薪ストーブ
高見は先日までとある会社の社長だった。会社を息子に託し、これからの余生を過ごそうと思い、軽井沢に別荘を購入した。それは中心部から少し外れた所にある。以前からここに住みたいと思っていた。そして、先日ようやく購入した。
高見はその別荘の前にやって来た。とても素晴らしい外観だ。こんな所で余生を送るんだと思うと、気持ちが高ぶってくる。これからの日々は素晴らしいものになるぞと思っていた。
「着いた!」
高見は中に入った。すでに引っ越し業者は荷物を指定された位置に置き、後は高見が入るだけになっていた。
「これか」
高見は大広間を見て、息をのんだ。大広間は大きくて、シャンデリアがある。とても素晴らしい。購入してよかったと思える。
「いい別荘だな」
高見は荷物を下ろし、リビングのソファにくつろいだ。高見は長旅で疲れていた。今日1日はできる限り休みたいな。
「ここに住みたかったんだ」
高見は以前から何度か軽井沢に行った事がある。大人気の避暑地で、家族と一緒に行った事がしばしばある。その旅、この別荘が気になっていた。社長を退任したら、これを購入して、ここで余生を過ごしたいと思っていた。
「いい所だなー」
と、高見はあるものが気になった。薪ストーブだ。家族が住んでいる家は、エアコンを使っている。薪ストーブのある家は、初めてだ。薪ストーブは、デザインが素晴らしい。
「この薪ストーブ、いい味出してるなー」
高見は思った。早く冬が来ないかな? 雪景色が美しそうだし、この薪ストーブを使ってみたいな。きっと楽しいだろうな。
「冬が楽しみだな」
と、高見は誰かの気配を感じた。ここには誰もいないはずなのに。どうしたんだろうか?
「あれっ!?」
高見は振り向いた。だが、誰もいない。
「誰もいないか・・・」
高見は首をかしげた。ここに誰かがいたような気がするんだけどな。気のせいか。
「誰かいたような感じがするんだけどな・・・。まぁいいか。ちょっと散歩してこよう」
高見は立ち上がった。周辺を散歩しようと思ったからだ。この辺りはリゾート地だ。きっといい出会いが待っているに違いない。高見は期待でいっぱいだった。
高見は周辺の道を歩いていた。この辺りには軽便鉄道が走っていて、軽井沢駅に隣接した新軽井沢から北軽井沢、嬬恋を経て草津温泉まで走っていたそうだが、半世紀以上前に廃止になったという。軽井沢駅に近くには、その軽便鉄道で使われていた電気機関車が保存されている。家族で行った時に、それを見た事がある。
「疲れたなー」
高見は社長としての日々で疲れていた。だが、それは会社のため、社会のためだ。とても大変だったけれど、とても有意義なものだった。
「あっ、どうも」
高見は振り向いた。そこには宝石を身に付けている女がいる。
「先日、あの別荘を買った高見さんですか?」
「はい」
それを聞いて、女は表情を変えた。どうしたんだろうか? そのマンションには何か秘密があるんだろうか? もしあるのなら、言ってほしいな。
「どうしたんですか?」
「いや、何でもないです」
だが、女は何も言おうとしない。果たして何だろう。
「ふーん・・・」
だが、これ以上何も聞かないようにしよう。これ以上聞いたら、どうなるかわからないから。
高見は家に帰ってきた。散歩している間に、晩ごはんの材料を買ってきた。
「帰ってきたと」
と、高見は何か違和感を感じた。家の中が暑いのだ。どうしたんだろうか? 外はそんなに暑くなかった。普通じゃない暑さだ。これは何だろう。
「ん? あっついな・・・」
高見はリビングにやって来た。すると、夏なのに薪ストーブがついている。ここに来て、全く使っていないのに。散歩に行く前は消えているのを確認したのに。
「どうして薪ストーブに火がついてんだろう」
と、高見は誰かの気配に気づいた。今さっきもそうだが、この別荘には、自分以外誰もいないのに、誰かの気配を感じる。一体なんだろう。幽霊だろうか?
「ん?」
高見は振り向いた。そこには火傷だらけの女がいる。それは、ゾンビだろうか? とても恐ろしい。
「だ、誰だ!」
女は高見の首を絞めた。高見は凍り付いた。ここに来て早々、こんな事になるなんて。
「やめろ!」
だが、女はやめようとしない。
「フフフ・・・」
「何をする!」
女は高見を薪ストーブに放り投げた。そして、ふたを閉めた。
「熱い! 熱い!」
高見は熱がっている。だが、女は全く気にしていない。まるで、高見を殺そうとしているようだ。
「ギャー―――――――――――!」
そして、高見は焼死した。
これは近くに住む女から聞いた話だが、かつてここに男女が暮らしていて、男女がけんかして、男が女を薪ストーブで焼き殺したという。それ以来、この別荘を購入した人は、薪ストーブで焼死しているという。




