革命の烽
ゴーリキー州、ゴーリキー市、国家保安委員会(KGB)ゴーリキー支部前
午前6時12分
...結構乗り心地が良いな...サスペンションはどうしたのだろうか。
あ、車が止まったな。
「どうぞ」
彼はドアを開けてくれた。
「有難う」
「ここね...結構大きいわね...」
「ああ...」
五階建てで横は15メートル位か...
「はい。このゴーリキー支部はソビエト=ロシア国内では五本の指に入りますから」
「流石、ソビエト第4の都市だな」
「では行きましょう」
門の前に優しい笑顔をしているお兄さんが居た。
そんな彼が話し掛けてきた。
「お疲れ様です、同志チェイコフ」
「ああ、お疲れ様だ」
「今回はどなたが来た...お、お疲れ様です!」
...うん、驚かせてごめんよ。
「ああ、そちらこそお疲れさん。
最近どうだ?治安は良いか?」
「...最近悪くなって来てますね...本当に悲しいのですが...」
あぁ...本当に酷くなっているのだな...苦虫を潰した様な顔をしているよ...
「分かった、クレムリンに具申して何とかするよ」
「お願いします」
「...そういえばまだ兵器の増産を行っているのか?
もう終戦間近だ。そろそろ兵器も作らなくても良い筈だが...」
「「は...?」」
...何か間違った事言ったか...?
「す、すいません。
...我々は寧ろ今からだ、と聞いておりますが...」
「...はぁ?!」
「今日の午前0時付けの訓令第317号にて兵器の大増産が命令なされていますが...」
は...?いや、今更何処と戦うつもりなんだ?
...いや、一つだけ残っている...『第一の祖国』が。
...いや、でもそんな...まさか...そんな事あり得ない...そんな...
「...ZSIRの支局は何処だ?」
「はい?」
「外地特別諜報部の支局は何処だと聞いている!!」
「は、あ、あの奥の建物です!」
「...すまん!」
「...え、あ、待ってよ!」
私達はゴーリキー外地特別諜報部支部へ向かった。
......
「ここか...」
「ま、待ってよ...はぁ...はぁ...」
「す、すまん。ちょっとある考えがあって...」
「まぁ良いわ...早く終わらせましょう?」
「ああ」
コンコン!
私は扉をノックした。
「...ミハイル」
...確かこれは...
「スクリャノフ」
ガチャ...
「どうした...って、同志?!」
「ああ、私だ。今すぐ外地特別諜報部本部に連絡を取りたいのだが」
「わ、分かりました!取り敢えずこちらへ」
「ああ」
......
「お待たせしてしまい申し訳ありません。
ゴーリキー支部の支部長、ボルマンと申します」
「ああ。で、今すぐ連絡を取りたいのだが...」
「準備は終わっております、こちらです」
私は中央指令室に向かった。
......
「ここです。回線は繋げたか?」
「大丈夫です、支部長。今すぐ行けます!」
「よし。...ではどうぞ...」
「こっちはミハイル・ヴィッサリオノヴィチ・スクリャノフだ。ハリマン・デヴィッドソンは居るか?」
「今お忙しくおりません...」
「...この声は機関長補佐のウィリアム・アッカーマンか!」
「...確かに同志スクリャノフですね。用は何でしょうか」
「今すぐ調べてもらいたい事がある」
「...同志、申し訳ありません。
もう遅いです...」
「...は?何を...」
「...御知りで無いのですね...」
「...シベリア送りされたからな」
「...成程、落ち着いて聞いてください」
―――外地特別諜報部、ZSIRが治安維持の為に解体される事が決定しました。
...は?何を言って...
いや、まさか...やはり本当に...
「...そろそろKGBが武装解除に来るでしょう。
...命令を、同志スクリャノフ」
...やはり、か...このままでは...我が祖国が...そして世界が共産主義化する...
...それは、私が許さん...!!
「全管区の外地特別諜報部に命令する。武装解除を拒否し、抵抗せよ。
繰り返す。武装解除を拒否し、抵抗せよ!
我々は只今を持って、『ソビエト社会主義共和国連邦』に反旗を翻す!全力をもって、我々に反抗する奴等から持ち場を守れ...!」
「...その一言を待っておりました。
...全管区に伝えよ。只今より警戒レベル5に引き上げ。
相手に敵意があると確認出来た場合、射殺せよ。...それでは」
...
「...通信終了しました」
「...警戒レベル5に引き上げよ。特に我が支部には同志スクリャノフが居られる。細心の注意を払え。...総員、行動開始...!」
「「了解!」」
「...すまない」
「貴方...」
本当に申し訳ない...
「...何を仰るのです、同志スクリャノフ。
我々は感謝こそすれど批判はありえませんよ」
「...何でだ?」
「...我々コミンテルン職員は諜報、工作を生業として来ました。
しかしNKVD、そしてKGBに変わると我々には全く仕事が来なくなりました...
あぁ...第一、第二インターナショナルの様に自然崩壊していくのかな、と思いながら毎日を過ごしていたのです。
...そんな時です。スターリンから我々宛に諜報機関創設命令が来たのは」
!!...そんな事があったのか...
「その時の機関長、副機関長選びは相当白熱しましたよ。
何故なら同志、貴方が指揮官だったから」
...何故俺だから白熱する?
「貴方は我々の認識ではソ連の総参謀で国を発展させただけでなく、NKVDを強化し、更に強化されたKGBを作り上げたのです。
そんな貴方が我々の指揮官になる。凄く興奮しましたよ、我々も更に活躍出来る、と。
ですから誰もが名誉ある機関長に、副機関長になりたがっていたのです」
「...で、活躍出来たか?」
「会議でKGB再強化の提案がされた位です」
「...良く知ってるな」
「勿論です、プロですから」
...流石だよ、こいつらは。
「...ですから私は、恩を返したいのです。同志スクリャノフ」
「我々もですよ!」
「...だそうです。
...同志スクリャノフ、私達を使い潰して頂ければコミンテルンとしても本望です」
「支部長の言う通りだ!」
「そうだそうだ!」
...こいつら...笑顔でこんな事言いやがって...
「貴方...」
「ああ」
突然扉が開き、1人入ってきた。
「支部長、お話が!」
「煩いぞ!
...で、どうした?今忙しいのだが」
「は。KGB職員が話がある、と...」
「...武装解除命令の通告では無いのか?」
「...共に戦おう、と申しております」
「...怪しい」
...確かに怪しい...怪しいが...
「...通してくれ」
「ど、同志?!」
「ただ荷物検査を徹底的にすれば良いだけだ。仲間は多い方が良いのは確かだからな...」
「...分かりました。
通してくれ。しかし荷物検査は徹底的にするんだ、良いな?」
「...分かりました」
「...それでは応接室に移りましょう」
「ああ」
......
応接室
コンコン!
「...良いぞ」
ガチャ...
「いきなり訪問して申し訳ありませ...ん...?同志、ここに居らしたのですね」
「あ、ああ...確か君は」
「ペチュコフです、同志」
「...彼とはお知り合いで?同志スクリャノフ」
「ああ...私はゴーリキーを視察していたら彼に会ってね...」
「成程...で、いきなりどうした?」
「...共に戦わせてもらいたい」
「...何故だ?」
「ロシアの為だ」
「...ほう?」
「クレムリンとソ連共産党を排除する事を躊躇することは、ロシアの地位と名誉に致命的な結果をもたらす!」
「!!」
ほう...これは...
「我々の調べによりますと昨日の23時頃、クーデターが起きています」
...は?
「誰がクーデターを...」
「「ゲオルギー・ジューコフ」」
「なっ...」
「流石お知りで」
「ZSIRだからな」
「ええ。...彼はソ連首脳部を全員逮捕、監獄へ送り込みました。
大日本帝国と手を切り、潰す為だと思われます」
...どうしてこんな事を。
「...我々KGBと、貴方がたZSIRは確かに対立しています。
しかしながら...
――より良い祖国の為、という目的は共通です。
今は対立している時ではありません。
我々もクレムリンとソ連共産党に対抗すべきだと考えています」
「...指揮官の許可はどうした?」
「...彼は流れ弾で死にました。
ですから指揮権は同志スクリャノフに移譲し、指揮下に入ります」
「ふっ...成程...」
流れ弾、ねぇ...
「...我々KGBと共にこの国難を乗り越えようではありませんか!」
「...よろしく頼む」
「っ!...はい!!」
「では話し合いをしよう」
「あ、その前に全世界に宣言したい事があるのだが、可能か?」
「問題無いです」
「...分かった。では、行こうか...」
「「はい...!」」
...突然過ぎる...?
いえ、知らない子ですね。
そして書いていたらこうなりました...
うん、まぁ良いさ...
次だ次!