外地特別諜報部(ZSIR)
1941年12月12日 午前9時頃
クレムリン、執務室(スクリャノフ用)
コンコン。
「誰だ?」
「デイヴィッドです、同志スクリャノフ」
「デイヴィッド...ああ、デヴィッドソンか。入ってこい」
「失礼します」
扉が開く...
「報告書を提出しに参りました」
デヴィッドソンが扉を閉め、報告書を差し出す。
「ああ、ありがとう」
俺は報告書を受け取った。
「ウクライナの方はやはりポーランド系ウクライナ人の独立運動でした」
「ふむ...」
「何故独立したがるんでしょうね...」
「さぁ、それはウクライナの奴に聞いてくれ...私としては史実のソ連より幾分も良いと思うのだが...これだからポーランド系は...独立したら何でも自由に出来るとつけあがりやがって...周辺国が協力してくれるから国は上手くいくんだぞ?...はぁ...」
「...同志スクリャノフ」
「何だ?」
「一度独立させてみてはどうでしょう」
「...何故だね?あまり変な理由であれば許さんぞ...?」
俺はデヴィッドソンを睨んだ...
「っ...理由は...一度独立させ、独り立ちの辛さを教えてあげるのです。そうすればある程度の期間は独立運動も起きないはずです」
「...理由は良いとしよう。しかしウクライナが独立している時、穀物はどうするつもりだ?」
「それは...」
「...まぁその辺りの案を纏めてみてくれ。良いものだったら会議中に提出するから」
「!!ありがとうございます」
「それで他の報告は?」
「アメリカですが本当に敗北したそうです」
「!!そうか...」
「はい」
「良かった...ところでアメリカの工業力の方はどうだ?」
「正直言いますとやはり可笑しいですね、勿論我らソ連に勝てる筈はありませんが」
「ふむ...」
「我々は重工業化を進めてきており、既に第一次拡充計画を始動出来るところまで来ました」
「そうだな...」
「現在キエフ、ハリコフ、ゴーリキー、オデッサ、タシケント以下地方中枢都市には鉄道を張り巡らせ、郊内には地下鉄も敷設中で、兵器工場で、航空機を製造中です」
「ふむふむ...え?」
「そして地方中核都市では鉄道を張り巡らせ、兵器工場で、軍用車両を増産中です」
「え、いやいや...」
「地方中心都市は鉄道を張り巡らせ、武器全般を増産中ですね。地方中小都市は鉄道を張り巡らせ、弾薬を大増産しています」
「いや、待て。いつの間に地方中小都市まで鉄道を張り巡らせたんだ?」
「極秘にベリヤ同志がフィンランド戦時に、もしもの時の為に、と」
「...流石に同志スターリンには言ったのだろう?」
「ええ。そこは確かです、同志スクリャノフ」
「なら良いんだが...ところで極秘だろ?どうやって情報を手に入れたんだ?」
「...まぁコミンテルンの職員ですから...」
「...え?第三インターナショナルの?」
「ええ。ですからある程度は人脈があるんです」
ありすぎだろ!何でKGBのトップの極秘情報が分かるんだよ!
「ど、どうなされました?」
「...いや、大丈夫だよ。...まぁこの報告書はちゃんと読ませてもらうよ」
「お願いします」
「...あ、そういえば調べてもらいたい事があるんだ。良いかい?」
......
1941年12月14日 午前2時
アメリカ、ロサンゼルス郊外
コンコン!
「...ヨシフ」
「ジュガシヴィリ」
扉を開ける...
入ってきたのは...外地特別諜報部員だった。
「お疲れ様だ」
「いえ。そちらこそお疲れ様です、同志」
「うん。ところで支局長はどこに居られるかな?」
「支局長でしたらその扉の先に居ます」
「そうか、有難う」
コンコン!
「良いぞ」
「失礼する」
扉を開ける...
「こ、これはZSIR...」
「そう怯えるな、支局長。今回は命令書がある」
「元は?」
「同志スクリャノフからだ。18日迄に当管区の失業者数、国民の不満度を調べてもらいたい」
「...分かりました」
「宜しく頼むぞ、同志」
......
同年同日午前8時
ロシア、クレムリン、執務室(スクリャノフ用)
コンコン
「誰だ?」
「デイヴィッドです」
「入れ」
「失礼します」
扉が開く
「どうした?」
「アメリカのコミンテルン全管区へ調べるように命令を下しました」
「有難う。さ、これによって作戦の成功率が上がるかどうかが決まるな...」
「どんな作戦ですか?アメリカ人の力で、成功率が変わる作戦とは」
「...秘密だ。勿論、現在練っている作戦にはコミンテルンの協力が非常に重要になってくるのは確かな事は言っておこう。...その時は宜しく頼むよ」
「分かりました、同志スクリャノフ」
同年18日午前9時 クレムリン、執務室
コンコン。
「誰だ?」
「デイヴィッドです、同志スクリャノフ」
「入ってこい」
「失礼します」
ガチャ。
「アメリカ全州の失業者数、国民不満度を纏めた報告書を持って来ました」
「ああ、有難う...」
デイヴィッドは机に報告書を置いた。
「中身を見れば分かると思いますが端的に言いますと...」
「言うと?」
「失業者数は合計3900万人まで膨れ上がっています」
「3900まっ...?!」
「国民不満度はそろそろ70%に到達しそうです」
想像以上に酷いな...
「普通、非常事態宣言出しそうなんだが...」
「まぁ大日本帝国と戦争中ですから...一応州兵も動員していますから非常事態宣言と同じ様な状態でしょう」
...何か、何もしなくても崩壊しそうだな...
...ん?崩壊...?
「...なぁ、デイヴィッド」
「何でしょうか」
「調べてもらいたい事がある。なに、コミンテルンだったら一瞬で調べ終わるさ」
俺は不敵な笑みを浮かべた。