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クリスマス・イブは

「クリスマスソングって幸せなものばかりがヒットしているんじゃなくて、失恋のものも多いですよね」


これから演奏する曲の楽譜を見ながら柳瀬美月ヤナセ ミズキは言った。


「そうか? クリスマスイブと言えばカップルのためのイベントだろ。 失恋曲よりも幸せなほうがいいんじゃないの?」

「そう思うんですけどね。 でも、振られてそれでも未練があるって曲、結構あるんですよ」


そう言いながら、一緒に演奏をするピアノ科の先輩・高野泰明タカノ ヤスアキのほうを向いた。


今日はクリスマスイブ。 恋人達のためのイベント。

それなのに、大学で一番人気の高野先輩がこのクリスマスディナーのBGMの仕事に来ているということのほうが不思議でたまらない。

容姿端麗というと女の人を思い浮かべるけど、この言葉は先輩にぴったりだと思う。

180センチくらいの長身で、痩せすぎでもなく太ってもいない。

燕尾服を素敵に着こなす幅の広い肩。

モデルって言ってもいいくらいの容姿で、性格も良い。

やさしくて、よく気がついて、頭もいい。

大学内だけじゃなくそこらじゅうでモテるような人だ。

そしてピアノの腕は最高級、全日本はもちろん国際コンクールでも優勝している若手プロ・ピアニストの一人。

ピアノの貴公子だかなんだかの名前もついているような…

そんな先輩と一緒に高級レストランの「2人のためのクリスマスディナー」でクリスマスソングを弾くってこと自体、夢であるとしか思えない。


「ねぇ、美月ちゃんはなんで今日、バイトすることにしたの? たしかに今日のは、やってくれる人いないってマネージャーも大騒ぎしてたけど、美月ちゃんが引き受けることなかったんじゃないの?」

「えっ? あっ、でも、たまにはこういう楽しい曲を弾くのもいいかなぁって」

「でもさ、せっかくのクリスマス・イブなんだし、一緒に過ごしたい相手とか…」

「ん?」


勢い良くドアから入ってきたレストランの支配人の「そろそろお願いします」に会話をさえぎられ、私は楽器ケースからヴァイオリンを手に取った。




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