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Rhyme:5

 今日もこれといって変わり栄えのしない一日だと思う。強いて言うなら、一之瀬先生(性格悪し)の陰謀で、三日連続で日直をさせられたことくらい。

もち、復習してやる事にする。教室のドアを開ける時は、頭上に気をつけな!

「あぁ〜、俺って可哀相な子だと思う。うん、間違いない。」

日直三日目ともなると、流石に寝不足になってくる。いつもより一時間早く起きないといけず、その上あの性悪教師は、自分の教科である国語(現代文と古文)のレポートを山ほど出しやがった。これはもう、俺への嫌がらせと言わず何と言おうかという感じである。

「あらあら、お疲れのようね風間くん。」

机に突っ伏していた俺に、腕を組み微笑みながら伊集院は近づいてきた。

「あぁ、かもね。」

「それは大変ね。何かあったの?病気?失恋?それとも…。」

「……。」

適当に返した俺の台詞に、一々反応しながら本当か嘘か分からないような表情を浮かべている。

「そんなにお疲れなら、明日どこかに行きましょうか!」

「…は?」

それは疲れていると言っている人間に対して言う台詞ではないのではないのだろうか?(強調)

今日は金曜で、週休二日制の現高校教育制度に乗っ取って、明日は休みである。当然、ろくに部活もやってない高校生は、日がな一日まったりと過ごす日である。

それは俺にもおもいっきり当てはまる法則であり、疲れている現在では、三十%増しで、まったりする事が決定している。

「いや、意味わかんないし。」

俺のその反応は当然だと確信できる。

「だから、明日皆でどこか行こうって事。気晴らしをすれば、風間くんの陰険な雰囲気も吹き飛ぶわよ。もう三枝さんに声かけてあるし、貴方も来るって言ってあるから。」

「……。」

(こ、こいつは…。つーか決定事項かよ。しかも妙に根回しがいいし。)

伊集院という男は、勉強の面で頭がいいだけだ無く、生きていく上でもかなり頭がキレる男である。ここまで言うということは、その他の事にも準備万端なのだろう。俺がどんな返しをしても、巧く丸め込まれること間違いなし。話術、交渉術もお手の物だそうだ。

「明日十時に駅前のロータリーに集合ね。JーWingにでも行きましょ。」

「拒否権無しかよ。はぁ〜、分かった分かった。十時な。」

こうなってしまったら仕方ない。明日はまったりを取り消して、こいつに付き合うことになりそうだ。

ちなみにこいつが今言ったJ−Wingとは、隣町にできた複合型巨大ショッピングモールのことで、中心のJ−Interから左右にRigthーWing、LeftーWingからなる建物で、映画館から専門店まで、幅広い店があり、そのJ−Wingを中心に一帯が繁華街として生まれ変わった街をJ−Townと呼ばれている。

休日ともなれば、老若男女関わらず多くの人であふれるスポットである。

明日は大変そうである。


 これでもかってくらいの晴天。起きた瞬間、暑いのが決定しそうな土曜日。

俺はそんな空の下を走っている。目的地は最寄の駅。まだ春の名残があるとは言へ、これだけ走ると流石に汗も掻くものである。

何で朝っぱらから走っているかというと、何のことは無い待ち合わせに遅れているからである。何故遅れているかというと、途中で妊婦を助けたとか、誘拐にあったとか、向かい風が強いとか、そんな真っ当な?理由では無く、単なる寝坊+凛を撒くための時間のダブルパンチで遅れているのだ。

只今十時三十分。三十分も遅刻である。流石に不味いと思う。

そんな訳で走っている俺。目の前の橋を渡ると駅までは一本道だ。

俺が最初に目に付いたのは、やはりと言うか伊集院だった。こっちに気付いた伊集院はおもいっきり大きく手を振っている。間違いなく振られるこっちが恥ずかしい。

一気にダッシュをかけ、一刻も早くそこに辿り着く必要がありそうだ。

「はぁはぁはぁ、すまん遅れた。」

「ほんとよ。まぁ、予想はしてたけどね。」

膝に手をつき、息を整えるの俺に近づきながらそう言った伊集院は、黒の皮パンとジャケットに白いシャツ、胸に光る十字架のネックレスのワンポイントという、こいつらしい格好をしていた。

「いや、マジでごめん。これでも急いで来たんだって。」

顔を上げた俺に伊集院の後ろにいた三枝さんが笑いながら言った。

「おはよ、風間くん。気にしなくていいよ。」

そう言う彼女は、春らしい黄緑のワンピースに白いカーディガンを羽織り、同じ色の小さな手さげを持っていた。彼女の雰囲気にぴったりのコーディネートだと思う。

「おはよ〜。いや、朝から元気だね風間は。」

そう言ったのは、三枝さんの隣にいるクラスメートの野中葵という少女で、三枝さんの親友である。恐らく三枝さんに誘われたのだろう。

彼女はその元気で活発なキャラクター道理の白いパンツとジージャン、その中に黄色のシャツを着ていた。

「あぁ、おはよう。ごめん二人とも。結構待ったよね。」

あまりファッションに詳しくない俺はジーパンにTシャツの上に薄手のジャケットという格好をしている。

「ううん大丈夫、待ってないよ。」

笑顔でそう言ってくれる三枝さんと、

「ほんとよ、三十分も待たせちゃってさ。舞みたいに恋する女の子じゃなきゃ帰ってるよ。」

いい感じにブーたれる野中さん。

「ちょ、葵ちゃん!何言ってるのよ!も〜!!」

「あはは〜、おっと失礼〜。」

何故かポカポカと三枝さんが野中さんを叩き、野中さんは踊るように逃げている。

こんな対照的な二人が親友とは、まったく世の中まだまだ不思議に満ちている。

「はいはい、それじゃそろった事だし行きましょうか。」

皆を急かすように言った伊集院を先頭に、駅へと入った俺達が切符を買い終えると、ちょうど電車が入ってきた。走ってホームに行く俺達。こけそうになる三枝さんを助けながら、俺は又しても走るはめになってしまった。


J−Wingに着いた俺達を待っていたのは、休日ならでわの人ごみだった。予想していたとはいへ、実際目の当たりにすると驚いてしまうものである。

目の前をカップルやら、家族連れが途切れることなく行き来している。

「いや〜、凄い人だね。考えることは皆同じか。」

周りをキョロキョロしながら野中さんが一人語ちた。

その意見については俺も同感だった。決して大きくはない俺達の町や近隣の町には、大きな店や娯楽施設が無い。そんな町に住み人間が近くにこんなスポットができたとなると、行かないわけが無い。休日ともなると、なおさらだと思う。

「すごいね〜、こんなに人がいっぱいいるの久しぶりに見た気がする。」

呆然といった感じでぼ〜っとしている三枝さんは、俺の服の袖を微妙に握りながらそう言った。

「これは逸れないように気を付けないといけないわね。風間くん、私と手、繋ぎましょうか?」

俺の隣にいた伊集院が横目で見ながら言ってきた。微妙にニヤけている口元が気に入らない。

しかも、了承したら本当にやりかねないから怖い。

「お前、バカだろ。何が悲しくて男同士手を繋がにゃならんのだ。」

ここはハッキリとお断りしておく。

「あら残念。私は構わないのに。そうね、男同士じゃなきゃいいなら、三枝さんと繋ぐとか。」

「えっ!ちょ、い、伊集院くん、な、無い言ってんの!」

そんな伊集院の台詞を聞いた三枝さんは、俺の袖を放し、慌てて俺から遠ざかり、野中さんの陰に隠れた。正直、そこまで嫌がらなくてもいいと思う。

「あら、いいんじゃない?それなら逸れる心配もないし、一石二鳥じゃない。本当は舞もそうしたいんじゃないの?」

背中に隠れた三枝さんに頭を向けながら、野中さんがおどけて言った。いつも笑顔の野中さんだが、今の顔は人をからかう時の表情だと思う。でも、何が一石二鳥なのだろうか。

結局、気をつけるということで事なきを得て、J−Wingへと歩いていった。


人で溢れたJ−Wing内を四人で歩いた。

俺はこれといって買おうと思うものが無かったので、特に目的の店は無い。伊集院も同じ様で、俺と歩調を合わせて隣を歩いている。

ただ、女の子はそうではないらしい。あっちへフラフラこっちへフラフラ…。

目的の物もあるらしいのだが、今の様子だとまだその目的は果たせてないらしい。

「あっ!見て見て葵ちゃん。これカワイイ〜。」

またしても左側の店にあるアクセサリーに目を留めた三枝さんが野中さんを引っ張って行く。野中さんも嬉しそうに着いていっている。

「ふふ、どう?女の子と一緒にショッピングするの。」

何となくそんな二人を見ていた俺に、伊集院が話しかけてきた。

「いや、どうって聞かれても。元気だな〜と。」

実際これといって思うところが無かった俺は、適当に相槌を打っておいた。特に疲れてもいないし、面倒くさいとも思わなかった。第一、凛に付き合って買い物くらい行くので、女の子との買い物が珍しい訳でもない。

「そうじゃなくて。…はぁ〜、学校の姿と違ってどうとか、一緒にいて楽しいとか、そういうのよ。」

微妙に呆れたニュアンスを含みながら伊集院が言う。こいつは俺が何か言うたびに、そんな反応をしているような気がする。これって俺が悪いのだろうか。

「ねぇ、風間くんはどう思う?これ。」

気が付くと、三枝さんが一つのネックレスを手に目の前に立っていた。隣では野中さんがニヤニヤしながら見ている。そのネックレスはシンプルなデザインで、シルバーのリングにチェーンが通っている物だった。彼女らしい物だと思う。

「え、あぁ、かわいいと思うよ。三枝さんによく似合いそうだし。」

そう言うと、三枝さんは嬉しそうに頬を染め、微笑んだ。正直、かわいいと思った。

微妙に見とれていた俺の隣では、伊集院が口に手を当て微笑み、野中さんはガッツポーズうをしながら猫目で笑っていた。

微笑んでいた三枝さんは、少しモジモジしながら、

「そ、それでさ、これ実はペアでしか売ってないんだ。それで、もし良かったら、良かったらでいんだけど、片方貰ってくれないかな?」

と言った。後になるにつれ、尻すぼみになって行き、最後の方は聞き取りにくかったが、何とか理解できた。その後俯いてしまった彼女に、野中さんは「キャー!よく言った!」と抱きついている。

「えっ?それって二つで一つなんだよね?二つとも三枝さんがするんじゃないの?」

途端に、パシッ!と音をさせ、そう言った俺の頭を野中さんが叩いた。

「あんたね、分かって行ってんの?これは男物と女物のペアなの!だから片方は男がする用のデザインになってるの!それに、舞はあんたに貰って欲しい言ってるの。そのくらい分かりなさいよ。罰として、これはあんたが舞いにプレゼントしなさい!」

そう一気に捲くし立て、腰に手を当てて睨んでいる。

伊集院が隣で「まったく、これほどとは…。」と呟き、「えっ、い、いいよ〜。」と野中さんの肩に捕まる三枝さん。

「???」

よく分からないうちに俺がプレゼントすることになってしまった。ペアネックレス3000円を購入し、戻ってきた俺に野中さんは当然といった表情で腕を組み、伊集院は壁に寄りかかりながら微笑み、三枝さんは申し訳なさそうな表情で立っていた。

「ごめんね。こんなことになっちゃって。別に風間くんは欲しくなかったよね。」

そう言う三枝さんに、

「いや、俺こういうの持ってなくって、前から一つぐらい欲しいなって思ってたし。」

と言いつつ、片方のネックレスを渡す。

「うん、ありがと。ずーっと大切するね!」

ネックレスを抱きしめるように持ち、とびっきりの笑顔でそう言った三枝さんを見ていると、こっちも嬉しくなってくる。

早速ネックレスをする三枝さんを見ていると、伊集院が肘で突いてきて、「ほら、あなたも。」と言ってきた。

そう言われ、俺も着け終わると、三枝さんは恥ずかしそうに微笑んでいた。その笑顔を見ていると、優しい気持ちになっている自分がいるのが分かった。


お久です。

軽く日常などを。

次もこの続きの予定です。

そろそろ何か始まるかも?

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