秘書、再び...
1942年、1月13日午前14時頃。
モスクワ、クレムリン郊外、共産党幹部寮。
コンコン!
「...誰だね?」
「私です、同志」
えっと...この声は...
「ああ、君か。良いぞ、入りたまえ。...まぁこんな事言える立場では無いのだが...」
「失礼します、同志スクリャノフ」
ヒュー...パタン。
「えっと...名前は確か...」
「アルフレッド・フォン・ヴァルジャンです、同志スクリャノフ」
「そうか...で、いきなりどうしたんだ?同志アルフレッド。私の引退を悲しみに来たのかね?」
俺は嘲笑しながら言った。
「...忘れたとは言わせませんよ?同志スクリャノフ。私は貴方の秘書ですよ?」
...は?
「...今何て言ったか?同志アルフレッド」
「私は貴方の秘書です。付いて行きますよ」
「...来て、くれるのか?」
「勿論です、同志スクリャノフ。拒否したとしても付いて行きますから」
「...すまない」
本当に有難う...
ヒュー...パタン。
「あら?貴方は...」
「ああ、エカテリーナ。...今回も私たちの秘書をしてくれるそうだ」
「アルフレッドと申します。毎回お世話になっています、奥さん」
「あら、そう......本当に良いの...?」
「勿論です、同志エカテリーナ」
「...そう。よろしく頼むわね?アルフレッド...アルフレッド...アドルフさん?」
「え、ええ?」
「お、それ良いあだ名だな。これからそれにするか」
「え、ええ?!じゃ、じゃあ同志スクリャノフは...ヨシフで良いですね!」
「...うーん...それは...どうかしら...」
「じゃあエカテリーナは...」
「ええ」
「「大帝で」」
「え、ええ...?何でそうなるのよ...」
「何でって...」
「エカテリーナと言ったらエカテリーナ2世ですし、ねぇ...」
「ああ、同志アドルフ」
「はぁ...分かったわよ...」
「...さ、準備は出来ましたか?」
「ああ、出来てるよ」
「私もよ」
「では行きましょうか。有難い事に同志スターリンは私有財産は没収しなかったようですから」
「...そうか」
「それは...確かにありがたいわね」
...普通なら私有財産の没収を行う筈だ...なのに何故...
「今さっき確認したところ33万6千ルーブル入っておりました」
...何が起きた?
「なぁ、カチューシャ...」
「な、何かしら?貴方」
「俺は生活費は給料から出せって言ってたよな...」
「え、ええ」
「仕方無いですよ、同志。何故なら生活費等全て党から出ているのですから」
「...つまり党員であれば給料は要らないのか...?」
「まぁ幹部クラスでないと無理ですが」
「...これが共産党幹部、か」
「節制すればある程度は持ちます。頑張りましょう」
「...カチューシャ?ソ連人民の平均収入は分かるか...?」
「...えっと、確か...月収600ルーブルで、年収は7000ルーブルだった筈よ?」
「で、同志スクリャノフは月収7000ルーブルで、年収84000ルーブルです」
...ソ連人民の年収が俺の月収ってどういう事だよ...
「分かった、有難う...」
「...準備は出来ましたか?」
「ああ」
「勿論」
「では行きましょう」
さてと、シベリア鉄道に乗ろうか。
遅れてしまい申し訳ありません。
多分次回は世界最長のシベリア鉄道です。
少々お待ちください。




