表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
滅亡世界 前編  作者: 紙本臨夢
第二章後半
34/58

十一話

今回は少し長めです。

 孤卯未達が研究長に負けてから六年が経った。

 孤卯未は二十一歳になった。

 研究長に負けて倒れていると近くを通りかかった人がすぐに救急車を呼んでくれたので孤卯未達は一命をとりとめた。

 治療をしてから洸夜達が居る病院に運ばれたので洸夜達と同じ部屋になった。

 洸夜と美右は驚いた。三人も知り合いが同時に運ばれて来たからだ。

 運ばれて来たのは研究長との戦闘で負けた孤卯未と研究長に身体を乗っ取られていた紅と研究長の(しもべ)に身体をズタズタに引き裂かれながらも孤卯未達の元へやって来た湖だ。

 洸夜達は一気に人が運ばれて来たことにも驚いたがなにより、病室に運ばれて来たのが全員自分達の肉身だった事に驚いた。

 この六年間、初瀬川一家は必死に一年で治るようにリハビリをして退院をして、家に戻った後の五年間は研究長に勝つための特訓していた。その特訓の教官は初瀬川一家だけに完全に見えるようにした忌楼だった。

 初瀬川一家は忌楼の十分の一の力にも負けていたが、今では忌楼の半分の力にも勝てるくらいまでは成長した。

 だが、これでは研究長に勝てない。

 初瀬川一家と忌楼はそう思い、もし研究長が今、攻めてきたらどうやって対処するかを話している。

 だが、なかなか決まらないので「皆の変わったかも知れない意見を聞こう」と紅が言う。

 すると


「まず僕の意見を言おう。さっきまでと一緒で、ひとまず僕が研究長に攻撃していって皆が、研究長以外の周りの敵を倒す」


 と紅が言う。だが、皆はその意見に対して反対する。

 次に


「私の意見もさっきまでと一緒で、皆で研究長の周りの敵を倒してから研究長の首を私一人で取りに行く」


 と湖は言う。これもまた、皆がその意見に対して反対する。残りの三人も紅や湖と同じような意見だ。自分の身を犠牲にして周りの家族を守る。まとめると皆このような意見だ。


「このままじゃ埒があかない。忌楼。君の作戦を話してよ」


 紅がそう言うとその場に居る全員の視線が忌楼に向く。忌楼は話をし始めてからずっと黙ったままで何も言っていない。初瀬川一家は忌楼の作戦に期待している。

 すると、忌楼は突然立ち上がり「来た」と一言だけ言葉を放つ。皆はその一言で全てを悟った。

 研究長が攻めてきたと。

 案の定、研究長の僕がこの家の玄関の扉を開け放つ。

 その様子を見た初瀬川一家と忌楼は


『我らにあの者達を殺すための武器を!!』


 とその場に居る人間が全員そう呪文を唱える。

 すると、それぞれの手にそれぞれの武器が姿を見現した。

 紅には普通の形のショットガンが。

 湖には普通の形の銃剣が。

 洸夜には普通の形の大剣が。

 美右には普通の形の双剣が。

 そして、孤卯未の身体に乗っ取った忌楼には普通の形の日本刀が。

 それぞれの手に握られた。

 孤卯未の身体を乗っ取った忌楼がこの場に居る全員にアイコンタクトをすると全員が頷いてこの家に居る敵を全て倒してから自分達の家を出ると、この世界の時間が止まり霧が出ていた。

 それに動じずに全員が周りを見渡すと敵に囲まれている。

 そして、忌楼が孤卯未の口を借りて


「ここからは全員自由に戦って」


 と指示すると皆が一斉にバラバラに散らばった。

 それを見た忌楼は誰が何と戦っているかと戦況はどうかを霧を見て解析し始めた。自分の敵を倒しながら。

 紅は一番量が少ない大型種のモンスターと戦っている。戦況はこちらが少し押されている。

 湖は二番目に量が少ない中型種のモンスターと戦っている。戦況はこちらが少し有利だ。

 洸夜は二番目量が多い小型種のモンスターと戦っている。戦況はこちらが有利だ。

 美右は一番量が多いゾンビと戦っている。戦況はこちらが圧倒的に有利だ。

 そして、忌楼は機械の集団と戦っている。戦況は相手の出方が分からないので少し様子見で少し押されている。

 まとめるとこちらが有利なんだと忌楼は思った。

 孤卯未には忌楼が分析した事は分からない。孤卯未達が居た世界では実在していない存在は全て孤卯未にはノイズが混じって聞こえる。だから、孤卯未には今はこちらが有利なんだという事しか分からない。

 忌楼は自分の所の戦闘がもう既に終わっている美右に一番押されている紅の所の援護に行かせる。そして、美右が紅の敵と戦闘を始めたのを見計らって、忌楼は一回皆に聞こえる音量で指を鳴らした。その、音を聞いた皆は密かにニヤリと笑う。

 そして


「烈火の炎に包まれて消し炭になれ‼︎ フレイムバースト‼︎」


 と洸夜が叫んだ。

 次に


「耐えられない光に衝突して感電して!! ライトニングピアー!!」


 と美右が叫んだ。

 そして、最後に


「神速によって相手を翻弄する‼︎ チャージスピード!!」


 と紅と湖が叫んだ。

 瞬く間に敵を全て倒した。大型種は鋭い(いかづち)に貫かれ残っていた敵は一瞬にして倒した。小型種は凄まじい炎に包まれて消し炭になった。中型種は小型種を消し炭にした凄まじい炎に包まれて残ったいた敵はこちらも一瞬にして倒した。


『凄い……魔法みたい』


 孤卯未の心はその言葉で埋め尽くされた。孤卯未にしたら突然父親、母親、自分より年上の弟、自分より年上の妹が聞いた事もない言語を叫びだした。そして、彼等の身体に特殊な何かが生成されたからだ。


「ククク……ハハハハ!! いやいや、素晴らしかったよ。良いもの見せてもらった。ありがとう」


 霧の深い部分から突然声がした。その場に居る全員はそれだけで、何が来たか理解した。

 全ての悪の根幹の研究長だと。


「本当に素晴らしい物を見せてもらった」


 研究長はすごく上機嫌だ。その上機嫌に恐怖しか感じない。


「おや? 全て随分と成長したね」


 研究長は紅達の顔を見てすぐに成長をしたと思いしばらく会っていなかったペットに言うような言い方をした。

 研究長は気楽そうだが、紅達は全く油断を見せないようにしている。


「さて、全員で私にかかって来てね。そうしたら、少しでも私に傷を負わせる事が出来るかもしれないから」


 研究長は挑発する。紅はその挑発に乗るまいと気をさらに引き締める。

 だが、忌楼が──いや、孤卯未が最も簡単にその挑発に乗り研究長に斬りかかる。

 孤卯未は何かの薬をかけられると警戒しながらも、それぐらいなら避けれると確信している。

 研究長に斬りかかる。

 だが、研究長に薬をかけられる前に何者かに日本刀を止められてしまう。生成された日本刀はその衝撃で折れた。

 それに驚いている孤卯未の隙を突いて忌楼は身体を乗っ取り返して武器を再生成する。

 生成をし終えて孤卯未は自分の手元にある武器を見た。それは、六年前に研究長と戦った時に生成された鋸のような形をした日本刀だった。

 その武器に忌楼が気を取られている隙に何者かが攻撃を仕掛けてくる。忌楼は何とかそれを受け止めて相手の顔を見ると、十五歳か十六歳の少女だった。


『なっ!?』


 孤卯未は驚いている。


『嘘? 希楽……夢?』


 孤卯未の口からその場に居る人達の聞いた事の無い名前が発せられる。

 忌楼はある事を察して身体を孤卯未に返す。

 すると、孤卯未はその少女に少しずつ近付いて行き


「希楽夢……分からない? あたしだよ……初瀬川孤卯未よ」


 と泣きそうな声で希楽夢と呼ばれている少女に聞いた。


「……」


 だが、帰ってきたのは無言だ。


「ほら? あたしだよ……同じ中学校で良く、希楽夢とあたしで遊んだでしょう?」


 それでも、孤卯未は諦めずに希楽夢に聞く。

 だが、帰ってきたのは


「あなた誰?」


 という孤卯未にとって衝撃的な事を言う。

 そのせいで孤卯未は、膝から崩れ落ちた。戦闘中なのに。

 希楽夢は孤卯未に素早く斬りかかる。忌楼は反応して孤卯未の身体を乗っ取ろうとしたが、彼女にそのつもりは無いだろうが孤卯未に拒絶される。このままでは殺されると思い、必死にずっと孤卯未の身体を乗っ取ろうと試みる。だが、相変わらず拒絶される。

 試みる。拒絶される。試みる。拒絶される。

 それを何度も何度も繰り返している。

 だが、時間は無い。

 すると、もう目の前に彼女──希楽夢が持っている槍が近付いてる。

 もうダメだと思い忌楼は目を瞑る。

 だが、数秒経っても、何の衝撃も来なかった。

 孤卯未は恐る恐る目を開けた。

 すると、目の前に何か赤い物が垂れてきた。

 次の瞬間、孤卯未は目を見開いた。

 紅と湖が二人して孤卯未を庇い希楽夢が放った槍に貫かれていて、その槍を希楽夢は引き抜いた。


「あっ……あっ……」


 孤卯未は声にならない声を出す。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 孤卯未はせき止めていたダムが決壊したように泣き出す。


「よくも……よくも‼︎」


 洸夜は叫んで希楽夢に斬りかかる。その後ろには美右も付いていた。


「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す‼︎」


 洸夜は気が狂ったように連呼する。

 美右も同じ気持ちだと言うばかりの表情で希楽夢に斬りかかっている。

 希楽夢はその二人の攻撃を無表情で防いでいる。


「あたしのせいだ……あたしのせいで……父さんと母さんが」


 孤卯未は泣きながら地面に落ちてあった生成した鋸型の日本刀で自分の首を削り落とそうと拾う。

 そして、首にその鋸の刃が付いている方を首に当てて削り落とそうとしたが、なぜか自分の左手で自分の右手を持っている。だが、その手を無視してそのまま右手で自分の首を斬ろうとしたが


『駄目だ‼︎ そんなことをしても誰も喜ばない‼︎』


 と頭の中に声が響く。なので、孤卯未は心の中で、『いや、喜ぶ。父さんと母さんが。自分達を殺した奴が死ぬと』と言ったが頭の中の声──忌楼は


『あの二人は、そんなことを望んでいな』


 と言ったが


『いや、望んでいるね』


 と孤卯未はすぐに否定した。


『自分達を殺した奴が死ぬ事を喜ばない人が居ると? いや、居ないね』


 と孤卯未は理由を言い加える。

 それでも、忌楼は何かを言おうしていたので孤卯未は完全に無理矢理、自分の身体の支配権を自分に移す。

 止めるものも無くなったので孤卯未は完全に自由の身になったので、首を削り落とそうとした。

 だが、死んだと思ったはずの紅と湖が右手を動かし、希楽夢と戦っている洸夜と美右に向けて人差し指と中指を力無く持ち上げて下に下げる。

 すると、洸夜と美右の周りに何かの魔法陣が出来て青白く光りこの場から二人の姿は消えた。

 次に紅と湖は孤卯未の方に身体を引きずりながら向く。そして、さっき洸夜と美右にした事と同じ事をしようとした。

 それを見た研究長は人間の出せる速度を軽く上回って紅と湖に一瞬にして近付いて、二人を見た事も無い形と模様の刀で心臓を突き刺した。

 これで、紅と湖は完全に息を引き取った。

 その二人を刺した刀に付いた血を研究長は孤卯未の目の中に入れる。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 孤卯未は目に血を入れられた痛さの余り絶叫する。

 孤卯未と忌楼はそれで意識を失ったが別の存在が出てきた。その存在は人殺しを唯一の楽しみとしている化物だ。

 目の前が真っ赤だ。身体は自由に動く。久しぶりの感覚だ。孤卯未では無い孤卯未──化物がそう思った。

 目の前にちょうど生きのいい人間が居る。殺そう。それが、無理だったら壊そう。化物はそう思う。


『ハァァァァァァ』


 化物は誰にも聞こえない音量の獣のような声を発す。


「いい実験体になりそうだ」


 研究長は化物の声を聞こえてか聞こえないのかニヤリと笑いそう言う。


『本気ヲ出セ』


 化物が研究長にそう言うと研究長は突然


「さて、本気を出そうか」


 と言い出す。


『其ノ者ヲ帰ラセロ』


 化物が研究長にそう言うと研究長は突然


「希楽夢。今日はご苦労様帰っていいよ」


 と言い出す。その研究長の言葉に希楽夢は「ですが」と言ったが化物が『帰レ』と言うと希楽夢は「分かりました」と言い自分の家に帰って行った。

 化物は希楽夢がこの場から居なくなったのを確認してから手に持っていた鋸型の日本刀を捨てる。日本刀は綺麗に砕け散った。

 すると化物はすぐに研究長に攻撃を開始した。

 凄い速度で走ったがGの事なんか気にしない。

 瞬時に研究長に辿り着いた。化物が研究長を攻撃すると研究長に化物は黄色い液体をかけられた。手にかかり骨が完全に溶けたが化物はすぐにその傷が修復した。化物はそのまま研究長を攻撃する。研究長は一瞬で吹き飛ばせれて気絶した。


『弱イ。モット強イ者ヲ』


 化物は一人でそう言った。化物は力の半分も出していない。だが、基本人間はその程度の力で死ぬか気絶する。

 化物は今、孤卯未の祖父母のせいで孤卯未に封印されている。

 化物は孤卯未が気絶した時だけ現れる事が出来る。ついさっきまでは、水川忌楼という存在があったため化物は表に出られなかった。

 化物は孤卯未の事を大切に思っている。

 孤卯未は昔、友達が出来ないからといって良く化物と話をしていた。そんな体験が初めてだった化物にしては孤卯未は現実世界の事について教えてくれる先生でありながらも、唯一の友達である。

 だが、今は孤卯未も化物の存在を忘れている。

 化物の存在を知っているのは今は志水圭兎ただ一人。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ