に吸う。そして、妖刀罪殺は全体赤黒い色に染まり光る。


『我ハ、汝ヲ受ケ入レタ。全テヲ破壊シ世界ヲ救ウ。汝、力ヲ貸セ‼︎ 我ノ血ヲ捧ゲル‼︎ 妖刀罪殺破壊主形態‼︎』


 圭兎が倒れたままそう叫ぶと希楽夢に斬り落とされた手脚が一瞬にして元に戻る。擦り傷や切り傷を一瞬にして治る。


「さぁ、殺ろうか」


 圭兎はそう言って妖刀罪殺を持っている手を振った。すると、すごい風が起きて振るった範囲から十メートル内の地面の塗装が剥がれ、少しエグれた。希楽夢はギリギリ十メートルより遠くに居たので被害は無かった。

 続いて圭兎は足を踏み込んだ。一瞬にして希楽夢の目の前に行った。圭兎は『断絶』と言いながら希楽夢を縦に真っ二つにする。

 だが、希楽夢は真っ二つになっていなかった。


『よく分かったね』


 希楽夢に憑いていた研究長がそう言う。


「……」


 圭兎は無言で研究長を斬りつけようとする。


『おっと。危ない危ない。急に斬りつけるなんて酷いよ。圭兎君』


 研究長は楽しそうにそう言う。そんな、研究長の言葉を無視して圭兎は斬り続ける。

 だが、全て避けられる。

 ピピピピと突然電子音が鳴り響く。

 圭兎はそれでも斬り続ける。


『悪いね。もう時間だ』


 研究長は急につまらなさそうに言う。そして、姿を消す。希楽夢を置いて。


「今度会ったら殺してやる。“軽総都(かるふさみやこ)”」


 圭兎はそう研究長の本名を言う。

 なぜ、圭兎が研究長の名前を知っているかというと、単独行動している時に図書館があったのでそこに不法侵入して色々な本を読んで、古い研究資料的なものを読んで、そこに研究長の名前が記載されていたからだ。

 だが、最初はそんな訳がないと思っていたが孤卯未の話を聞いてもしかしたらと思った。


「あれが、人間かよ。二百……いや、三百年も生きているなんて」


 圭兎はそう一人で呟く。


「あ、忘れてた」


 圭兎はそう言ってから『解除』と言い、今の自分の状態を解除すると急に重度の貧血が起きてそのまま地面に倒れる。倒れて、数秒したら貧血は治る。なので立ち上がる。だが、立ってから数十秒後、急に身体のバランスが取れなくなり倒れる。どうしてそうなったか、気になり圭兎は自分の身体を見る。

 すると、両腕両腕が再度無くなっている。

 圭兎はやはりかと思った。

 圭兎が意識を失いかけると突然


「大丈夫ですか?」


 と言う女の子の声が聞こえる。

 圭兎はその女の子を見て少し笑いかける。

 圭兎は内心、悪いなと思っている。

 すると、その女の子が普通の女の子並みの大きさの掌を圭兎の傷の部分にギリギリ触れないように当てる。

 そして、女の子の掌が緑色に光っている。

 数分後。傷は完全に治してもらった。


「悪いな。罪殺」


 圭兎は女の子に笑顔で笑いかけた。


「な、何の事でしょうか? 私の名前は違いますよ」


 女の子は目を泳がせながらそう言っている。


「それじゃあ君の名前を教えて」


 圭兎は笑顔のままそう言う。


「え、えっと……私の名前は……」


 女の子は考え込んでいる。


「罪殺って、分かっているから良いよもう」


「良くないです」


「やっぱり罪殺だ」


「あっ……」


 圭兎が女の子の名前を分かっているから良いと言ったが女の子がそれに反応しすぐに罪殺だと分かった。


「どうして私が罪殺だってどうして分かったのですか? 何となくは無しですよ」


 女の子──罪殺はそうジッと圭兎を見て圭兎の反応を待っている。


「簡単だ。手元に罪殺を持っているだろ」


 圭兎はそう言う。罪殺はしまったと言う顔をしていた。


「どうする? そのまま居るか?」


 圭兎は罪殺の姿を見てそう聞く。


「はい。このままで居ます。て言うよりこのままでしか居られないのです」


 罪殺は圭兎の目を見て答える。

 圭兎は妙に申し訳ない気持ちになり「すまない」と謝った。罪殺は「いえいえ、お気になさらず」と困りながら言った。


「そうか。これからよろしくな」


 圭兎は罪殺にそう言うと


「はい。こちらこそよろしくお願いします」


 と罪殺はそう返す。


「罪殺のこれからの名前は軌際颯華(みちざいさつか)な。良いか?」


 圭兎は罪殺のこれからの名前を勝手に決めてこれで良いか聞くと「はい」と満面の笑顔で頷く。圭兎は一安心する。


「どのような姿にしますか?」


 罪殺──颯華は突然そう圭兎に聞く。


「え? 聞くってことは姿を自由自在に変えられるってことか?」


 圭兎は驚いてそんな当たり前のことを聞いてしまう。颯華は「はい」と頷く。


「俺は別にそのままの姿で良いけどな」


 そのままの姿とは、髪の色が夜に明かりがない程の暗さの黒髪で、前髪で目が隠れ、隠れている目の色が赤黒い色で、後ろ髪が脇の下までで、身長がエリカより一センチ程低い姿のことだ。

 颯華はそんな圭兎の言葉に驚いている。


「どうした? なぜそんなに驚く?」


 圭兎は颯華の驚き具合が不思議に思ったのでそう聞く。


「今までの持ち主達は、私の姿を見たことは無いのですが、頭の中に浮かべていたのが赤髪や金髪という日本人離れした人が好きな方達だったので驚いただけです」


 颯華は素直にそう答える。


「颯華は日本人に作られたのだろう。だから、日本人の姿をしていてもおかしく無いだろう」


 圭兎はそう返す。颯華は「そうですか……そうですね」と言い圭兎の腕に捕まる。

 圭兎はその腕から顔を赤くして一瞬で逃げる。颯華はその圭兎の行動を見て首を傾げている。


「俺は、女性恐怖症って訳では無いがその……あの……む、胸が当たっていたからな……つい」


 圭兎は恥ずかしそうに言うと


「私は別に気にし無いのですが……」


「俺が気にするんだよ」


 颯華の言葉に圭兎は即答する。


「ま、まぁ普通に手を繋ぐ位だったら良いのだがな」


 圭兎の言葉に颯華は少し寂しそうな顔をしていたので圭兎はすかさずそう言うと


「本当ですか? 分かりました。それでしたら、手を繋ぎましょう」


 颯華はそう言って圭兎の手を握る。

 圭兎はその手から一瞬で逃げた。


「どうしてですか? 私の事嫌いなのですか?」


 颯華は寂しそうに圭兎に聞く。


「普通の繋ぎ方って言っただろう? 何故最初から恋人繋ぎなんだよ」


 圭兎はそう言いながら内心では、颯華は姿は自分達と同い年だが精神はまだ幼いんだなと思っていた。


「普通の繋ぎ方ですか?」


 颯華は普通の手の繋ぎ方について圭兎に聞く。

 圭兎はため息を吐きながら


「普通の繋ぎ方とは簡単に言うと指を絡めるんじゃなくて、握手するように繋ぐんだ」


 と丁寧に説明する。颯華は圭兎の説明を聞いて圭兎と手を普通に繋いだ。今度は圭兎も逃げなかった。


「さてと、戻るか」


 圭兎はそう言い片方で手を繋いで、繋いで無い方の手で希楽夢を担いでトシカリが寝ている安全地域に戻り始めた。

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