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Rhyme:1

「はぁはぁはぁ・・・。」

月夜の闇を、一人の男が走っている。

「はぁはぁはぁ・・・。」

その表情には、疲れと同時にもう一つの感情が見て取れる。

それは、肉食動物の餌となる寸前に、餌となる動物が見せるそれ。

それは、絶対的な物に対峙した時に、万人が見せるそれ。


それは『恐怖』。


月明かりに照らされ、一心不乱に走るその様は、何かから逃げているとしか思えない。

男の様は、どこにでもいるような中年男性。スーツを着ているものの、ネクタイはしておらず、首のボタンも外している。

走り続ける男の前に、一つの人影が浮かび上がった。

繁華街から離れており、たいした光源のないこの路地にあってなお、希薄すぎる存在感を纏っているその人影は、唯そこに存在するだけで、周りの景色をも飲み込んでしまうような雰囲気を放っている。

「っひ!」

その人影に気づいた男は、崩れそうになる膝を何とか踏ん張り、その場で立ち止まった。

「・・・。」

何も発さないその人影を見た男の表情は、先ほどとは比べ物にならない恐怖の感情を貼り付けている。

それは、絶対的な『死』に対する感情。誰も抗うことの出来ない宿命に対する感情。

その人影の背後にある、絶対的な『死』に対する感情。

「ぁあ!くぁ!」

男は、振り向き一目散に来た道を引き返していく。

ただ必死に、生き延びるために、自分という存在をこの世から無くさないために、男は重い足を動かし続ける。

「はぁはぁ、くそ!」

その感情は『怒り』。

それは何に対した『怒り』なのか。

さっきの人影へのものなのか、その背後の絶対的な『死』に対してか、自分へか、それとも運命、神に対してのものなのか。

それとも、この世の全てに対してのものなのか。

ただ逃げ続ける男の表情からは、読み取ることは出来なかった。


再び目の前に人影が現れた時、男は今度こそ膝から崩れ落ち、恐怖に震え上がった。

先ほどと違い、月明かりによりその風貌が見て取ることが出来た。

その独特の雰囲気を持つ人影は、全体的にすらっとした体躯をしている。ただ、その雰囲気からはっきりとした年齢は分からないが、若い。二十代?いや、十代か?

メガネを掛けている顔は、整った顔立ちをしており、若者特有の繊細さが伺える。

しかし、その表情は何の感情も張り付いておらず、ただ目の前で震えている男を見下ろすだけだった。

「・・・・。」

閉ざされた口からは、何の言葉も発せられずただ硬く、そこに存在しているだけといった感じだった。

しかし、その雰囲気から、この者の背後には、絶対的な『死』が存在することは否が負う無しに感じ取ることが出来る。

「ぁあ、くぁ!」

恐怖に震えつつパニックになった男は、懐からナイフを取り出し、振り回し始めた。

そんな男を見ても、人影は何の感情も表さない。

「てめぇ!ふざけんじゃねーぞ!こんなとこで殺されてたまるか!」

ナイフを振り回し叫びながら、男は少しづつ後退していく。

その表情には、新たに『絶望』という感情が見て取れた。多くのことを経験してきた男でさえも、絶望せざるを得ないこの人影の雰囲気。並みの人間なら、耐えられるものではにだろう。

そんな男を見ながら、人影はメガネを外し、瞳を閉じたまま懐から少し変わった形をした刃物を取り出した。

それは、この人影にとって絶対的な力の象徴。『殺意』の具現にして、世界で最も美しい美術品。

取り出した刃物を構えるでもなく、瞳を閉じたまま男を見ている人影。

「はぁ、ひぃ、らぁ!」

男によって振り回されるナイフは、月明かりを反射させ美しい軌跡を残している。それは、男にこれから訪れる運命を暗示しているような、儚いものだった。

不意に人影が、始めて感情と呼べるものを浮かべたように見えた。それは『悲しみ』なのか、『哀れみ』なのか、判断出来なかった。

人影は、ゆっくりと瞳を開いていった。それは男に対する殺意の意思表示なのか、最後の思いやりなのか・・・。

「おら!来るんじゃねぇ!殺してやる!」

その余りある『恐怖』『絶望』のためか、男は自分で何を言っているか、何をしているのか分かっていなかったのだろう。しかし、男にとってはそれはこの場で唯一の救いだったのかもしれない。

それが男の発した最後の言葉だった。そして、男が最後に目にして物は、闇に浮かぶ黄金に輝く双眼だった。

その場に残ったのは、物言わぬ肉隗。そして一人、物言わぬ人影。

ただ、その人影ははっきりと泣いていた。

涙を流さず、声を上げず、泣くことが許されなくても、人影は泣いていた。

「・・・・・ごめん。」

それが、この場で最後に残った、意味のあるものだった。


どうも。

変な文章でしょうが、我慢してやってください。

まだ、序章なんでその辺は・・・。

次は普通にいくかな・・・?

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