二話
孤卯未は今筋トレをしている。それには理由がある。
孤卯未が忌楼の力になってあげようと思った翌日に孤卯未は病院を退院した。孤卯未の退院を喜んでくれてた人は老夫婦だけだった。
孤卯未は老夫婦の家に一緒に帰った。
帰ってから孤卯未は、忌楼の事を除いた病院での出来事を老夫婦に話した。老夫婦は孤卯未に入院中の時に聞かされた話しでも無い何一つ文句を言わず笑顔で聞いていた。
孤卯未は入院してしまったお詫びに老夫婦に手料理を作ってあげると言った。初めは遠慮していたが、頑なにその遠慮を拒み続けたので老夫婦は折れた。
そして、手料理を老夫婦に食べさせお風呂に入った孤卯未はすぐに自分の寝室に行った。
老夫婦が寝た事を確認した孤卯未は家を出て、家の倉庫にあると老爺が言っていた、日本刀を勝手に持ち出し近くの河川敷に来た。
そして、
「忌楼。少し姿を現して」
と守護霊の忌楼を呼び出した。忌楼は何事かと不思議に思いながらも、静かに姿を現した。
忌楼が出てきたのを確認した孤卯未は突然、
「これからの人生何があるか分からないから、剣術教えて」
と言い出した。忌楼は考え込んでいてすぐに反応出来なかった。そして、「確かにそうですね」と小声で呟き首を縦に振った。
孤卯未は
「それじゃあ」
と表情を明るくして言った。
その言葉に忌楼は
「はい。微力ながら教えさせて頂きます」
と頷きながら言った。忌楼は孤卯未に
「ひとまず、刀をどれくらい扱えるか見せて下さい。扱った事のない人でも稀にちゃんと扱える人が居るので、初瀬川さんがその稀の存在なのか確かめるためです」
と言った。孤卯未はあたしそんな存在じゃないと思いながらひとまずやってみる事にした。
だが、何をすれば良いか困って孤卯未が忌楼を見ると
「普通に刀を縦に振ってください」
孤卯未の心を読んだ忌楼そう言った。孤卯未は縦に振ると心で念じながら言われた通りにやって見た。振り終わったので孤卯未は忌楼をドヤ顔しながら見た。
すると、忌楼は無言で眉間を押さえていた。
孤卯未は不安になった。
「少し、力瘤見せて下さい」
忌楼に突然そう言われた孤卯未は首を傾げながら力を込めて腕を曲げた。
すると、忌楼は絶句していた。
しばらくしてから忌楼は
「今は、刀を振るより筋力を鍛えるのが先ですね」
と孤卯未に言った。
そして今に至る。
筋トレの内容は、腹筋、背筋、腕立て伏せ、スクワットをそれぞれ十回ずつで一セットを六セット。そして、今は六セット目だ。
「はぁ…はぁ…はぁ……終わった…よ」
孤卯未は息を切らしながら言うと
「お疲れ様です。十分休憩してから、河川敷を走るのを十周です」
と忌楼は笑顔で言う。孤卯未の顔はすごく引きつらせる。
十分後。忌楼は河川敷にバテて転がっている孤卯未を立たせる。
「さぁ、十周走りましょう。一緒に走りますから」
忌楼はそう笑顔で言う。孤卯未はこの人絶対サディズムだと思いながらも頷いて走り始める。
筋トレの時も忌楼は孤卯未と一緒にしてくれた。しかも、孤卯未よりセット数が多く。だが、全然バテて無い。孤卯未は自分も鍛えたらこれぐらいになれるのかなと思った。
孤卯未はようやく十周走り終わった。忌楼はまだ、戻って来てない。
初めは忌楼も孤卯未と一緒の速さで走ってくれた。だが、孤卯未が五周を走り終わったら
「それでは、私は少し速さを上げますね」
と言って走り始めた。
すると、忌楼が戻って来た。だが、全然疲れていない。確実に孤卯未より十周以上多く走っているのに。
すると、忌楼は
「さぁ、家に戻りましょうか』
と言い出して孤卯未の背後に憑いた。
孤卯未は、守護霊なのに離れて大丈夫なのかと疑問に思った。
すると、忌楼は孤卯未の心を読んで
『はい、大丈夫ですよ。束縛が緩い呪文なので』
と言った。孤卯未はその言葉を聞いて妙に納得した。
今は午後九時に特訓を始めて二時間経った午後十一時だ。孤卯未の家の周辺ならすぐに補導させるが老夫婦の家の周辺ではなぜか補導されないのでまだ時間があると思い少し、コンビニ寄ろう思い、寄った。
そして、コンビニ内を歩いていて、ふとコンビニに付いている時計を見ると時刻は午前零時に回っていた。
孤卯未は慌てて老夫婦の家に帰ろうとすると雨が降ってきたので、傘を買って走り出した。
雨の降っていた時間は短かった。なので、孤卯未は傘を閉じた。
すると、すぐに男性の不良に絡まれた。
「ねぇねぇ、君こんな時間に何してるの? もし、暇ならお兄さん達と遊ばない?」
不良達はあからさまに、何かをするよと言う雰囲気を醸しながら孤卯未に絡んだ。
「あの……急いでいるんで」
孤卯未は遠慮気味にそう言い走り去ろうとした。すると、不良達の中の一人の男性が
「そんなこと言わずにさ。お兄さん達と楽しい事しようよ」
と言い孤卯未の手を掴んだ。
「離してください‼︎」
孤卯未はそう言いながら、振りほどこうと腕を振るったが力を入れられ過ぎて振りほどけなかった。
そして、老夫婦の家に近付いていたが、不良に腕を引っ張られてどんどんと遠ざかっている。
そして、最終的には人気が無い所に連れてかれた。
途中、警察に見つかったが孤卯未の腕を引っ張っている不良の顔を見た瞬間に見て見ぬ振りをした。
すると、突然腕を離された。腕を振りほどくために力を入れていたから背後の壁にぶつかった。
「さぁ、良いことしようね」
孤卯未の腕を引っ張っていた不良の男性がそう言いながら自分の胸元からナイフを取り出した。
すると、孤卯未の背後から
『仕方ありませんね』
と言う忌楼の声が聞こえてきた。不良達には聞こえて無いようだが。
忌楼の声を聞いた途端に孤卯未の意識は失った。
ナイフを持った不良の男性はナイフを振るった。
だが、そのナイフが孤卯未に触れる前に孤卯未の身体に乗り移った忌楼が不良の男性の腕を捻りナイフを落とさせて、その落ちたナイフを拾い上げた。
「さて、これでどうしましょうか?」
忌楼はワザと可愛らしく首を傾げて言った。
「お兄さんに返しなさい」
不良の男性はそう笑顔で言った。
「分かりました」
忌楼はそう言いながら頷いた。そして、不良の男性に近付いて行った。不良の男性の手に届く範囲になった。すると、不良の男性が手を差し出してきた。忌楼はその手を一瞬だけ冷たい目で見ながら「はい、どうぞ」と言い笑顔で差し出された手を拾ったナイフで刺した。その行動に怯んだ不良の男性を忌楼はまず、最初に股間を蹴って、次に鳩尾を殴り、次に後頭部を殴り、最後に首裏にチョップをした。それで、相手は気絶する。他の不良仲間にも同一の事をした。
忌楼はそれをした後に汚してしまったと思いながら老夫婦の家までの帰路に着いた。
そして、家に着くとすぐ様、シャワーを浴びて寝室に行って寝た。




