親近感
ここは天国。
背の高い男と太った男が、今まさに、頭を悩ましている以外は、実に平和なところである。
「どこかで、お会いしませんでしたか?」背の高い男が呟く。「なんだか、妙に親しみを感じるもので……私の勘違いでしょうか?」
太った男は首を横に振り、こう答えた。「勘違いなものですか、というのも実は、私もそう感じるのです。こんな風に、あなたの隣に立っていると、こう……しっくりくるというか、落ち着くというか……」
「お話しましょう、時間はたっぷりありますから。きっと、思い出しますよね」どちらともなくそう呟くと、二人はなごやかな時間を楽しんだ。
一方、地上では、背の高い男の奥さんが、お墓に手を合わせていた。
奥さんが花を手向け、好物を供えて帰ると、入れ違いで、太った男の娘がお墓参りにやってきた。背の高い男の、ちょうど隣のお墓に手を合わせる娘。
天国の二人が、ただお墓が隣どおしというだけで、奇妙な親近感に頭を悩ましているなんて、知るよしもないのだった。