一話
少年、志水圭兎はいつも通りの時間に起きた。
圭兎は学校に行く支度をして家を出た。
そして、学校の前に着いた。
(ん? 何かおかしい)
いつもなら、この時間帯は生徒がたくさんいるはずなのに誰もいなかったので圭兎は不思議に思った。。
圭兎は街の様子を調べるために、一度この街で一番大きな商店街へ行った。
すると、一人だけだが人がいた。
「あの、すみません」
圭兎はその人に声をかけた。すると、その人が振り返った。そして、圭兎は見てしまった。
その人は目に生気がなく、首の頸動脈から致死量の血が流れていた。
その人を見て圭兎は理解した。この街にはゾンビしかいないのだと。
圭兎は街で一番日が当たりやすい場所まで走ってきた。
「はぁ...はぁ...はぁ...ここまで来たら...ゾンビは来ないだろう」
圭兎は暇潰しでしていたゲームの知識を息を切らしながら頭の中で整理した。
圭兎がそうしている間に、前から人の集団が来ていた。圭兎はそれに気付き近くの建物の影に隠れた。
「見た感じあれは生きた人間かな」
圭兎はしばらくの間、集団を観察しそう判断して建物の影から姿を出した。なぜなら、目にはちゃんと生気があり、首の頸動脈からも血が流れていなかったからだ。
そして、その集団の前に立った。
圭兎はその集団を見て驚愕した。なぜなら、圭兎と同じ学園の丘道学園の制服だったからだ。
『あっ!!』
圭兎とその集団にいたエリカ·タンダクと目が合い二人同時に声を上げた。
驚きすぎて少しの間、無言でいた。
「どうして、お前がここに?」
圭兎はなんとか声を出しそう言った。
「それは、こっちのセリフよ」
エリカも圭兎と同じ疑問を感じた。
「朝起きて、学園に行って様子がおかしく感じて、この街の商店街へ行ってゾンビがいたから逃げてきたからだ」
圭兎は朝から今までにあったことをエリカ達に話した。
「ゾンビ?」
エリカはそう言ってきょとんとしていた。
「え? ゾンビを知らないのかよ!? 死んだ人間が動いているあれだぞ!」
圭兎はエリカがゾンビを知らなかったことに驚きながら言った。
「あ、そうなの。その...ゾンビとかは知らないけど、私達のここにいる理由と大体一緒だね」
エリカは戸惑いながらもそう言った。
「ちょ、ちょっと待って。その人エリカの知り合い?」
集団の中にいた金色の髪で青色の目の少年がいきなりそう言った。そこで圭兎はエリカと一緒いる人がいた事を思い出した。
「まぁ、一応知り合いですよ。えっ...と」
圭兎は金髪の学園の制服の色を見て先輩と判断し敬語でエリカとの関係を言ったのはいいけど名前を知らなかった。
「君は制服の色的に高校一年生らしいね。それと僕の名前は...いや、ここは皆で自己紹介しようか」
少年がそういうと少年と一緒に来た集団の皆が頷いた。
「君はどう?」
少年は圭兎に聞いてきた。
「わかりました。ですが、そちらからお願いします」
圭兎は断る理由が無かったが先に少年達に自己紹介をするよう頼んだ。
「わかった。じゃあ、僕から始めるね」
少年はそう言って自己紹介を始めた。
「僕の名前は」
だが、できなかった。なぜなら、空がいきなり光ったからだ。
「何だ!? あれは!?」
圭兎は空が光ったので空を見たら二つの人影があったので声を上げた。そして、金色の髪で水色の目の少女と赤色の髪で赤色の目の少女が圭兎達の前に降り立った。
「私達は、あなた達の世界では神と呼ばれている存在です」
赤髪の少女はいきなりそう言った。
「神...だと...」
圭兎は目の前の少女が信じられないことをいきなり言ってきので聞き返した。
「えぇ、神です。そして、この世界は、人類が滅亡した世界『滅亡世界』と私達は呼んでいます」
赤髪の少女はそう言った。
神の言葉に少しだけ間が空いた。
「め、滅亡世界だって!?」
そして、金髪の少年は周りを見てか驚いたことを神達に伝えた。
「滅亡世界か...。そのままの名前だな」
圭兎は金髪の少年が作り出した波に乗り思ったことをそのまま口に出した。
「驚くのが普通だと思いますが、貴方は驚かないんですね」
赤髪の神が圭兎の言葉を聞いてそう言った。
「あぁ。なんとなく、此処は俺達がいた世界と別の世界...いや、パラレルワールドなのかなと思ってたからさ」
圭兎がそう言うと、圭兎の周りの人達とずっと無言の金髪の神が驚いた顔をした。
「スゴいですね。そこまで推測をしているなんて。そして、その推測が強ち間違いではないなんて」
赤髪の神はそう言った。だが、その顔は全く驚いたような顔をしていなかった。
「まぁ、この話は置いといて、本来の目的の自己紹介をしようじゃないですか」
妙に恥ずかしくなり圭兎が話を変えると、金髪の少年が頷いた。
「そうだね。あ、そういえば僕からだったね。じゃあ、僕から時計回りの順番で自己紹介していこうか。神様もだよ」
金髪の少年が微笑んだ。表情を戻し間をとってから言葉を発した。
「僕の名前は、トシカリ·ミソンジ。丘道学園の生徒会長をしている高校三年生だよ」
金色の髪で青色の目の少年がそう言って笑顔を見せた。
「私の名前は、ミレイ·レイシン。丘道学園の生徒会副会長を勤めているトシカリ君と同じ高校三年生よ。以後よろしくね」
さっきからずっと笑顔の桃色の髪で緑色の目の少女がそう言った。
「あたしの名前は、ミリカ·リンジカ! 丘道学園の生徒会執行委員をしている中学二年生だよ!」
銀色の髪で藤色の少女が元気な声で言った。
「私は、クラル·エルザと申します。丘道学園では生徒会書記をやらせて頂いている小学六年生です」
緑色の髪で橙色の目の少女が礼儀正しく言った。
「何、礼儀正しくしているのよ」
ミリカにクラルがおちょくられていた。
「だって、初対面の人だよ。礼儀正しくするの当たり前だよ」
クラルは年相応の口調でそう言った。
「別に気にしなくて良いのだが」
圭兎がそう言うとクラルは「ありがとうございます」と何故かお礼を言った。
「自己紹介の続きしようか」
トシカリが苦笑をしながらそう言った。そのトシカリの言葉に、話していた皆は頷いた。
「私の名前は、蘭駈鏡子です。丘道学園では生徒会副会長を勤めさせてもらっています。中学三年生です」
黒色の髪で黒色の目の少女が礼儀正しく言った。だが、彼女の場合は周りの貴族達は何も言わなかった。
「知っているだろうけど、一応ね。私の名前は、エリカ·タンダク。丘道学園で風紀委員長をさせてもらっているわ」
エリカはそっぽを向きながら言った。
「私、名前が無いのですが...」
「じゃあ、美佐な」
赤髪の神が困ったように言ったが、圭兎はすぐさまそう言った。
「かしこまりました。それでは、これから美佐と名乗らせてもらいます」
美佐は圭兎のくれた名前を気に入ったのか、無表情だった彼女が少しだけ微笑みながらそう言った。
「あれ? どうしてこの名前になったか聞かないんだ」
圭兎は、不思議に思い、首をかしげながら美佐に聞いた。
「はぁ。どうせ、何となくなんでしょう?」
美佐に聞いたが何故か、エリカが溜め息をつきながら呆れたように言った。圭兎は
(どうして、お前が反応するんだよ!)
とエリカに小さな声で言った。だが、無視された。
「あ、そういえば次は俺か。俺の名前は、志水圭兎。平民の帰宅部だ」
圭兎は次は自分の自己紹介の番だと思い出して自己紹介をした。
「それでは、一言ずつ何か言葉を頂いていきましょうか」
後一人自己紹介していない者がいたが、圭兎の自己紹介が終わるとすぐに美佐がそう言ったので、皆は何か事情があるのだろうなと察して何も聞かなかった。
美佐に何か一言ずつ言っていこうといきなり言われて考える時間をもうけてから数分が過ぎた。すると、いきなりトシカリが声を上げた。
「皆、何か思い付いた?」
トシカリがそう言って、圭兎以外の皆が頷いた。
「志水がまだ、思い付いていない様だからさっきと同じ順番で僕から時計回りで言っていこう」
トシカリがそう言った。そしてまた、圭兎以外の皆が頷いた。
「生徒会長だから僕がリーダーシップをとるね。そういうことでこれからよろしく」
トシカリがさっきの自己紹介の時と同じ笑顔を見せた。
「実は私、短剣を使えるから料理担当は任せて!」
ミレイがそう笑顔で言った。
圭兎は
(短剣使えるから料理を任せろって、なんとも適当な)
と思った。
「あたし、実は昔に狩猟の仕方をおじいちゃんに教えてもらってたから銃を扱えるんだ!」
ミリカがそう言いながら指で銃の形を作りながら言った。
「私、視力良いから役に立つかも」
クラルは自分の目を指で指しながら言った。
「あの、私は日本武道なら出来ます」
鏡子は何故か、恥ずかしそうに言った。
「私、剣なら操れるわよ」
エリカは、微笑みながら言った
「私とそこの子は魔力を少々使えます」
美佐が自分と金髪の少女を指してそう言った。そして、その場にいる圭兎以外の人達は美佐に集まっていった。そして、トシカリは
「魔力ってなに?」
と言っていた。
(本音又は隠している事を言えば良いのか)
圭兎は今までの皆の自己紹介を見てそう思い言うことが決まった。
「は! これだから貴族どもは!」
そして、圭兎はいきなり鼻で笑った。
『えっ?』
その場にいる貴族達どころか二体の神さえも驚き、圭兎に振り向いた。
「何が、えっ? だよ。頭おかしいじゃねぇか? あ、そうそう。一言だけ言ってやるよ。俺は、貴族が大っ嫌いだ」
圭兎はニヤケながらそう言った。その様子を見てエリカが
「どうしちゃたの? どうしてそんなこと言うのよ。何か私達あなたの気に触るようなこと言っちゃった?」
とスゴく心配そうに圭兎に言った。
「気に触るようなこと言っちゃった? だって? 俺には貴族という存在自体が気に入らないんだよ!」
圭兎は声の音量を上げてそう言った。
「何を言っているの? ついさっきまで楽しそうにしてたじゃない?」
エリカは、圭兎のさっきの言葉を聞いて、少し涙を浮かべながら言った。
「は? 楽しそうに見えたのか? 目おかしいんじゃねぇか? ずっと、嫌そうな顔をしていただろ?」
圭兎が目を細めながら言った。
「そんなの嘘よ! 嫌そうな顔どころか楽しそうな顔をしてたじゃない!」
ついにエリカは涙を流しながら言った。
「へぇ、そうなんだぁ。俺の演技力も捨てたもんじゃないな」
圭兎はまたニヤケながらそう言った。そして、そのままどこかに歩き去ろうとしていた。
「ちょっと、ま...」
「あぁ、言い忘れていた。もう二度と俺に関わるな」
エリカは歩き去ろうとする圭兎を止めようとしたが、圭兎の拒絶の言葉で中断させられた。
「圭兎...どうして?」
エリカ泣きながらそう言った。