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クリスマス・ソング

「楽譜、持って行こうか?」


楽器を手にして俺を見た彼女に一言伝えると、笑顔で「大丈夫」とだけ言ってドアのほうへ向かって行った。

その天使のような笑顔に見とれながら、彼女より少し先回りしてドアを開いた。


レストランのホールは普段よりすこし暗めで、二人がけのテーブルのみが様々な場所に窓からの夜景を見れるよう配置されていた。

テーブルの真ん中にはろうそくの火が揺らめき、恋人たちの気分を高める要素になっている。

何席分用意してあるのかわからないが、空いている席はなくどのテーブルでも恋人達が寄り添って良い感じだ。

このムードを盛り上げるためのクリスマス・ソングを演奏するのが二人の仕事。

窓から離れた壁側に白いグランドピアノと木製のアンティークな譜面台が置いてあるのが見える。

そこが二人の今日の舞台となる場所だ。


演奏は午後6時から1時間弱のプログラムを3回に分けて行うことになっている。

曲の選択は事務所の人がやってくれた。

ずっとクラシックのピアノを弾いていて、こういう流行曲を知らない俺でも知っているような、有名なクリスマス・ソングがならんでいる。

もともと、こういうの簡単なメロディーに伴奏を付けただけのものを演奏するのはつまらなく、俺の趣味ではないのだが、美月と一緒となれば話は別だ。

彼女とは大学で一緒に「ジャズ」の授業を選択している。

さすが数々の国際コンクールで優勝している新鋭ヴァイオリニストだけあってすごく勘がいい。

俺の気まぐれの即興に完全についてくるし、時には俺が彼女に振り回されることもある。

そのくらい音楽性からしてみれば対等の立場にいるから、二人で一緒にプロとしてリサイタルをすることも多くなった。

だから余計にこんなバイトをする必要もなかったのが…


「今日も楽しみましょうね」


そう言った美月の笑顔にまた見とれながら、控え室からグランドピアノのある場所へ移動し始めた。


ピアノの前に着き、美月と並んでお辞儀をする。

どんなステージであってもこれは礼儀であり、演奏する側からいったらこれから演奏するためのケジメでもある。

そして椅子に座り、ヴァイオリンの調弦のためのAの鍵盤をたたいた。


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