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謝罪

「妙子さん、わざわざすいません」

 日曜日の朝、僕は妙子さんを迎えにあの人の家に行った。

「龍太郎さん、今日だけはそれ、お止めください。あちらは私どもの事情はご存知ないのでしょう?」

いつもどおり、彼女を呼んだ僕は、彼女に笑ってそう窘められた。

「あ、海……彼女にはとうに話してありますよ。でもご両親には何も。でも、妙、いやお義母様もその言葉遣いは変ですよ。息子の僕に敬語だなんて」

「お互い様って事かしらね。でも、私にできますかしら」

「できなくてもやっていただかないと困るんです」

「そうですね、それで龍太郎さんの一生が変わってしまうかもしれませんものね。じゃぁ、本当に私頑張らないといけませんね。じゃぁ、龍太郎さん、案内してくだ……くれますか?」

妙子さんは、はにかみながらそう言うと僕の背中を押した。


 そして、妙子さんは本当に一生懸命僕のために海の両親にとりなして謝罪し、僕たちの結婚を進めようと頑張ってくれた。それで、僕ではどうにもできなかった彼女のお父さんの態度が軟化した。

「いいえ、ウチは娘が幸せになってくれる、それだけで良いんですよ。子供ができたからと言って、いきなりお宅のようなところに嫁にやるのは不安だと思われませんか」

「ごもっともです。でも、わたくしも同じ立場ですので、でき得る限りお嬢様が辛い立場に立たないようにさせていただきますわ」

「そこまで言っていただけるのなら……」

「ね、龍太郎さん、あなたも夏海さんを守らなきゃならないんですよ。お義父様によくお願いして」

妙子さんはそう言うと僕の頭を押さえつけて下げさせた。彼女の手の温もりが僕の頭から心に伝わってきて、鼻の奥が痛むのを感じた。


 その時、僕は心の中でこんな事を思っていた。

――母様ごめんなさい、僕は一瞬だけど僕が妙子さんの本当の子供だったら良かったのにと思ってしまいました。

母様だって、あの人が妙子さんを選ばなければ、僕の側にいて僕のために同じことをしてくれたでしょうに……と――

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