七話
孤卯未は老夫婦が居ないので朝食を食べてから誰にもバレない場所で朝から特訓をしている。
今の時刻は正午。ちょうどお昼時だ。
すると
「正午なので、少し休憩にしましょう」
と孤卯未の師匠──忌楼は孤卯未に言った。
「はい、わかりました。師匠」
孤卯未は力無くそう言った。
すると
「師匠はやめて下さい」
と忌楼は困りながらそう言った。孤卯未は「わかった」と言い頷いた。
そして、孤卯未は特訓している場所の端に置いていた小さな鞄を開けて中からお弁当箱を取り出した。
そのお弁当箱の中に入っていたのはサランラップに包んだ孤卯未が作ったおにぎりだ。
孤卯未はそのサランラップを取りおにぎりにかぶりついた。
『なんですかこの味は』
いつの間にか孤卯未に憑いていた忌楼がそう言った。
「これはふりかけと言って、乾燥した野菜やゴマと言う植物の種子をすり鉢ですり潰した食材のことよ」
孤卯未は忌楼にそう説明した。
すると『詳しいですね』と忌楼は驚いた。
その忌楼の言葉に孤卯未は
「勉強苦手だから、こういう雑学はあるのよ」
と苦笑いしながら言った。
忌楼は
『それじゃ駄目なんじゃ……』
と心配そうな目で孤卯未を見た。
なぜなら、勉強が出来なかったら進学できないと孤卯未に聞いたからだ。
「大丈夫! 勉強は色んな人に教えてもらってたから何とかなったから」
孤卯未は笑顔で言った。その孤卯未の笑顔を見て忌楼は一回でも圭兎さんという人に教えてもらった事があったんですねと思った。
なぜなら、孤卯未がこういう顔をする時は大抵どこかで圭兎が関わっていると学習したからだ。
昼食を食べ終わった後に少し休憩してから特訓を再開した。
今日は朝の内に筋トレ、ランニング、素振りを済ませたので今日から始める特訓を開始しようとしている。
だが、孤卯未は昨日は筋トレとランニングと素振りばっかりだったので今日もそれだと覚悟していたが違ったので驚いている。
「今日は竹刀を持って戦ってみましょう。つまり、防具無しの剣道です。孤卯未さんは自分の動きに驚くでしょう」
孤卯未は最後の言葉だけ聞いて竹刀を構えた。
そして、
「始め‼︎」
と忌楼は気合の入った声で言った。
孤卯未はすぐに自分の動きに目を見開いた。
なぜなら、竹刀すらまともに振れなかったのに今は、竹刀を片手で持て今まで感じた事のない速度で忌楼に接近した。
だが、孤卯未が振るった竹刀はいとま簡単に止められた。
そして、忌楼は自分が持っている竹刀を振るい無言で孤卯未に面を入れようとしている。
だが、孤卯未はそれを受け止めた。
「っ!?」
忌楼は孤卯未に受け止められた事に驚いた。
だが、足がちゃんと堪えられず尻餅をついてそこに面を入れられた。
「イタタタ」
孤卯未は面を直で頭に入れられて軽い脳震盪を起こし少しの間気絶していた。
すると、孤卯未は目を開けた。
そして、すぐに立とうとしたが立てなかった。
そして、頭に痛みを感じたのでそう言った。
すると、忌楼は「ごめんなさい」と言いながら孤卯未に氷を渡した。
「いや、いいよ。あたしが弱かっただけだし」
忌楼の言葉に孤卯未はそう返した。
だが、忌楼は自分の面を少しでも受け止めた事を言おうとしたが押し止まった。
なぜなら、これからの特訓を手抜きでやりそうだと思ったので言わなかった。
「それじゃ、少し休憩をして特訓を再開しましょう」
孤卯未は忌楼のその指示にもう少しだけやろうと言おうとしたが、今の自分の状態を見て言うのを諦めた。
すると、孤卯未は頭に氷を当てながら寝転んだ。
そして、空を見上げた。
だが、今いる場所はどこかの森で空を見上げても葉っぱしか見えないと思った。
だが、ちゃんと綺麗な青空が見えた。
なぜなら、その森の木の葉っぱは少なかったからだ。
孤卯未はそれを見て少し寂しく思った。
なぜなら、その葉っぱは自分達、人が減らしていると知っているからだ。
すると、綺麗な青空に何か異物が混ざっているのに気付いた。
どうせ、鳥だろうと思った孤卯未だが、立ち上がれないので必然的にずっと見ることになった。
そして、異物が孤卯未達の上を通った。
孤卯未は自分の目を疑った。
なぜなら、純白の羽を生やして空を飛んでいる人を見たからだ。
孤卯未はもしかしたら天使かなぁと思いながらも嘘だと思ったがゆっくりと立ち上がった。
「ちょっと、この森の外を散歩してくる。大丈夫すぐに帰ってくるから」
孤卯未はそう言ってその場を離れた。天使かもしれない者を追いかけるために。
少し、歩いたら森を抜けた。
だが、孤卯未の後ろには忌楼が付いてきていた。
孤卯未はまぁ仕方ないかと思いながら歩いた。
天使かもしれない者が進んで行った方向へ進んで行った。
すると、自分達の住んでいる家──自宅が見えてきた。
孤卯未はやっぱり幻覚かと思い森に戻ろうとした。
だが、
「っ!?」
自宅の方を向いて息を飲んだ。いや、正確には自宅の前を見て息を飲んだ。
なぜなら、そこに何か大きなものがあったからだ。
孤卯未は胸騒ぎがし自宅の方に走って行った。
すると、自宅の前にあったいや、居たのは両腕両足が切断されているが血が止まっている男女二人の人が居た。
孤卯未は息があるのを確かめてから、自分の銀色のスマホでこんな事をした犯人はもう逃げていると思い百十九番だけに連絡した。
救急車が来るまでに何かする事が無いか考えた孤卯未だが、何も無かったのでただ単に黙って救急車の到着を待った。その間に孤卯未は会ったこと無いはずなのに何故か二人に会った気がした。
救急車は思いの外、早く到着した。
救急隊員は二人の様子を見て驚いた。
すると救急隊員が
「すみませんが、一緒に乗ってくれませんか?」
と孤卯未に聞いたので孤卯未は無言で頷き、救急車に乗った。
救急車の中では何故か孤卯未も治療された。
単純に怪我をたくさんしていたからだ。
病院に着いたら当たり前だが、両腕両足を切断されていた二人はすぐに手術された。
そして、個室に移された。
なぜなら、今日新しく入った薬を使ったので何か薬を使った為の副作用があるかもしれ無いからだ。
孤卯未はなんとなく、二人にずっと付き添っていた。
そして、付き添い始めて三日経ったある日、両腕両足を切断された二人は同時に目を覚ました。
それを見た孤卯未はナースコールをしようとしたが二人に止められた。
そして、突然孤卯未は女性の方に
「姉さん」
と言われた。孤卯未は記憶障害でも起こしているのかなと思った。
だが
「僕達の事を話すよ」
と男性が言い出し孤卯未は男性達に話を聞かされた。




