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エルフとの旅行記  作者: 乃那加 結羽
現在:『霧の村』
13/13

霧を体現した村

 さすがに視界が悪いか。『霧の村』、伊達に霧を名乗っちゃいないな。一寸先は闇、とかそんな次元じゃない。視界の全部が白く濁ってる、って言っても過言じゃない。こういう状況に慣れてる俺でさえこうなんだから、リリィはもっと見えて無いんだろうな。


「クレス……疲れたよ」


「宿屋までもう少しだから我慢しろ、どうしても無理だってんならおぶってやるから」


「ううん、さっき村の入り口までおぶってもらったしわがままは言わないよ」


「あぁ、そりゃあ助かるけど、無理だけはすんなよ」


「大丈夫……クレスの言うとおりもうすぐならね」


 少し不満の混じった声。霧のせいで、すぐ隣を歩くコイツの顔もよく見えないけど、絶対にジトーっとした目で不満たらたらの表情してんだろうな。大体、土地勘も無いのにこんな視界の悪い村で宿探すのが無理なんだよ。その内着くか、と思っても今がどこかすらわかんねぇしな。

 まぁ、根気よく探そう。



● ○ ●



「ねぇ……まだなの?」


「いや、さっきの案内板が正しければ、ここ……なんだが……」


 クレスの指差した先には綺麗とは言えない、よく言ってオンボロ、悪く言って廃屋。

そんな宿。


「ぼろいなぁ。リリィ、大丈夫か? 嫌だったら一旦村出て、野宿でも良いんだぞ?」


「大丈夫だよ。クレスが一緒ならどこでも良いよ?」


 きゅっとクレスの服をつまんでみる。あざとい……かな?

でも、ちょっとクレスに甘えてるみたいでいいなぁこれ。これからも定期的にやろう。


「ありがとな。まぁ、今日はここでいいか」


 そう言うと私の手を引いて、宿に入ろうとするクレス。


「あれ? クレス、聞きこみはしないの?」


「あぁ、本当はしておきたいけど、こんだけ視界が悪くちゃ人が見当たらないからな。それに、この村はあんまり良いうわさを聞かないしな」


「そうなの?」


「まず視界が悪い、人が少ない、周りが森や湖、人が何人かいなくなったっていくらでも言い訳が出来る。だから、そういう輩が多いっつー話だ。ほら、朝だってあのクソ女がいただろ?」


 露骨に嫌そうな顔をするクレス。

 朝、私たちに絡んで、というより罠に掛かった所を捕獲されて、最終的に叩きのめされたワーキャットのお姉さん。そういえば、クレスは正体不明の誘拐犯って言ってた気がする。そう言う予測に基づいた発言だったんだ。


「んで、誘拐犯が多いって事は、当然その後ろに付いてる商売人がいる。一人で誘拐はしてもそれを売る所まではまず、一人じゃやらないからな」


「ふむふむ」


「総合的に考えて、住民が少ない村にそんだけ悪人がいるって言う要素があったらこの村に善人は少ないだろうから、あんまり歩き回らないですぐに宿に入って部屋にこもる。それが危険と面倒事を避ける一番手っ取り早い方法だ」


 一応、私の事を考えてそう言う結論に至ってるのかな? そうだとしたら……。

 カァァっと、顔が真っ赤になるのが自分でも面白いくらいに分かる。そんな顔をクレスに見られたく無くて、なんだかすごく気恥かしくて、フードを深く被って俯く。


「おい、急に俯いてどうした? 具合悪いのか?」


「大丈夫だからっ! はやく入ろう?」


 クレスの背中を押しながら急かす。


「そんな急かさなくったって入るよ。急にどうしたんだ?」


「いいからいいから、ほらはやく!」


 とにかく顔を見られたく無くて、ぐっと強く背中を押す。クレスの体は全然動かないけどね。

 私の力なんてたかが知れてるから、押したって無駄なことぐらい分かってる。押す事が目的じゃなくて、クレスの死角の背中に回る事が目的だしこれでいい。


「こんなに急かすなんて、そんなに疲れてんのか?」


 また心配そうな声音で、私の様子を窺うクレス。

 大切にしてくれてるのが、分かるようなそんな声。さっきから火照りっぱなしの顔が熱い。


「あぁー……うん、そう、疲れてるの! だから早く休みたいの!」


「はいはい、じゃあとっとと部屋取って休むか」


「うんうん、それがいいよ」


 なんとかばれずに済んだかな? クレスは鋭い時は頭の中を覗いてるんじゃないかって言うぐらいこっちの思ってくる事を当ててくるけど、鈍い時は本当に何にも気付かないからね。

 あれ、でも、部屋入ったら今日はずっと二人で部屋にこもりきり? …………どーしよう、平然としていられる自信が無いよ。ま、まぁなんとかなるよね!

さて、ボロボロの宿、悪人だらけの町、

大体何が起きるかは分かりますよねー

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