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【1-6】問題児



「まさか今回の夜会の会場が王城だっただなんて...」


俺の隣でネラーネは驚きを隠そうともせずに呟いた。

エスコートのために繋いだ手も、少し震えている。

指先が冷たくて、余計に緊張しているのが分かった。


「ネラーネ嬢。俺たちは公爵家の一員だ。緊張しなくて大丈夫だよ。」


「ありがとうございます...!あと、その、ネラーネ嬢でなくて大丈夫ですよ。呼び捨てで構いません。」


彼女は俺の手をきゅっと握りながらそう言った。


「じゃあこれからはネラーネって呼ばせて「久しぶりだな。セシルディア。」


ネラーネとの距離が縮まったと少し喜んでいた俺の言葉を遮るように、後ろから声がした。

まさかこの声は.........。


「俺の大切にしていた剣を折り、王城を1年間出禁にされていたお前が、やっと戻ってきたと思えば、次はその敷地でイチャついているのか.......?」


ただならぬ気配とともに、ぐいっと肩を掴まれた。

振り返らなくても分かる。この乱暴な距離感は


――あいつだ。



◇◇◇



「公爵様の代理がお前?お前みたいなチビが俺の相手なのか?!」


父上が病に倒れ、療養する事になったため、俺は父上の代わりに第四王子の剣術の稽古役になった。


第四王子は俺と同い年で、当時は14歳だった。


父上は剣術の才能があり、昔は王国騎士団長をしていたそうだ。セシルディア公爵家に婿入りし、引退したと聞いたことがある。

そのため王家の剣術指南役になっていたのだ。

俺も父上に教わっていたため、剣はある程度出来る。

頑張れば教えられるだろう...そう思っていたのだが...。


「俺と1本勝負をしろ。俺が勝てばお前のことは認めない。俺が負けたら認めてやろう。」


第四王子はそういうと、俺に剣を1本寄越した。

彼も父上の稽古を受けていたのだ。きっとそれなりに強い。全力でやるしかないな、そう思い、剣を混じえた。



そして.........。




俺は呆気なく勝ってしまった。

しかもそれだけでなく、彼のお気に入りの剣を折ってしまったのだ。

その後、第四王子は泣き喚き、それどころか国王陛下に泣き縋り、少し大事になってしまった。収集がつかなくなってしまった結果、一応王城出禁という罰を与えたという体にしてくれと国王陛下にお願いされたのだ。



つまり、今俺の目の前にいるこの男は問題児。

甘やかされ育ったのか、わがままな上に世間知らず。

関わらない方が良いと本能が告げている。




「イチャついてなどいませんよ、第四王子殿下。夜会が初めてなので、緊張をほぐそうとしてるだけです。そろそろ緊張も解けてきたので私たちは会場に向かいますね。」


俺はそういうと、ネラーネの手を取り急いで会場に向かった。





.......が。




「公爵様は元気か?」

「いつ復職されるんだ?」

「そういえば、お前の名前は?」

「てかお前婚約者いたのか?」


俺がずっと無視しているにも関わらず、第四王子は俺たちの後ろに着いてきて、ずっと話しかけてくる。

...なんだんだ?


「夜会まであと1時間半あるんだ。今着いたら早すぎる。マナー違反だぞ。」


第三王子の呟きに、俺はピタリと足を止めた。

あと1時間半.....?


俺の知っている情報では夜会はあと30分で始まる。

しっかり招待状も確認したし、姉さんたちもこの時間に来ている。

なのに、この王子は1時間半後に始まると言ったのか...?


「第四王子殿下、夜会が始まるのは1時間半後だということは誰に聞いたのですか?」


「あ、やっと返事してくれた。えっと、最近新しく来た侍女が教えてくれたんだ。俺には招待状が来なくてさ...。けど彼女が教えてくれたから、こうして今日も参加出来そうなんだよ。」


彼は少し困ったように笑った。


口で聞いただけ...。ということは、嘘の情報でも流されたのか?でも、王族に対して嘘をつくということは、王族不敬罪。即死刑だ。たかが侍女がそんなことのために命を懸けたりしたいだろう。つまりこの嘘の情報を流すよう指示したのは王族の誰か...。


「第四王子殿下は、第一王子殿下やラーセルとは仲がいいのですか?」


「昨日3人で遊んだくらいには仲良しだ!」


...まぁそうだよな。

ラーセルから、聞き飽きるほど弟自慢を聞いたからな。じゃあ誰が何のために違う時間を教えたんだ...?


俺が考え込んでいると、ネラーネが俺の服の袖をくいと引っ張った。


「もうすぐで夜会が始まる時間です...。」


...あぁ、そうだった。もし第四王子が言っている時間か正しく、俺たちが間違えていたとしても、1時間早く着いてしまうだけだ。マナー違反ではあるが、ルール違反ではない。第四王子の知る時間が間違いで、それを信じた俺たちも一緒に遅刻するよりはマシだ。


「私たちは夜会の準備があるので、そろそろお暇しますね。ではまた会場で。」


俺はそういうと、ネラーネの手を引いてその場を去った。


第四王子は一体どうなるんだろうか...。






◇◇◇




「アル〜!おそい〜!」


会場に着いた途端アリーユ姉さんに捕まってしまった。


「あら、アルハイルにネラーネちゃんじゃない。2人とも正装似合ってるわ。」


アリーユ姉さんの隣にはアレイル姉さんも居た。

今日はアレイル姉さんの夜会参加の目的を探るために来たのに、どうして一緒にいるんだ...?


姉さんは2人とも社交界モードで、見た目もそれはそれは綺麗だ。

アレイル姉さんは黒と青のシックなマーメイドドレスに、髪を緩く結い、片側に流している。

それに対してアリーユ姉さんは淡い赤にピンクの薔薇の装飾の着いたドレスを纏い、金色の髪を綺麗に結い上げている。

姉さん2人は、社交界での人気がトップと聞いていたが、この姿を見たら納得だ。




少し話をした後、俺は姉さん2人に応接間に連れてこられた。




部屋に入ると、そこに待ち構えていたのは...


「初めまして。アルハイルくん。私は第一王子のアスレンだ。」


「やっほ〜アル久しぶり〜」


第一王子アスレンと第二王子ラーセルだった。


しっかりと人払いされた部屋に呼ばれたということは、何か重要な案件なのだろう。姉さん2人と、ネラーネも部屋を出るよう言われていた。


3人だけの応接室は少し空気が重かった。





「実は、アルハイルくんに協力してほしいことがあるんだ。第四王子であるカイルスのことなのだが...。」



第四王子?まさか、間違えた時間を教えられた事がこの2人の耳にも入って、その犯人を捕まえるのに協力しろ...とかだったりしないよな...。

面倒だから嫌だが...。




「実は今日、サプライズお誕生日会を開きたいんだ。」






.................は?




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