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滅亡世界 前編  作者: 紙本臨夢
第二章後半
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一話

 忌楼は孤卯未に自分が知っている事を全て話した。なので、自分とは別の人の心情や、自分が意識無い時の事は知らない。


「そんな事があったんだ」


 孤卯未は感慨深く感じそう言った。

「何か質問ありますか?」と忌楼は孤卯未に優しく微笑みながら聴いた。

 孤卯未は質問が無いと意思表示する為に首を横に振った。

 だが、忌楼は何となく何かあるはずだと思いで、「本当にですか?」と聞き返した。

 孤卯未は「うん。本当に」と言いながら首を縦に振った。

 それでも、忌楼は何か引っかかる。

 なので、忌楼は考え込んだ。

 すると、ある事が頭に浮かんだ。それは、名字についてだ。

 忌楼はすぐに行動に移した。


「突然で申し訳無いんですけど、貴女の名字の漢字って何でしたっけ? つい、ど忘れしちゃいまして」


 忌楼は嘘も混じえながら孤卯未に聞いた。


「酷いなぁ。忘れるなんて。ちょっと待ってて。今、そこにある紙に書くから」


 孤卯未は苦笑しながら、病室のベッドの横にある引き出しの上に置いてある紙に近付いて行って書いた。

 孤卯未は書き終わったらしく忌楼に名字を書いた紙を渡した。

 忌楼はそこに書かれている字を見て確信した。

 孤卯未が初瀬川夫妻の子供だということを。

 だが、その確信は一瞬のうちにして消えた。

 なぜなら、孤卯未は産まれてすぐ、親が死んだと言っていたことを思い出したからだ。

 忌楼は煮え切らない気持ちのまま、


「思い出しました。ありがとうございます」


 と言い微笑んだ。

 すると、孤卯未は突然「あ、ごめん」と言い出した。

 忌楼は何のことか分からなくて首を傾げていると孤卯未は忌楼が理解していない事に気付き、忌楼にギリギリ聞こえる声である事を言った。


「いや、よく考えたら質問があったから。だから、謝ったの」


「いえいえ! 質問があるのでしたら、どうぞお構いなく気楽に質問してください」


 忌楼は頭を下げようとした孤卯未をすぐに止めるためそう言った。

 だが、忌楼は孤卯未が大体どのような質問をするか予想をしている。


「それだったら、聞くけど。貴女の身体と妖刀罪殺は今、どういう状況なの?」


 孤卯未はそう質問した。忌楼は孤卯未の質問が予想外だったのでキョトンとしている。


「あれ? もしかして、聞かれたくなかった事?」


 忌楼がしばらくしても反応が無かったので孤卯未は思った事を口にした。すると、忌楼は意識を取り戻したような反応をした。


「あぁ、そうですね。それはですね」


 忌楼はそう言って語り始めた。


「まず、妖刀罪殺についてですが、妖刀罪殺は今、ある場所に封印しています。そして、私の身体は、この場所に魂がありまして、妖刀罪殺の所に身体があります」


 忌楼は話すと長くなるので簡潔に説明した。

 孤卯未はその説明で納得した。だがそこで、もう一つの疑問が浮かんできた。

 そして、忌楼に聞いてみた。


「身体を戻したいとは思わないの?」


 すると、忌楼は


「取り戻したいとは思いますけど、取り戻したら妖刀罪殺の封印が解かれてまた、私が経験した事と同じもしくは、さらに酷い経験をする人が出るかもしれませんし。そのためは今はいいです。いつかは、取り戻したいですけど」


 と言った。孤卯未はその言葉を聞いて自分と、五歳程しか離れていない人なのに立派だなと思った。

 そう思った孤卯未は忌楼には及ばないけど、自分もこんなに立派になろうと思い、そのため、出来る限り忌楼に協力しようと固く決意した。

 すると、忌楼はふとある事を思い出した。


「あの……貴女の伝えたい事って何ですか?」


 孤卯未は何を言っているのだろうと思い考えて、ある一つの事を思い出した。


「あぁ、その事ね。実は私明日この病院を退院するの」


 孤卯未は忌楼の過去を聞いてから言う話しでも無いと思い完全に記憶から忘れていた。

 すると、忌楼


「本当ですか!? おめでとうございます!」


 と孤卯未よりテンション高く言った。孤卯未は忌楼のその様子を見て、まるで担当医の先生みたいだと思った。

 そして、孤卯未は「しまった!?」と思った。

 なぜなら、さっき忌楼に協力しようと固く決意したがこれじゃ、忌楼に協力出来ないと思ったからだ。

 すると、忌楼は


「それでしたら、私が貴女の守護霊になりましょう」


 と突然孤卯未の心を読んだかの様に言い出す。

 孤卯未は読まれた驚きより、どうして読めたのだろうと言う疑問の方が大きい。

 そして、忌楼は「もしかしたら」と左の人差し指を自分の首を傾げた顎に当て小さな声で言った。女性の孤卯未だがその忌楼の仕草にドキッとした。

 実は忌楼は肌の色が雪の様に白く、髪と目は夜の闇のより暗い。髪は短く切られているが、丁寧に手入れされている。

 孤卯未は忌楼を見て、これは圭兎に合わせたら中々の手強い敵だと考えた。

 そんな、孤卯未の心情や考えを知ってか知らずか


「もしかしたら、妖刀罪殺に短時間だが乗っ取られていたからかな?」


 と今までで一番可愛らしい笑みを浮かべる。

 孤卯未はその忌楼の笑みを見て絶対に圭兎に合わせちゃダメだ、絶対にと思った。

 だが、孤卯未は突然ふと冷静なると、何故自分は圭兎の事をこんなに意識しているのだろうと疑問に思った。

 すると、突然忌楼は孤卯未の心を読んで


「圭兎って誰ですか?」


 と言ってきた。


「あれ? 話してなかったっけ? 私の一番親しかった少年の事」


 孤卯未は忌楼にそう質問で返した。

 すると、忌楼は


「すみません。多分話してくれていたと思うのですが、その人の事だけ記憶に無くて」


 と申し訳なさそうに言った。孤卯未は忌楼にそう言われたのでもう一度圭兎の事を話そうと思ったが、長くなるので短くまとめる事にした。


「圭兎はね、志水圭兎って名前なの。中学校が同じだった。実は私、人付き合いが苦手だったの。そのため、遠足の班決め時に私は一人だったの。すると、先生は私をどこかの班に入れてやれって言ったの。だけど、誰も私の事知らないから誰も入れてくれなかった。その時に圭兎は自分が入っていた班の人に悪いと言ってその班を抜けて先生の所に行き、私と二人だけの班で良いですかって聞いて先生がそれを承諾を得て二人だけ班になったの。そして、遠足は無事に終わったの。すると、翌日から私の元に色々な人が話しかけて来たの。圭兎はそれを遠くから見て頑張れって顔をしてくれたの。私はそれで勇気が付き色々な人と関われる様になったの。圭兎はそれがこの学校での最後のやる事みたいにその翌日からテストの時以外学校に来なくなったの。私は後悔したよ。メアド交換しておけば良かったって」


 孤卯未は圭兎の事を語った。


「ハハハ。全然まとめられていませんね」


 忌楼はそう苦笑しながら言った。

 すると、突然切り替えて


「そろそろ朝ですから、守護霊になる為の呪文を唱えないとですね。貴女のやる事は簡単です。じっとしていて下さい。私が呪文を唱えないと意味がないですから」


 と言った。孤卯未は頷いた。


「我、人成らざる者。故に我は人を、人、人成らざる者から守護可能。我は霊魂なり。かの者を護る名は守護霊」


 忌楼がそう言うと孤卯未の肩に重みが掛かった。


「これで終わりました」


 忌楼がそう言った。


「……」


 孤卯未は反応がない。


「あの……身体何ともないですか?」


 忌楼は恐る恐る聞いた。


「なさ過ぎて困る」


 孤卯未は明るく言った。


「今日から、しばらくの間は一心同体みたいなものよ。改めてこれからよろしく」


 孤卯未は笑顔で言った。


「はい。こちらこそよろしくお願いします」


 忌楼も笑顔で言った。

 二人は微笑み合った。

 これから起こる事も知らずに。

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