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滅亡世界 前編  作者: 紙本臨夢
第二章後半
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十話

 孤卯未が次に目を覚ましたのは元のキッチンだった。


「どうだった? 本当の忘れ去られている記憶は」


 男性はそう孤卯未に話しかけた。孤卯未はその男性の顔や声で理解した。目の前にいる男性は自分の父親だということを。

 孤卯未がそう理解すると今度は珍しく朝に目を覚ました忌楼は目の前の人物を見て驚いている。


『紅さん……貴方どうして?』


 忌楼が自分の父親の知り合いだったことに孤卯未は驚いた。

 すると


「やぁ。久しぶりだね忌楼」


 と普通の人には聞こえないし見えない忌楼のことをきっちり見て紅はそう言った。

 すると、忌楼は孤卯未の元を離れて紅の元に行こうとした。だが、途中で何かを察して急いで孤卯未の元に戻った。

 孤卯未は途中で戻った忌楼の様子を見て疑問に感じて「どうしたの?」と聞いて忌楼の方に振り向くと忌楼の身体は震えている。

 そして


『そんな……あり得ない……嘘よ……絶対嘘』


 と独り言を滅多に言わない忌楼が突然恐怖に震えて独り言を言っている。

 すると


「嘘じゃないよ。本当さ」


 と紅が言った。孤卯未は何の事か分からない。

 すると、忌楼が突然孤卯未の身体を乗っ取る。だが、孤卯未には意識がある。すると、孤卯未の身体を乗っ取った忌楼が近くにあった鋭い(はさみ)を手に持ち忌楼はその鋏を投げた。紅の心臓目掛けて。忌楼は何故か投擲の命中率は百パーセントだ。手に持てたらどんな物でもだ。

 だが、紅の心臓には刺さらなかった。

 なぜなら、紅が見えない障壁に守られたからだ。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」


 忌楼は狂ったように叫びながら狂ったように物を紅の心臓に目掛けて投げ続けた。だが、紅はそれを見えない障壁でことごとく弾いていった。


「どうしたんだよ? そんな挨拶をするように躾した覚えは無いぞ」


 忌楼は納得し、孤卯未は今の言葉で何か違和感がした。

 すると


「あなたは誰だ‼︎ ……まさか‼︎」


 と忌楼は怒気を含んだ声で言った。

 すると


「クックック……ハハハハハハハ‼︎」


 と突然紅がいや、紅じゃない誰が笑い出した。


「そうだ……そのまさかだよ‼︎ “実験体”‼︎」


 その言葉を聞いて孤卯未でも忌楼の過去の話に出てきていた研究長だと分かった。


「その人から出て行け‼︎」


 忌楼はそう研究長に命令した。

 だが


「ざ〜んね〜ん。出来ませ〜ん。もう、これは偉大な私の依代になっているからな‼︎」


 と研究長は紅の身体を指して言った。


「そうか……なら、力ずくで剥ぎ取ってやる」


 忌楼の口調はもう完全に変わっていた。

 なぜなら、孤卯未の心の中も忌楼の心の中も研究長に対する殺意で埋まったからだ。だが、妖刀罪殺も無くて研究長を殺せるような武器がここには一切無い。

 すると、忌楼は


『私にあの者を殺せる武器を‼︎』


 と叫ぶと日本刀が忌楼の手元に来たので、その後に


『時間よ。止まれ‼︎』


 と言い忌楼と研究長以外の時間を止めた。

 だが、忌楼は研究長の時間も一緒に止めたかったがなぜか出来なかった。

 そんな事は構わず忌楼と孤卯未は研究長に攻撃を開始した。

 忌楼は容易く研究長の見えない障壁を断ち切って研究長の身体を捉えたと思った。

 だが、障壁を断ち切れていたが研究長の身体は捉えていなかった。

 なぜなら、研究長が懐から何か赤い液体を取り出して忌楼にその赤い液体をかけると別の場所に変わっていたからだ。

 だが、それも構わずにまた忌楼は研究長に攻撃を仕掛けた。

 研究長はさっきと同じで赤い液体を忌楼にかけようとすると頭に響いた孤卯未の指示で忌楼はその液体を避けた。

 研究長は忌楼が避けた事に驚いた。

 忌楼はまた研究長に攻撃を仕掛けた。

 だが、また研究長が液体を忌楼にかけようとしたが、孤卯未の指示で忌楼は避けた。

 その攻防が十分続いた。

 すると、突然忌楼が持っている日本刀が砕け散った。


「っ!?」


 忌楼も孤卯未も驚いて息を飲んだ。

 攻撃されると思い忌楼は急いで武器を手元に呼び寄せれる呪文を唱えてさっきと少し形状が違う日本刀が忌楼の手元に来た。

 さっきは普通の日本刀の形だったが今は(のこぎり)のような形の日本刀だ。

 忌楼はそんな事を気にせずに今度こそ研究長の首を削ぎ落とそうとした。

 だが、研究長はまた同じ液体を忌楼にかけようとした。

 また、避けられた。だが、違う方向に避けられた。

 さっきまでは後ろに避けていたが今回は左に避けた。

 研究長はその様子を見てニヤリと笑い


「実験二段階目」


 と忌楼には聞こえない大きさ声で言って黄色い液体をズボンのポケットから取り出して左に避けた忌楼に投げつけた。

 忌楼はこれをギリギリ避けたが少しだけ残っていた右膝にその黄色い液体がかかった。

 すると、一瞬にして身と皮が溶けて少し膝の骨も溶けた。

 硫酸だった。だが、身と皮と少し骨が溶けたのに痛くなかった。


「実験成功。この硫酸は溶けても痛みを感じない硫酸なんだ。安楽死に使えるよ」


 研究長はなぜか親切に説明した。

 忌楼は研究長の話を無視して削ぎ落としに行こうとした。


「っ!?」


 忌楼はあまりにも酷い痛みのため声が出なかった。


「あ、ごめんなさい。言葉が足りなかったわね。その硫酸は溶けた部分を動かさなかったら痛みは感じないけど動かそうとしたら痛みを感じるのよね」


 研究長は白々しくそう言った。

 すると、研究長は痛みのあまり倒れている忌楼の元へ近付き忌楼が持っている武器に硫酸をかけた。すると、一瞬にして鋸の形の日本刀が溶けてその下にあった地面も少し溶けた。

 すると研究長は


「さて、本日の実験の最終段階に入ろう」


 と言い赤い液体を自分で飲み始めた。

 そして、一瞬にして研究長の姿は変わった。

 紅の身体は意識は無いが元の状態に戻り、研究長の姿は若い水色の長いボサボサの髪に水色の目で白衣にミニスカートの女性になった。

 すると、研究長は


「あれ? 白衣とミニスカート以外の服が出来なかった? これは改良の余地があるね」


 と言った。忌楼の知っている研究長の面影はどこにも無い。黒色だった目と白色だった髪は完全違う色になっていて、スタイルも変わっている。


「今度は……誰の……身体を……」


 考えた結果、忌楼は必死に痛さのあまり出せない声を無理矢理出してそう言った。

 忌楼はさっきの紅の身体を乗っ取っていたのを見て研究長は人の身体を乗っ取れると予想したのでそう聞いた。

 だが、研究長の答えは違った。


「酷いなぁ。これは私の若い頃の姿よ」


 研究長がそう答えたが忌楼は確実に嘘だと思った。


「さて、私は薬の改良などをしなければなら無いから、再戦なら六年後で。私は今回まだ、十分の一も力を出して無いからね。私を殺せるくらいの力を付ける特訓をしていなさい。そして、殺せるものなら私を殺してみなさい」


 研究長はそう言って忌楼達に背を向けて歩き始めた。研究長は忌楼達から少し離れた所で、何かの薬を地面に叩きつけると玄関の扉の様な門が開いて研究長はその中に入っていって消えた。

 そして、止めていた時間が進み始めた。

 孤卯未達はそこで気を失った。

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