某外務大臣
1942年、1月19日、午前6時21分
ゴーリキー近郊、外地特別諜報部(ZSIR)ゴーリキー中央支部、中央司令室
「状況の報告を...」
「はい」
「ペチュコフ」
「現在我がゴーリキー支部のKGB隊員が武装解除の指揮を行っております」
「...抵抗した者は?」
「今のところ居ません」
「...そうか。ボルマン、世界情勢は?」
「西欧諸国と西ウクライナが独立宣言を行いました。我々には何もしないようです」
「...何もしない、というところが一番安心だな。何かしてくると思ったが...」
「幾らボロボロとはいっても未だ世界最大の陸軍国です。そう簡単には手出し出来ないでしょう」
「それなら良いのだが...」
「また、ドイツ軍と大日本帝国軍は丁重にお引き取り頂きました」
「...それが一番の不安な点だったが、安心したよ。...これで、心置き無く改革が出来る」
「改革、ですか?」
「ああ、ペレストロイカ、だ」
「!!ペレストロイカ、ですか」
「ああ。さ、クレムリンに向かおう」
・・・・・・
同年同日、午前7時38分
モスクワ市内、クレムリン、書記長執務室
「...ベリヤ、国内の状況は?」
「大丈夫です。全て鎮圧し終えた、という伝達を国民に伝えたので比較的落ち着いています」
「...という事は国内はほぼ安定した、と考えて良いな?」
「取り敢えず一応は、ですね。これから少々再建が必要ですが」
「...同志スクリャノフはどうしてる?」
「現在クレムリンに向かっています」
「良かった...」
「相当委員が消えましたからね...」
「ああ...財務に軍事、鉄道...三委員も消えたのは正直痛い...」
「...では人事整理をしておきます」
「ああ、よろしく頼む」
ガチャ...パタン...
「...国家への求心力が消えていなければ史実のゴルバチョフにはならない...求心力がある内にペレストロイカを始動させなければ...」
「「この国が終わる...」」
「その為には終戦会議を終わらせなければ、ですね」
「おお、モロトフ。お疲れ様だ。どうだった?」
「裏工作は成功しました」
「良くやった。何処でやるんだ?」
「ゴーリキー、だそうです」
「...成程。彼処は未だ実質同志スクリャノフの統治下、だからな。分かった、承諾しよう。ところで議長は?」
「分かるでしょう?」
「...ああ、同志スクリャノフだ」
「では、私は準備を始めます」
「よろしく頼むよ」
さ、頑張るとしようか。
・・・・・・
同年同日、午後2時19分
同場所
コンコン!
「誰だ?」
「スクリャノフです、同志スターリン」
「おお!...良く生きていた。入ってきたまえ」
ガチャ...
「お久し振りです」
「ああ、久し振りだな。どうだ?体の方は」
「同志スターリンの方こそ」
「「...あはっはっはっは!」」
「...さて、国内状況は比較的安定している」
「良かったです。離反する事も無く、今のところ国家への求心力が落ちていない」
「ああ。...取り敢えず国内インフラを...」
「そこなら大丈夫です。
私が特別措置でアルフレッド・フォン・ヴァルジャンを鉄道大臣に昇格させ、再建命令を出させました。
鉄道だけなら被害が少ないので全工程含め今月には終了を予定しております」
「鉄道は我が国にとって生命線だからな、良くやった」
「...で、瓦礫の排除ですか...」
「ソ連軍がするように命令を出そう」
「!!...良いのですか?」
「今のソ連軍なら、救出もやってくれるだろう」
「有難うございます。まぁ破壊された場所は...モスクワとゴーリキー程度ですから直ぐ復活すると思います」
「まぁそうでなくてはな。特にゴーリキーは...」
「...?何故ゴーリキーが?」
「...国際会議の開会都市にして議長が同志スクリャノフだ。心して拝命したまえ」
「...えぇ?!」
「嫌かね?モロトフによると大日本帝国、アメリカ、イギリス、ドイツ、西ウクライナ等の大統領、首相、総統の指名だ」
「...うわぁ...分かりました、拝命いたします。取り敢えず国内のインフラ、食料問題を優先的に解決して、そこから財務からのお金の放出を行いましょう」
「分かった。では、忙しいがまたゴーリキーに向かいたまえ」
「分かりました、では...」
「...頑張りたまえ」
・・・・・・
同年同日同時間
クレムリン、書記長執務室前廊下
「...確実に我が国に負担を掛けてくるだろう...これを跳ね返すには...ああ、某フランスの外務大臣のやった事を同志モロトフにしてもらおうか」
「何ですか、同志スクリャノフ」
「?!...お、驚かせないで下さい...」
「ああ、すいません。それで、妙案、とは...?」
「...実は...」
「...ふむふむ...え?!」
「実際これでフランスは上手く逃げた実績があるんですよ。...多分同志ならば...」
「しかし...」
「お願いします。我らの祖国の為です」
「......分かりました。やってはみます。が、期待はあまり...」
「私が議長です。出来る限り援護はやってみせます」
「...分かりました。ではその方向性で」
「はい、よろしくお願いします」
「それでは」
コツンコツンコツンコツン...
「...はぁ、またゴーリキー、か...仕方無い、車内でペレストロイカ案を考えておこう...」