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僕の……天使

「ウフフフ……龍太郎様、惚れ直しました? 口が半開きになってますよ」

純白のウエディングドレスを纏って僕の前に現れた海を見ていた僕を見て、久米さんはそう言って笑った。ふわふわとしたレースのフリルに包まれた彼女はまるで天使のようだった。

「あ……」

僕は慌てて口を閉じると、海から目線を外した。

「龍太郎、ちょっと…子供っぽいよね」

海はそう言うとはにかんで笑った。

「ううん、そんな事ないよ。とっても素敵だよ」

僕は彼女にそう言って微笑み返した。

「スイマセン、夏海様はもっとすっきりしたシャープなデザインがお好みだって解ってるんですけど、こういうデザインのほうがお腹が目立たないんですよね。

にしても、夏海様って天然の縦ロールをお持ちだし、まるでお姫様みたいなんですもん。で、ついついコーディネートの方も甘めのテイストにしちゃいがちなのかもしれませんです」

久米さんがドレスの細部のチェックをしながらそう言った。

「この格好、本当に素敵だよ。まるで天使みたいだ。何となく誰にも見せたくないなって思ったよ」

それを受けて僕も見たままを言っただけだった。

「うわぁ、ご馳走様です。もう、当てられちゃうな。そっか、龍太郎様って実はやきもち焼きですもんね」

しかし、久米さんにやきもち焼きだなんて言われて驚いた。

「だって、夏海様に子供ができたことをケンカしていた龍太郎様に素直に言えなくて、梁原さんでしたっけ……に相談してたのを誤解して怒鳴っちゃったくらいなんでしょ? 聞きましたよぉ、龍太郎様のプロポーズまでのけ・い・い」

ヤキモチ焼きだと言われて驚いた顔をした僕に、久米さんはウインクをして答えた。

「私も君なしの人生なんかあり得ないて言われてみたいですよ」

「海、そんな事まで言っちゃったの?」

それを聞いて僕は苦笑した。ただ、女性は結婚までの経緯を根掘り葉掘り聞かれる事は多いから、海はあの日、僕が言ったことを逐一しっかり覚えていて、辻褄の合う話に組み立てて回りに言わせられているに過ぎないのだろう。

「ごめんね」

「良いよ、ウソじゃないんだし」

そして、その僕を気遣う仕草も、それに対する僕の受け答えも、結婚を間近に控えているというフィルターにかかれば、とんでもなく甘い惚気話にすり替わる。

「はぁ……私、ホントにお邪魔ですね。でも、何か聞きましたけど、梁原さんって人行方不明なんですってね」

久米さんがいたたまれないと言った表情でため息をつく。

「ええ……」

しかし、僕が久米さんがそう言った時の海のなんとも言えない悲しい表情を見逃さなかった。

彼女は……たぶん……

そして、どんな気持ちでこの馴れ初め話をしたのだろうか。


「龍太郎まで、あんな事言うんだもの。私になんかホントは白を着る資格もないのに。堕天使にさえなれないわ、絶対に」

久米さんが席を外した時、海はぽつりと僕にそう言った。

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