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何故か旧ソ連に来ちゃった?!  作者: 桜花
第二次世界大戦講話交渉
106/112

紅茶会談

本年最後の投稿となります。

1942年1月27日 午後10時12分


KGBゴーリキー中央支部、廊下


...ここか。


私はミハイルの居る執務室の前に立っていた。


正直一国の首相が一国の議会副議長に招待される、というのは少し可笑しいと思ってしまうが、彼だからしょうがないだろう。

...彼と始めて会った時は何をしていたか...

...そうか、モスクワ講和条約締結の時に彼が役職を捨てる。ということで何故か大急ぎで呼び出されたのだったな。

結果的にエカチェリーナが呼び止めてそれは無くなったが。

...まぁ楽しかったよ。


私はそんな過去を思い出しながら、扉を叩いた。


コンコン!


「ん、どうぞ」


...そういえばこの男はノックの音で誰が来たか分かる男だったな。本当に恐ろしい男だ。

まぁ普通に優しいのだが...


「失礼するよ」


扉を開けて、奥の方を見ると...


「お疲れ様です」


沢山の書類に埋められているミハイルを見つけた。


...いや、どうやってそんなに溜める事が...まぁ...


「紅茶を戴けるかね?」


「ワインもありますが」


「いや、流石に公務中だからな」


私がそう言うとミハイルは机の下からボトルを取り出した。


...まさか。あの、ボトルは...


「ポル・ロジェ、ありますよ?」


...私のお気に入りを出してきたな。これは...飲みたいな。


「まぁ、呑まなくてもあげますよ」


...有難う、ミハイル。


「...じゃあ貰って帰るよ」


「分かりました」


ミハイルは私を見て、微笑んだ。


「では紅茶とコーヒー、どちらにしますか」


「...紅茶にしておこうか」


「分かりました」


...ん?ミハイルが立って...まさか。


「ミハイルが入れるのか?」


ミハイルが部屋の片隅にある給湯室に入っていったからだ。


「はい。基本的に妻か私自身で入れてます」


「...そうか」


ミハイルが、か...想像出来ないな。


私は机の前にある椅子に座った。


「想像出来ないですよね、私が入れた紅茶」


?!...読まれた?!


「良く言われます。え?ミハイルが入れるのか、と」


「...だろうな」


...少し無言が続くとミハイルが口を開けた。


「...同志書記長が申し訳ありませんでした」


「あぁ...いや、仕方ないさ。表の歴史ではどうしても隠されるものだからね」


「首相...」


「...私は彼の功績を横取りしたようなものだ。...まぁ結局、私はそれを有効活用出来なかったのだが...」


「それは...」


「...本当に済まなかった。本当に...済まなかった...!」


「...飲みましょう、首相」


いつの間にか戻ってきていたミハイルは優しい声で、言ってきた。


「...あぁ」


そう言うとミハイルは私の前で紅茶を入れはじめた。

...ん?この良い匂い...まさか。


「ロシア式じゃないな?この入れ方」


本当に良い匂いがする。


「ええ。やはり首相はイギリス人ですからそれに合わせた方が良いかと思いまして」


「...そんな心からの配慮の気持ちは何処から来るんだ?」


「...私はあなた方を心の底から尊敬しているのです」


「ふむ...?」


つまり、どういう事だ...?


「IFの世界ってありますよね」


「まぁ、そうだな」


「もしネヴィル・チェンバレンが本当に宥和政策で終わっていたら?もし、ペタンが親ドイツ政権を作らなかったら?」


「っ...!...それは...確かに怖いな...」


もし、そうなっていればフランスもイギリスも早く『蒸発』していただろう。

そうなればヒトラーは...


私はその後を想像して身震いした。


「はい。だからこそ、その選択、その決断をした人を私は尊敬せざるを得ないのです」


「成程、その為か」


「はい。...寄り道しすぎましたね。そろそろ本題に入っていいですか?」


「ん?ああ、良いぞ」


本題とは何だろうな...


「ジョージ6世国王陛下とメアリー王女に謁見したいのですが、よろしいでしょうか?」


「...恐らく今までの事を考えるとジョージ6世国王陛下は不可能だろう」


「フリーメイソンだから、ですね」


「ああ。ただメアリー王女だったら直ぐに謁見出来るだろう。ただ、何故メアリー王女なんだ?」


「...今イギリスではユダヤ狩りが行われているそうですね」


「っ...何故それを...」


「もし、もしジョージ6世国王陛下がフリーメイソンに加入なされている、という事がバレたら...」


っ...それは...『革命が起きてしまう』。


「...何が目的だ?」


「イギリス王室からのフリーメイソン排除」


「...それだけなのか?」


「ええ」


「...正直拍子抜けしたのだが」


もっと酷い事を要求されると身構えたのだが...


「しかしこれが最重要事項なんですよ」


「...というと?」


「...このまま行くとイギリス王室の世俗化が進みますが、それでも良いのですか?」


「っ...それは...」


...それだけはいけない。


今までの世俗化した王族や皇族は最終的に“抹消されている”のだから。


「私は嫌いなんですよ。本来神聖化されている存在が世俗化して権威が落ちて行くのが」


ミハイルの過去に何かがあったのだろうか、苦虫をかみつぶしたような顔をしている...


「確かに。だが、何故世俗化していくと分かるんだ?」


「フリーメイソンの方針で、愛国心を無くす、というのがあるんですよ」


「っ...!...それは、本当か...?」


「はい。...ですから私は大っ嫌いなんですよ」


「つまり愛国心を無くすには世俗化すれば良いと」


「その通りです、首相」


「...分かった。出来る限りの事はしていこう」


「有難う御座います」


私は紅茶を飲み、一息ついた。


「...にしても、聞けば聞くほど酷い組織だな」


そして私はそこに入っていて、支援していた訳か...


「ええ。...まぁそれを止めるのが我々の役目です」


「...分かった。まず両議会からフリーメイソンを排除する事から始めよう」


「お願いします」


「ああ」


「...まぁ、取り敢えず私からの話は以上です。首相からは何かありますか?」


「...いや、現状は無いな」


「分かりました。...そういえば首相はいつ頃イギリスへ戻る予定でいますか?」


「確か...明日の6時頃の鉄道だったな」


「分かりました。では、お送りしましょうか」


「いや、大丈夫だよ。幾ら奴らといえどもKGBの支部には入れないだろうからね」


そう、有難い事にKGB支部に泊まらせて貰えるのだ。

勿論希望制だがここの方が安全の為部屋を借りたのだ。


「分かりました。では、ポル・ロジェを」


ミハイルは紙袋に入れたポル・ロジェを手渡した。


「有難う」


「はい」


「またいつか、な」


そう言って、私は部屋を離れた。

はい、作者の桜花です。

本年も色々ありましたが、何とか生きてます。

皆様も同じでしょうけど。


...去年、今年中には終わらせる...!、って言っていたのは何なんだろうか、と思いながら今、後書きを書いています。

...来年こそ...流石に来年には終わるでしょう。おそらくどれだけ道草食ったとしても残り10話~20話の間で完結する予定です。


...これも嘘つきにならないように...!


では、おそらく来年で本小説は終了になりますが、来年も本小説をよろしくお願いします。

失礼しました。

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