ファーストコンタクト
確かあん時は、散歩してたんだよな。
そしたら、こんな面倒事に巻き込まれて……まぁ、悪い気はしねぇけど。
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「んー、たまには散歩っつーのもなかなかに悪くねぇな」
手を上に伸ばし、背筋を伸ばして、大きく息を吸う、そして吐く。
森の新鮮な空気が肺に入ってきて体の中が全部洗われた気分だ。超爽快、リフレッシュ、って感じだな。
「しっかし、ここの森ってこんなに広かったんだなぁ」
何度か訪れた事はあったが知らなかったぜ。
でも、綺麗だが退屈なので、少々大人げないが腰に付けていた護身用の短刀で手近な枝を切る。
「そんで、人っ子一人いねぇな。子供ぐれぇ遊んでてもおかしくねぇのに」
と、呟いた矢先、視線の先に人影を見つけた。見る限り小さな体にサイズの合わないフード付きのローブを着ているみたいだな。
恰好だけでも結構怪しいんだが、さらに体がやけにふらふらと、右へ左へと揺れている。
「おいおい、アイツ大丈夫かぁ?」
つぶやいた瞬間に、体が右へ大きく傾きそのまま重力に従い、倒れた。
大丈夫じゃなかった……。
とりあえず、駆け寄り呼吸の確認をする。
水平に寝かせ、横から胸が上下しているかを確かめる。微かではあるが、しっかりとゆったりとしたペースで上下している。耳を澄ませれば微かに、息をしている音も聞こえる。
「とりあえず死んじゃいねぇみたいだな。目立った外傷は無し、だが、少し肌が青白いか?」
憶測としては、栄養不足か疲労がたまった結果のこの様だろう。
放っておいた所で俺に害や不利益は無いし、助けた所で利益がある訳じゃないが、ここでこのまま死なれても寝覚めが悪い。
「ちっ、めんどくさいが第一発見者になっちまった訳だし、しゃーねー助けるか。おーい? ちっと体触るぞー?」
一応宣言してから背中に背負う。
予想していたよりもはるかに軽い重量に軽く驚きながら、家の帰路に着いた。