一・五話
忌楼の気を失わせるとすぐに、老婆──この研究の長に青年は睨み付けていた。
「どうして処理し無いんだ‼︎ 早くやれ‼︎」
研究長に青年はそう言われた。
様子がおかしくなった少女に銃弾を撃ったのは少し前のことだ。
「ですが、この子は貴重な資料になるのでは!」
「なら無い。それは危険な研究材料だ。処理しろ。今すぐに。徹底的に処理しろ。私に危害を加えようとした返しだ。さぁ、やれ。さぁ、さぁ!! 早く処理しろ‼︎ 何発も鉛玉をぶち込んで処理しろ‼︎」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」
さすがの青年も、何も罪の無い少女を殺すのに抵抗があって殺さない為の研究長が納得する理由を考えた。そして、考え抜いた意見を研究長に言ったがすぐに拒否され、青年がやろうとした事よりもさらに残酷な命令をされ、従うしか無い状況に追い込まれて小型の連射型の銃を渡せれ青年は自暴自棄になりながら鉛玉を何も罪の無い少女に数え切れ無いほどの数を撃ち込んだ。
少女が笑ったように見えた。
連射型の銃が弾切れになり、ようやく研究長は納得してくれた。
「ゆっくりとおやすみ。また、明日も頼むよ」
研究長は優しく微笑みながらそう言った。
自分の部屋に戻ると、自分の無力さと研究長に対する怒りを感じ青年は壁を力強く殴った。
その部屋は、染み一つ無い最近になって与えてくれた、綺麗な部屋だった。
だが今は、そんな部屋に小さな穴が開いている。
「くっ……そぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
青年はさっき殴って穴が開いた壁をもう一度力強く殴り、拳が割れて血が流れているのを誤魔化すかの様に叫んだ。
この部屋は、プライバシー守るために完全防音だ。だから、青年の叫び声も部屋の外には聞こえない。
すると、部屋の入り口の扉が開いた。
だが、青年は誰か入ってきた事に気付いたがそんなのを気にせずに叫び続けた。
すると、青年の背中に何者かが抱きついた。
「ごめんなさい……私のせいで……」
その声は震えていた。それを聞いて青年は背中に抱きついて来たのは誰か理解した。
「いや……お前のせいじゃない……」
青年は誰か──妻が抱きついて来たおかげで人の温もりを感じ泣きそうになった。
だが、なんとか堪えた。
「くっ……でも……あの時……私が……人質に……なりさえ……しなければ……」
青年の妻が泣くのを我慢しきれず泣いていた。
「そんな事考えるな!」
青年は声を出した。
「悪いのは“僕”何だよ! “僕”に力が無かったから!」
青年は”僕“という部分を強調して言った。
「……でもっ‼︎」
「でもじゃない‼︎」
青年は妻が何か言葉を続けようとしたが止めた。
一晩中青年は悔しがっていた。妻は一晩中泣いていた。
忌楼は真っ白な世界にいる。
忌楼はすぐに、これは夢だと理解した。
すると突然、忌楼の目の前で人影が現れた。
忌楼はその人影をどこかで見た事がある。
『ごめんなさい。貴女にこの呪われた武器の罪を押し付けて』
人影は取ったとそう言った。
「っ!?」
忌楼は二つの意味で息を飲んだ。
一つはその呪われた武器と言われ取り出されたのが忌楼が使っていて今は、何かの非人道的な実験に使われている刀だったからだ。
そして、もう一つは──
「母……様?」
忌楼が初陣する前日に亡くなった母親だったからだ。
すると、ただの人間の形をしていただけの黒い人影に色が付いて、忌楼と同じ夜の闇より深い黒の髪と目の色をした忌楼より少しだけ高い身長の女性に変わった。
『ひとまずは貴女にこの呪われし武器──妖刀罪殺について教えてあげる』
忌楼の母親はそう言い、鞘から刀を抜いた。
「妖刀……罪殺」
忌楼は母親の言葉を聞いてそう続けた。
「罪殺はいつもは普通はただの刀と変わらない。だけど、ある条件に達しれば妖刀と化す。ある条件は何だと思う?」
忌楼の母親は忌楼に質問した。
「持ち主が死ぬ?」
忌楼は自分の意見を疑問形で返した。
「ご名答」
忌楼の母親はそう言いながら首を縦に振った。
「妖刀罪殺は持ち主が死んだら妖刀になってしまう。私が死ぬ直前に貴女に託したから何も起きないと思ったの。だけど、罪殺は貴女が戦闘に出る頃にはもう、妖刀に成りかけていたの。そして、貴女が死んだ。すると、罪殺は貴女の血を吸ったでしょう?」
母親がそう聞くと忌楼は首を頷いた。
「それが、妖刀になった証。その後は……誰かが持ち帰って今の時代まで保管してたの」
母親は一部言葉が詰まったが忌楼はそこを気にせず最後の部分だけ気になった。
「今の時代?」
忌楼は首を傾げた。
『そう今の時代。今は、西暦で言うと2110年。私達が暮らした年は確か西暦で言うと1510年だから、600年前だね。私達が暮らしていた時代は戦国時代と言われているね』
忌楼は目眩がした。
それだから、博物館とか聞いたこと無いなと思ったよと安堵した。
『忌楼。真面目な話に戻るとけど良い?』
母親がそう忌楼に聞いた。忌楼は頷いた。
『今の、罪殺は進化しているの。あの非人道的な実験を行っている人達のおかげでね。その罪殺の進化は知っている範囲で教えるね』
忌楼は非人道的な実験を行っている人達のおかげでという場所で怒りをかなり感じたが、すぐに冷静になって母親の話を聞いている。
『今の罪殺には幾つかの形態があるらしいの。私が知っているのは三つだけ。まず、一つ目は妖刀罪殺飛行形態。これは、名前の通り羽根が生えて空を飛べるようになるの。次に二つ目は、妖刀罪殺剣士形態。これは、時空を罪殺で斬り裂ける様になるの。そして最後は、妖刀罪殺防御形態。これは、軽重量の防具を身に付けるの』
忌楼は母親の話を聞いてある疑問が浮かんだ。
「他にも見知らぬ形態があるという事?」
忌楼は疑問を率直に聞いた。
『うん。そういう事。基本形態は一つずつしか使えないの。だから例えば、一つずつしか使えないはずの形態なのに同時に使えるとかね。まぁ、これが一番厄介なのだけど』
母親にそう答えられ忌楼は納得した。
『あ、もう時間だ』
母親は突然そう言った。
「え?」
忌楼はしばらく、思考停止していた。
「また、会えるの?」
忌楼は一番気になっている事を聞いた。
『うん。きっと会えるよ。それじゃ、またいつか』
母親はそう言うと消えていった。