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滅亡世界 前編  作者: 紙本臨夢
第二章前半
12/58

一話

 黒髪短髪の少女──初瀬川孤卯未(はせがわこうみ)はいつも通りの日常を前日まで送っていた。

 朝、遅刻ギリギリに起きて自転車通学ではないのに自転車で通学して、遅刻ギリギリに学校に着いた。

 学校は日本で二番目に敷地面積が広い学園だ。

 国立丘道(くどう)学園分校。

 それが、学園の名前。

 国立丘道学園は貴族ばかりの学園に対して国立丘道学園分校は平民ばかり集めている学園だ。

 孤卯未は昔、人と関わるのが苦手だった。

 だが、孤卯未の最初の友達の少年──志水圭兎(しみずけいと)のおかげで色々な人と関わることが出来ている。

 今日は、テストがちょうど終わる日で孤卯未はいつもより早めに家へと帰った。


「ただいま」


 孤卯未は誰もいない静まり返った家に向かってそう言った。

 孤卯未の親は孤卯未が産まれてすぐに死んだので何一つ記憶がない。

 孤卯未はいつも通り、流れ作業のようにシャワーを浴びて家でゴロゴロしていた。

 夜になると、いつもだったら何もないが今日は無性に眠くなり、眠りに入った。

 目が覚めるともう、翌朝になっていた。

 孤卯未は、自分ベットにある目覚まし時計を見た。

 時刻は午前七時を指していた。

 孤卯未は余裕を持って起きれたと思い、ゆっくりとしていて、いつもより早い時間に家を出た。

 だが、丘道学園分校が在る場所まで行ったが丘道学園分校なんて存在していなかった。


「え!?」


 孤卯未はその状況を見て驚いた。


「あの、すみません。ここに在った国立丘道学園分校って名前の学校ってどうなりましたか?」


 何度も何度も孤卯未は道行く人々全員にそう聞いたが、返事は一人も違わず


「そんな学校、元からありませんよ」


  と孤卯未にとって衝撃的な事実だった。

 困り果てた孤卯未は一度、自分の家に帰ることにしてみた。

 だが、朝には在ったはずの自分の家が無かった。

 さすがに焦った孤卯未は、圭兎の家へ向かった。

 だが、圭兎の家も無かった。

 頼みの綱の孤卯未の友達の少女──佐藤希楽夢(さとうきらむ)の家へ向かった。

 希楽夢の家は在ったが、電気が点いていなくて人の気配がしないほど真っ暗だった。

 孤卯未はさすがにこの状況を見て誰もいないだろうと思いインターホンを鳴らさなかった。

 途方に暮れた孤卯未は、一人でずっと歩いていた。

 そして、夜になった。

 近くの時計を見ると午後八時だった。

 孤卯未はそれでも歩き続ける。


「大丈夫かい?」


 孤卯未の背後から突然、声が聞こえきた。

 孤卯未はその言葉に振り向くとそこには、短髪で白髪が多い老夫婦がいた。

 孤卯未は「大丈夫です」と言おうとしたがなぜか声が出なかった。


「大丈夫そうじゃないね。この子をしばらく家に置いておこう。爺さん」


 老婆(ろうば)は孤卯未が返事出来ない様子を見てそう言ってきた。

 孤卯未は断ろうとしたが相変わらず声が出ないままだった。


「そうじゃな。良い案だと(わし)は思う」


 老爺(ろうや)はそう笑いかけながら言った。


「あ、ありがとうございます」


 孤卯未は申し訳無かったので声が出るか試してみて、出たので声をかすらせてかすらせて言った。


「気にしない。気にしない」


 老婆は軽く言った。


「本当にありがとうございます」


 孤卯未はもう一度声をかすらせてお礼を言った。


 歩いている間老夫婦が他愛のない会話をしていた。孤卯未はその会話を静かに楽しく聞いていた。

 しばらく歩いていると老夫婦の家に着いた。

 老夫婦の家は小さな一軒家だった。

 玄関の扉は、ガラスをはめ込んだ引き戸で、その引き戸を開けると畳が広がっていた。

 完全に和室だった。

 孤卯未は今の時代にしては珍しいと思った。

 孤卯未がその家を見てぼっとしている間に老夫婦はもう家の中に入っていた。


「珍しいじゃろ。ここだけじゃなく、この家の全部屋全て和室なんじゃ。まぁ、その話は置いておくとして、早く家に入って来るのじゃ。腹空かしているじゃろ。今日の夕飯の残りじゃが、お食べ」


 老爺はそう言った。孤卯未は、その言葉を聞いて「お邪魔します」と申し訳無く言って入っていった。

 そして、孤卯未は夕飯を食べさせてもらった。

 夕飯は孤卯未の予想通り和食だった。

 孤卯未は夕飯を食べ終わって、老婆に「お風呂に入って来なさい」と言われたので素直に従った。

 孤卯未は脱衣所で服を脱いで浴室に向かっていった。

 脱衣所は、宿泊施設などで使われている脱衣所と同じ作りだ。

 浴室の出入り口はもちろん引き戸だ。

 だが、孤卯未は引き戸には驚かなかったが引き戸を開けた次の瞬間、孤卯未は息を飲んだ。

 なぜなら、浴室の全面(ひのき)で出来ていたからだ。

 孤卯未は戸惑ったが入って湯船に浸かった。

 すると、今日の疲労が勢いよく襲ってきて力が抜けた。

 しばらくしてから、浴室を出ると孤卯未は自分が着ていた服しか無いことに気付いて焦った。

 一応、孤卯未は自分が服を脱いだ場所まで行ってみた。

 すると、寝巻きが置いてあった。

 しかも、洋服だった。

 孤卯未は老夫婦が気を使ってくれたことに気付いた。

 孤卯未は脱衣所を出てついさっき、ご飯を食べた居間へ向かった。老夫婦は待っていてくれた。

 居間は、なかなか広かった。

 床が畳で扉が(ふすま)で窓が障子という作りで出来ていた。

 孤卯未が来たことに気付くと老夫婦が二人して立って


「事情があるだろうけどあえて聞かないことにした。ようこそ。我が家へ。今日から君はこの家の仲間。これからよろしく」


 老夫婦は二人揃ってそう言った。

 本当の家族を知らない孤卯未だが、その言葉に涙が出た。


「はい…これからよろしくお願いします」


 孤卯未は涙声でそう言った。


「でも、今日はもう寝よう。おやすみ」


 老婆が泣いている孤卯未をにこやかに見守りながらそう言った。


「おやすみなさい」


 孤卯未は涙を流しながらそう言った。


「あ、申し訳無いけど貴女の部屋は二階よ。大丈夫今まで使っていて毎日掃除をしていたから(ほこり)はそんなに溜まって無いよ」


 どこで寝ていいか分からなかった孤卯未がキョロキョロしていると老婆はそう言って孤卯未を部屋へと案内してくれた。


「ここよ。布団くらいしか無いけど。ごめんね」


 老婆は襖を指差して孤卯未に謝った。


「いえいえ、布団があれば充分です。ありがとうございました」


 孤卯未がそう言うと老婆は「そう」と頷いて階段を降りていった。

 孤卯未は襖を開けた。

 すると、老婆が言っていた通り布団しか無かった。

 ちなみに孤卯未の部屋も畳だった。

 孤卯未は布団を敷いてすぐに眠りに入った。

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