呼び掛け
1942年1月6日 午前7時頃
クレムリン、執務室
「同志カチューシャはどんな状況かね...?」
「もう二日間も寝ていません...」
「...そうか...」
「一応食事は取っていますが疲労が溜まっている筈です...そろそろ休ませないと...」
「...分かった、私が行こう」
「?!同志書記長?!」
「元々私の責任なのだ...スクリャノフを休ませなかった私の...」
「...分かりました」
同年同日午前7時20分頃
モスクワ近郊、国立第一病院
「...貴方...」
ねぇ...早く起きてよ...貴方言ったよね?平和な世界になったら一緒に世界一周旅行でもするか、って...
お願いだから起きて、私をまた抱き締めてよ...
コンコン。
っ...!
「だ、誰かしら?」
「私だ、同志カチューシャ」
「...入って」
「失礼するよ」
同志書記長が入ってきた。
「スクリャノフの容態はどうかね...」
「...比較的安定しているわ...脈も最近乱れてないし...」
「それは良い事だ...」
「...同志スクリャービンから聞いたわ。実質的な失脚宣言を夫にしたって...」
「...そうだな」
「何でしたの...」
「それは...」
「政治欲、なんて言わないでよね?」
「っ...」
「知ってるかしら?同志スクリャービンが何故“失脚宣言”を受け入れたか聞かれ、答えた言葉」
「...」
「...政治欲?そんな物はありません...私はただこの国を良くしたかった、その一心だけだった。必要なし、と言われた為、下がった、と」
「...」
「新婚旅行の時にあの人こう言ったわ。少なくとも必要なしと言われるまではこの体hっ...!」
「ど、どうした?」
「...今私の手首を掴んだような...」
「何っ?!」
「ま、まだやれるわよね?起きて?ね?起きてったら...お願いよ...起きてよ...」
お願いだから...私を置いていかないでよ...
「...カチューシャ、一度休め...」
「で、でも!」
「例えスクリャノフが起きてもその顔だと逆に心配されるぞ、それでも良いのか...?」
そんなの...良いわけないじゃない...
私は頭を横に振った...
「じゃあ休もうか...」
「...分かったわ」
「さ、行こう...」
私はこの後(恥ずかしいけど)爆睡した...
次で暗い話は終わります。
ブックマークは外さずそのままで。