第13話 ギルド内の噂
ギルドの広間は、いつも以上に賑わっていた。探索者たちは昼食を取りながら、昨日のCランクダンジョンでの戦いの話題に花を咲かせている。
「聞いたか? 亮って青年、あのダンジョンを一人で…」
「本当に普通の青年だったのに、どう考えてもありえない戦い方だった」
亮は人混みを避け、静かに受付のそばを通り過ぎる。彼の耳には、周囲の声が自然と入ってくる。噂は広がりつつあったが、まだ正体は誰にも知られていない。
一方、ギルド長室では桜庭が書類に目を通しながら考えていた。最近の亮の戦績、ダンジョンでの活躍、そして周囲探索者たちの反応。すべてが異常である。
「これは…確かに特別な存在だ」
桜庭は立ち上がり、静かに窓の外を見つめる。誰にも悟られぬよう、亮の行動を密かに監視する必要があると判断する。表向きは普通の青年として活動させつつ、潜在的な力を見極めるためだ。
その日の午後、亮はギルド内で依頼書を受け取る。BランクダンジョンやCランクの探索任務が複数提示されており、戦力の不足している探索者のサポートも求められていた。
「まだ、力を隠さないと…」
亮は小さく息を吐き、心の中で自分に言い聞かせる。ギルド内での噂は広がるが、表向きの行動は慎重に。力を使いすぎれば、日常も妹との生活も脅かされる。
廊下を歩く亮の横を、数人の探索者がささやきながら通り過ぎる。
「亮君って、本当に普通の青年なのかな…」
「いや、あの戦いは絶対に普通じゃない」
亮は軽く微笑み、視線を前方に向ける。噂がどれだけ広がろうとも、心の奥にある決意は変わらない。
「力を隠す…でも、必要なときには必ず守る」
桜庭が密かに監視することを決めたことで、亮の存在はさらに注目を集めることになる。しかし、現代での日常と探索者としての顔を両立させる彼の道は、まだ始まったばかりだった。




