各戦線斯く戦えり
東海岸沿岸、BTR―60P車内
「―――」
前で班長が喋っている。
この戦いはアメリカを解放する聖なる戦いだとか、同志書記長の言葉だとか...
だが、俺が聞きたいのはそんな言葉じゃ...
「――。さて、最後だ。同志スクリャノフ特別大将からだ」
どうせいつもの大義名分だろ、はぁ...
「...『我が同志達よ。我々はボロディノの時より誓った。聖なる言葉『モスクワを守らん』、と...
今アメリカは軍事政府で自由を抑圧されている。今こそ我々は解放せねばならない...というのは大義名分だ』」
...え?
「『一言言わせて貰う...この戦いに巻き込んでしまい、申し訳ないと思う。君達若者は本来我が国の基盤を頭で支える者達なのだ...
それをこのような形で、例え少人数でも失ってしまう事は我が国、いや世界の損失である...
...旅立ち若者達よ、諸君らを戦場に向かわせてしまった私を許すな。
...願わくは、諸君の挺身が若者を戦場に送る事無き平和な世の礎とならん事を――』、以上だ。
...皆の武運を祈る。」
...何だろう、この気持ちは...世の礎、か...それなら最悪この身を捨てても良いかもな...
「重機関銃に2名付いてくれ!頼む!」
...私がやろう。
「私がやります」
「お?お前がやるのか?エドワード」
「悪いか?」
「いいや...じゃあ俺がもう1つの銃座に付くぜ」
「お前...」
「...まぁ良い。防楯は付いているから気休め程度にはなるだろう。
また、この装甲車にはガンポートがある。弾は座席の板の下にたんまりとある。上手くやってくれ...」
「はっ!」
「...そろそろ上陸する。衝撃吸収の体勢を取れ!」
...さ、やるか。
......
ホワイトハウス、大統領室
「...どうだ?」
「...正直厳しいです、大統領」
「...警護部も良くやってるよ...本当にうちの国の者が済まない...」
「大統領...」
ジー...ジー...
「っと、申し訳ありません大統領。無線が」
「私は大丈夫だ。早く出てやれ」
「有難う御座います...どうした?」
「第一防衛線を突破されました。これより第二防衛線に撤退します」
「...分かった」
無線機を元に戻した...
「...何があった?」
「...第一防衛線が突破されたそうです。防衛線はあと4つありますがどうなるか...」
「くそっ...!...っと、済まない。君達を責めてる訳ではないんだ...」
「大丈夫です...一応近場の支部から応援を呼んでいます、もう少しの辛抱です」
「分かった...」
......
ペンシルバニア邦、邦庁
「知事、決断を...!」
「...しかし」
「アメリカがあんな団体に乗っ取られてよろしいのですか?!」
「っ...」
「知事!」
「知事!」
「...分かった」
「「有難う御座います!」」
「...ただ他の州も同盟を結べ。良いな?」
「「はい!」」
本日は大東亜戦争の開戦日です。
祖国、東南アジア、家族、親戚、親友の為に散華された約300万柱の英霊の方々に対し、ご冥福をお祈り申し上げます。
...首相、ハワイに慰霊に行けて、靖国神社へ行けないのは何故か...
甚だ遺憾である。