反フリーメイソン
前回のあらすじ
ゴーリキー講和会議。そしてユダヤ人との出会い
1942年、1月26日、午前10時23分
「...で、用件は何だ?ジェームズ君」
私は私の前に座っているジェームズ・チャールストンに言った。
「我々に対する支援をお願いしたいのです」
「...何?支援?」
「...実はユダヤ人の中にも派閥があるのです」
ふむ...?派閥?
「...それで?」
「我々とは違う派閥の方を潰すのを支援して頂きたいのです」
「......」
「...えっと、あの、スクリャノフ様...?」
「...やっと来たか」
私は微笑みながら答えた...
やっと、やっとだ...
「...へ?」
「KGBとZSIRから派閥が二つある、という報告は聞いていたが本当だったとはな」
「...え?」
「よし、良いだろう。今夜...そうだな、9時頃にKGBゴーリキー支部に来たまえ。出来ればロシア支局のトップも連れてな」
「...捕まえませんか?」
「言っただろう?やっと来たか、と」
「あ...」
まぁやはり警戒心は抱くだろう。
何故なら我々ソビエト連邦は今もユダヤ人を弾圧しているのだから。
でも、だからこそ、ここは確実に彼らを味方にしなければならない。
「...よく来てくれた。
我々ロシア人は、いや、フリーメイソンを目の敵とする世界市民の代表者として、君達を歓迎するよ」
「...えっと、どういう事で」
「派閥名は知らないが彼らこそ、我々が必要とする『反フリーメイソンのユダヤ人』だよ」
「!!...それは...」
チャーチル首相は心底驚いたような顔をした...
当たり前だ、こうして会わなければ私も信じれなかったのだから。
「えっと...そこまで大きい声は...」
「大丈夫だ。フリーメイソンの者達はこの州庁舎には入れないよう、KGBの警護部を配置させてるからな」
「な、成程...」
「あいつらに邪魔されたらかなわないからな。...という事で安心したまえ」
「有難う御座います」
「うん。...あ、首相。そろそろ会議室へ御移動をお願いします」
「あ、ああ。分かった」
「...では、また夜に」
「はい」
彼の目は、しっかりと私を捉えていた...
・・・・・・
同年同日、午後9時、KGBゴーリキー支部前
コンコン!
来たか...
「誰だ」
「...ジェームズ・チャールストンです」
僅かだが間が空いて、聞こえた。
「入れ」
ギィー...パタン...
そこには昼間見た男ともう一人、女性が居た。
「お疲れ様です、ミハイル・スクリャノフ」
私は手を伸ばしてきた彼の手を握り、言った。
「ああ、そちらこそ。...にしても良く間を空けるように、と言ったのを覚えていましたね」
「我々ユダヤ人は義理堅いですから」
「成程。...で、隣のお嬢さんが?」
私はそちらの方へ視線を動かした。
「あ、紹介します。ユダヤ人協会、ロシア支局臨時局長、ジョージア・カリーニンです」
すらりとした体のした女性だ。年齢は...私より下か同じくらいだろう。
「初めまして、同志スクリャノフ。
ユダヤ人協会、ロシア支局臨時局長、ジョージア・カリーニンです。
本当は夫が局長ですが、今夫は軍務についておりますので私が代わりとして来ました」
あっ...えっと...
「それは...本当に申し訳ありません」
「いえ、夫も祖国の為なら、と言って飛んで出ていきましたので...」
「そ、それは...」
...ん?という事は...
「貴方達は完全なるロシア系ユダヤ人...」
「はい。その通りです、同志スクリャノフ」
「それを聞いて安心しました。まぁ玄関先では少々話しづらいので此方へ」
・・・・・・
KGBゴーリキー支部内、応接室
「ふぅ...あ、何か飲み物はどうですか?」
「そうですね...自分は紅茶を」
「...では、私も紅茶を」
「分かりました。紅茶を3つ淹れてきてくれ」
「分かりました」
「...そういえば私の自己紹介はしていませんでしたね」
「そう、ですね...私は大丈夫ですが彼の方は...」
「...お願いします。まだ若輩者ですから...」
「分かりました。
...私はミハイル・ヴィッサリオノヴィチ・スクリャノフ、と申します。現在私は評議会副議長という肩書きでクレムリンの方に勤めております。
...因みに、年齢は今年で26です」
精神年齢はそれ以上だが...
...こっちに来てもう4年、か。長いようで短かったな...
「...評議会副議長、ですか?」
「はい」
「...成程ですね」
「...ちゃんと分かってる?同志スクリャノフはこのソビエト連邦の重要人物で、五本の指に入るのよ?」
「...えぇ?!」
「ふむ...知らないで私に接触したのかい?」
「は、はい。ゴーリキー講話会議の議長を務められていましたから上の方だとは分かってはいましたが...流石にそこまでとは...」
「はぁ...イギリスの局長ともあろう人がこれじゃあ...本当に呆れるわ...」
本当に、その通りだ...
「ぐぅ...正論過ぎて何も言えない...」
「もしかしてジェームズ君は結構新任なのかい?」
「...実は2週間前に着任したばかりでして」
「成程...」
「相変わらず、大英帝国も酷いことするわねぇ...」
コンコン!
「良いぞ」
「失礼します」
ガチャ...
...ん?この声は...
「お疲れ様、あなた」
「あ、あぁ。...というかいきなりどうしたんだ?エカチェリーナ」
...そう、エカチェリーナが紅茶を運んできたのだ。
「何も無いわよ?ただ今日も遅くまで話す可能性があるって聞いたから会いに来ただけよ」
「そ、そうか...」
紅茶を置いてくれた...
...最近あまり話せてないからか少々強引になってきてる気がする。
「貴女があの...私はジョージア・カリーニンと言います。クレムリンの癒し担当と聞いています」
「そ、そうよ?私がクレムリンの皆さんを癒してるもの」
「...取り敢えずエカチェリーナ?今日は一緒に寝てやるから...今は話中だ、別のところに行っておいてくれ」
「うっ...わ、分かったわ...じゃあまた後で...」
「ああ」
ギィー...
「......ばか」
パタン...
「...流石にあの話の終え方は...」
「...ああでもしないとずっとここに居座っていた可能性があった。辛かったが...仕方無いだろう」
「......」
...本当にすまない、エカチェリーナ。
「...じゃあ本題に戻ろうか。まず説明からお願いしたい」
「...分かりました。」
ユダヤ教が出来てから300年頃、ユダヤ人は2つの派閥に別れていました。
それが大審院派と聖典派です。
この大審院派が現在のフリーメイソン、聖典派が現在の私たち、ユダヤ人協会と認識して頂ければ幸いです。
...それで、何故分かれたか、というのはキリスト教のカトリックとプロテスタントを思い浮かべて頂ければ、と思います。
途中までは何とか均衡を保っていたのですが...1400年頃、大審院派の者の多くが権力者の方に身を寄せていき、数多くの植民地経営による植民地政策で豊かになっていったのです。
...その辺りからですね。我々を大審院派が弾圧し始めたのは。
我々聖典派も抵抗はしたのですがここに至っては仕方がない、とフリーメイソンから分かれ、ユダヤ人協会を設立しました。
...我々ユダヤ人協会は大審院派に対抗すべく大審院派、つまりフリーメイソンに敵対している国、地域に資本を投入して、何とか対抗してきたのです。
「...相当の争いがあったようですね」
「はい...因みに、日露戦争で多くの戦時国債を買ったのは我がロシア支局の資本家達です」
...ここでこの話をするというのは...まさか元日本人とバレているのか...?
「確かロシア革命のリーダーもユダヤ人でしたね」
「はい。あの時は世界中の仲間が手伝ってくれました。ユダヤ人の自由のために」
「...それが、今圧迫されてたまらない、と」
「っ...流石ですね。その通りです、同志スクリャノフ」
私は一度姿勢を正した。
「...貴殿方が仰りたいことは分かりました」
「!!...では」
私は敢えて、手を出して制止した。
「1つ、質問があります」
「...何でしょうか」
「ただ自由にするだけで、良いのですか?」
「...と、言うと?」
「...私は今大日本帝国と共に極東の地にですがユダヤ人の国を作ろうと考えているのです」
「「っ...!!」」
「それは...本当ですか...?」
「はい。...聖地からは外れる事になりますが貴殿方の悲願を叶えさせてあげたいとは考えているのです」
「...それは...」
「勿論ロシア系ユダヤ人も協会側であれば自由にします」
「...イギリス側は...」
「...一応独立国ですからね。イギリス、アメリカ、イタリア以外なら我々ソビエト連邦が圧力を掛ければ元々占領地ですから可能かと思いますが...」
「...そう、ですか...」
「...一応陛下に謁見できるか問い合わせましょうか」
「っ...!...良いのですか?」
「はい。一応独立国とはいえ一度我々ソビエト連邦に負けたのです。ある程度は通ると思います」
ただ、相手は国王陛下だ。私のような血で真っ赤に汚れた私と謁見させて頂けるか
...
それにその血の中にはイギリス人の血も...
「...まぁ、出来る限り手は尽くします」
「有難う御座います...」
「はい。...そういえばユダヤ人協会のトップは...」
「あぁ...それなら...」
「...恐らく夢の世界の隣の地下に...」
「...そういえばこの情報もそこから来た、という報告でしたね。今すぐ釈放させましょう」
「「有難う御座います」」
「...では今日は一度お帰り頂いてもよろしいでしょうか、私も少々忙しいので...この事は必ず上に上げておきます」
私は立ち上がり、手を出した。
「分かりました」
「よろしくお願いしますね?」
そしてジェームズとジョージアと握手した。
「あ、一応護衛の為、KGB職員を付けておきます。...それでは」
「「はい」」
...さて、夏休み期間中に改訂します。
何故か?...私の知識(社会常識)不足です。
エリザベス女王、何故女王になっておられるのですか?
1942年はまだジョージ6世の時代ですよ?
...はい、私の責任です。
夏休み、改訂いたしますのでご注意下さい。
...最近今年中に終わるか怪しく感じてきた。