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何故か旧ソ連に来ちゃった?!  作者: 桜花
ソヴィエト社会主義共和国連邦からロシア連邦へ ~ペレストロイカ~
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クレムリンへの帰還を前に

1942年2月17日 午後6時23分

ソビエト=ロシア社会主義共和国

ヨーロッパ・ロシア鉄道、ヤロスラフスキー駅構内


戻ってきたな、モスクワに。


モスクワ。


北方のパリ、第二のウィーンと呼ばれ、芸術の街、進歩的な街とも言われるレニングラードに比べ、モスクワは反対で保守的な街である。

立地条件が田舎という事もあり、今までの伝統を残している、と言えば聞こえは良いだろうか。

まぁ、町並みはどちらも素晴らしい事は今更言及しなくても良いだろう。

因みにどうでも良いことを言えば、ロシア貴族はロシア語を田舎者が喋る言語だとして、フランス語を教養として子供に覚えさせていたらしく、逆にロシア語が喋れなくなるロシア貴族が居たらしい。

それによってボリシェヴィキ(後の共産党)による()()()()()が楽であったらしいのは皮肉な話だ。

まぁどちらにしても我が国にとっては重要な都市である事は間違いはなく、仲良くしなければならない事は確かなのである。


...さて、何故唐突にこんな事を話しているかというと目の前で醜い争いがあってるからである。

片方はレニングラードこそ素晴らしい街であり、レニングラードに首都を変えるべきである、と唱えるおそらくレニングラード市民。

片やモスクワこそロシアの伝統を受け継ぎいでいる。それに比べレニングラードはただ堕落した街ではないか。だからモスクワこそ最高の首都である、と唱えているおそらくモスクワ市民。

まさかモスクワに戻って早々、こんなものを見るとは思ってもいなかった私は、呆れてその論争を眺めていた。


「あれ、どうしたのですか?ご主人様」

「ん?いや、あの論争を眺めていたのだが...」


...ん?可笑しいな、今さっきまで聞こえていた声がするんだが。


俺は横を見ると、確かにそこに居た。


「...お前何でここに居るんだ?子猫」

「それは...すいません、言ってませんでしたね。私、本当はKGB警護部の者なんです」

「...何故客室乗務員として乗っていた?」

「勿論上からの指示ですよ?同志スクリャノフが乗られるから警護を頼むと言われまして」


成程、そういう事か。いや、待てよ?そうなれば車内での話は...


「一つ質問があるのだが、車内での話は本当か?」

「性的嫌がらせですか?...事実です。客室乗務員の方と話していたらそちらの話になったので上手く誘導してはかs...喋らせました」


...今絶対吐かせたって言おうとしたよな?したよな?...まぁ、


「...本当に申し訳ないと思うよ。我々の手が回らないばっかりに」


私はつい溜息を吐いた。


本当に申し訳ない、そう思ったとき子猫が肩を叩いてきた。


「ご主人様?もっと私達を使ってください。私達はあなたのような方々を手助けする為に存在するのです。沢山扱き使ってください」


彼女は純粋な目で、微笑みながら私に言ってきた。


「...有難う、子猫」

「私はもう子猫じゃありませんから」

「ほう。では何でしょうか、Ваша леди(御令嬢)?」

「アナスタシア・ミラーノヴナ・ヴィクトーリア。それが私の名前...です」

「分かった、覚えておこう」

「有難うございます」

「おい!そこの若いの!」


そんな時、論争をしていたモスクワ派の一人の男がこちらに呼び掛けた。


...えっと、これは俺が言った方が良いのだろうか?


「私ですか?」

「ああ、そこのお前だ。お前はどっちだと思う?勿論モスクワだよな?」

「いいや、絶対レニングラード派だろ?俺は信じてるからな」


いや、そう言われても、ねぇ?


「あの、答えなくても良いですよ?あの人達お酒が入ってますし...」

「いや、ここは答えるべきだろう。少し時間をくれないか?同志ヴィクトーリア」

「...分かりました。でも、気を付けてくださいね?酒が入ると何が起きるか分かりませんから」

「ん、有難う」


そう言うと俺は彼らの方へ歩きながら、話し始めた。


「...私は中立ですね。何故なら我が連邦ではどちらも必要な都市ですから」

「...ほう、何故そう思う?」


モスクワ派のおそらくトップの男が言ってきた。


「レニングラードは確かに美しい街です。おそらくロシアの中で一番素晴らしい街でしょう」

「だろう?ほら、彼の言う通りだ」


レニングラード派の男達が顔に笑みを浮かべ、モスクワ派の男達の顔が曇った。


しかし、と私は言葉に間を置いて言葉を続けた。


「首都を置くという観点で見れば危ない街でしょう。何故なら目の前にフィンランドがあります。まさかこの期に及んで攻めてくるとは思いませんが、攻められると非常に防衛が厳しい場所だからです」

「確かに、それもそうだ」

「うんうん」


今度はモスクワ派の男達が顔に笑みを浮かべ、レニングラード派の男達の顔が曇った。


そう、ここが一番の不安な点である。実際史実でもソ連邦はフィンランドのカレリア地峡をレニングラードの安全の為奪取した(いわゆるソ・フィン戦争)し、史実の大祖国戦争でも陥落の危機に陥った。

それに比べモスクワはまだ距離があり、防衛もしやすいという地の利があった。おそらくソ連邦が首都をモスクワに変えたのも上記の理由がある筈である。


「そういう訳で、私は中立に立ちます。それに、どちらも私の愛しいソヴィエト連邦市民が居ますから」

「...有難う、若いの。俺は忘れてたよ、どちらも母なる祖国が与えてくれたものだ。互いに大事にしていかないとな」

「...そうだな。俺達は母なる祖国、そして同志スターリンと同志スクリャノフ率いる素晴らしい同志達の下に成り立っているんだ。彼らを悲しませてはいけないな」

「...皆さん、有難うございます」


...俺は同志達の言葉を聞いて、感謝の言葉を述べながら、只々彼らの幸福の為に身を粉にしなければならない、改めてそう思った。


「では、行きましょうか?()()()()()()()()

「...え?」


その時、その場の空気がアナスタシアの言葉で凍り付いた。


「お、おい?何言ってるんだ?同志スクリャノフが我々と共に話をしているなんて...流石にそんな冗談は無しだぜ?嬢ちゃん。そ、そうだろ?そこの若いの」


モスクワ派の一人の男がそう言った。


...おい、何言ってくれてるんだ。今いい流れだっただろうが。このまま普通に一般市民的な立ち位置で帰らせてくれよ、アナスタシア。


「もう時間切れですよ?同志スターリンから8時までにはクレムリンに来させるように言われているんです。早く行かないと私が怒られますから」

「だから冗談だろ?流石に冗談じゃないと俺今日眠りにつけねぇよ」


そんな時この騒ぎを聞いて聞き付けて来たKGB職員が走ってきた。


「君達、何を騒がしくしているんだ。もう少し静かにしなさい」

「す、すみません。し、しかし一つ話が」

「何だ?」

「あ、あの女が横に居る男を同志スクリャノフって言うんだ。ちょっと確かめてくれよ」

「...成程、虚偽か。分かった、ちょっと待ってろ」


俺は横のアナスタシアに向いた。


「おい、騒ぎが大きくなってきたぞ。どう責任取るんだ」

「完全に失敗しましたね...」

「お前本当にアンドロポフ学校出か?」

「し、失礼ですね。ちゃんと出てますから」


若い男のKGB職員が我々の前に来た。


「さて、同志。虚偽はいけない事は分かってるよね?まして同志スクリャノフなど、そんな虚偽はあってはならない筈だ」

「...はぁ、結局こうなるのね」

「何だその口は」


アナスタシアは内ポケットから手帳を取り出した。


「KGB警護部、アナスタシア・ミラーノヴナ・ヴィクトーリア保安中佐よ。今同志スクリャノフの護衛の任についているわ。もし疑うのならKGB本部に掛け合いなさい?今回の上司は同志ラヴレンチー・ベリヤだから直ぐ分かるわ」


それを見た男は顔の血の気がサッと引いた後、全力で頭を下げた。


「すいませんでした!」

「今回は仕方ないわよ。不問にするわ。でも、せめてもう少し口調を緩めたらどうかしら?ソ連人民が怖がるわ」

「ハッ!今度からそうさせて頂きます!!...一応、同志スクリャノフの方も確認させて頂いてもよろしいでしょうか?」

「だから彼は同志s」

「大丈夫だ、アナスタシア。少しお待ちくださいね」


俺は内ポケットに入れておいた共産党員徽章(幹部以上)を渡した。


「...はい、この時点で幹部以上という事が分かりましたのでもう結構です。良く確かめもせず、申し訳ありませんでした」

「いや、君は市民の声を誠実に聞き、それを実行に移したまでだ。私は君を責めないし、同志ベリヤにも伝えておこう」

「有難うございます」

「うん」

「......では、行きましょうか」

「ああ」


...何かアナスタシアの声が拗ねた感じの声に聞こえたが、まぁ気のせいだろう。おそらく、私を置いていこうとしているところも、...きっと気のせいだろう。


俺は歩き始め、数歩歩いた時に思い出して聞いてみた。


「ところで本当の口調はそんな口調なんだな」

「っ...あ、愛嬌無いですよね、この口調。私はこの口調を封印していたのですが」

「いや、その方が君に合ってるだろう」

「......そんなに厳しそうな女に見えますか?」


彼女は立ち止まり、私の方を向いた。


「そ、そういう訳では無くてな...」


自分自身も立ち止まり、彼女を見ながら良い言葉を探した。


「...そうだな、その口調の方が君の魅力を引き立たせるからそれで良いさ」

「そう、ですか...」


思い付いたのは、そんな言葉だったが彼女の心に届いただろうか。


「では、クレムリンに行こうか」

「はい」


彼女は少し微笑みながら、俺の横を歩いていった。

...彼女が幸せになりますように、そう思いながら既に見え始めている星空を一度見上げ、歩き始めた。

はい、作者の桜花です。

すいません、少し後書き使います。


さて、皆さんに質問があります。

実は第一話を改訂いたしました。そこで今回の話か一話目、または今まで通りか、どれが一番読みやすいかを聞きたいと思います。

今後はそれの通りに書いていこうと思いますので是非回答をよろしくお願いします。

それでは、次回もよろしくお願いします。

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