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高潔な女  作者: 慈架太子


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2章:属性魔法の伝授、マリアの覚醒と身体強化

それではマリアンヌ様 私の真似をしてください。「火」シゲルの手のひらから火玉が出た


「……『火』? 属性付与の第一歩が、初歩的な火炎魔術だと?」


マリアンヌは意外そうに眉を跳ね上げました。しかし、シゲルの手のひらで揺らめく火玉を見つめるその瞳は真剣そのものです。彼女は深く息を吐き、シゲルの動きを寸分違わずなぞるように、自らの白く細い手のひらを差し出しました。


「よろしい。貴方のやり方が『最短ルート』だと言うのなら、疑わずにやってみせよう。……マリア、集中なさい」


彼女は目を閉じ、自身の内側を巡る魔力の流れを意識します。165cmの全身を巡るエネルギーを、一点――右の手のひらへと収束させていく。


「これまでの私の魔力は、ただ鋭く、硬く、剣を強化するためだけの無色透明な力だった。それを……変質させる。熱を、輝きを、燃焼の理をイメージして……」


彼女の掌の上が、陽炎のように揺らめき始めました。 マリアンヌは、騎士として戦場を駆けてきた経験から「火」の恐ろしさも、その温かさも知っています。それを数式のように、魔力の振動として再現しようと試みたのです。


「……出ろ!!」


カッ、と彼女の手のひらから小さな火花が散り、次の瞬間、シゲルのものと同じような火玉が灯りました。


「おーっほっほ! どうだシゲル、見たか! 一度見た術理を再現することなど、このマリアンヌにとっては造作もないことよ!」


高圧的な笑みを浮かべつつも、その顔には少女のような喜びが混じっています。しかし、彼女はすぐに表情を引き締め、灯した火玉を凝視しました。


「だが、これがどう『聖属性』や『剣への付与』に繋がるのだ? ただ火を出すだけなら、そこらの魔導師の卵でもできること。貴方の言う『効率』の本質は、ここから先にあるのだろう?」


マリアンヌは、灯した火を絶やさぬよう集中を保ちながら、次の指示を待つようにシゲルを強く見据えました。



「水 風 土 光 闇 雷 重力」



「水、風、土、光、闇、雷、重力……」


マリアンヌはその単語を一つずつ、噛みしめるように繰り返しました。 シゲルの手のひらの上で、属性が万華鏡のように次々と切り替わっていく様を、彼女は瞬きも忘れて凝視しています。


「……正気か、シゲル? 属性というのは、一生をかけて一つ、あるいは二つを極めるものではないのか? それをこうも容易く、まるで着替えでもするかのように……」


彼女の常識が、再び音を立てて崩れ去っていきます。しかし、目の前で揺らめく「雷」の火花や、空間を歪ませる「重力」の波動は、紛れもない現実でした。


「……いいだろう。貴方がこれらすべてを自在に操って見せたというなら、このマリアンヌにできないはずがないわ!」


彼女は再び、深く腰を落としました。


「水は流転、風は加速、土は剛健、光は浄化、闇は隠匿、雷は貫通、そして重力は……制圧。すべての事象を魔力の変質によって再現する。つまり、剣技という『形』に、これら世界の『理』を上書きしろというのだな?」


マリアンヌの手のひらの上で、先ほどの「火」が震え始めました。 彼女は驚異的な集中力で、イメージを切り替えていきます。


「火から水へ……熱を奪い、円環の理へ! 次は風! 停滞を拒み、大気を切り裂け!」


彼女の手のひらで、火玉が水球に、そして小さな旋風へと姿を変えていきます。 165cmの身体から放たれる魔力が、シゲルの提示した「全属性」という過酷な要求に応えようと、激しく、かつ精密に振動し始めました。


「おーっほっほ! 愉快だわ、シゲル! これらすべてを剣に乗せることができたなら……私は、アンデッドどころか、この世のあらゆる『不可能』を斬り伏せることができるのではないかしら!」


額に一筋の汗を流しながらも、彼女はかつてない高揚感に包まれていました。


「さあ、次は……これらをどう『融合』させ、あるいは『選択』して剣に宿すのか。その、貴方の言う『最短ルート』の続きを見せなさい!」



マリアンヌ様 これで貴女様は8属性の魔法使いになりました。さらに付与術士です。


「……は? 8属性の、魔法使い……?」


マリアンヌは呆然と自らの両手を見つめました。 今しがた、シゲルの言葉に従ってイメージを切り替え、火、水、風、土、光、闇、雷、そして重力までもをその掌に発現させたばかり。


「……ま、待ちなさい、シゲル。貴方は今、何と言った? 私が、8属性の使い手だと? それに……付与術士エンチャンターだと!?」


彼女は信じられないといった様子で、165cmの身体を震わせました。 通常、魔術師が一生を捧げてようやく一属性を極めるのがこの世界の常識。複数の属性を操る者など、伝説に語られる賢者か、歴史に名を残す大魔導師くらいのもの。それを、森の中のわずか数分のやり取りで成し遂げたと告げられたのです。


「お、おーっほっほ! 冗談も休み休み言いなさいな! 私が、あの重苦しい理論を積み重ねた魔術師たちを追い抜き、さらに剣技に魔力を乗せる付与の才まであるというの!? ……いや、しかし……」


彼女は再び剣を引き抜き、その刀身に「光」の魔力を意識しました。 すると、先ほどまでの無色透明な力とは明らかに違う、清廉で力強い白銀の輝きが鋼を包み込んだのです。


「……宿った。本当に、私の剣に『理』が宿っている。これなら……ええ、これなら、あのアンデッドの核を、再生の暇も与えず浄化できるわ」


マリアンヌは剣を振り抜き、空を切りました。光の残光が夜闇を美しく切り裂きます。


「シゲル。貴方は……貴方は一体、私に何を教え込んだのだ。ただ真似をさせただけだというのに、私の内側にある魔力の回路が、まるで別の生き物のように組み替えられてしまった……」


彼女は驚愕を隠せぬまま、しかしその口元には、隠しきれない歓喜の笑みが浮んでいました。


「8属性……。そして剣技と魔法の融合。……ふふ、ふふふ。面白い、面白すぎるわ! これで私が伸び悩んでいた理由がはっきりした。私は、ただの剣士として完成されすぎていたのだわ。これからは、魔を断つ『付与騎士』として、世界の理を斬り伏せて差し上げようじゃない!」


彼女はシゲルに向き直り、今度は騎士としての敬意を込め、拳を胸に当てました。


「感謝するわ、シゲル。貴方の教え方は……その、少しばかり規格外すぎるけれど、このマリアンヌ、最高の結果で応えてみせるわよ。……次は、この8つの属性を実戦でどう『最適化』して使うべきか、教えてくれるのかしら?」



マリアンヌ様 速さと力も授けましょう 身体強化アクセル 筋肉強化マッスル



「アクセル……に、マッスル? 随分と直球な名前の術式ね。だが……」


マリアンヌがその言葉を口にした瞬間、彼女の165cmの全身を、内側から弾けるような衝撃が駆け抜けました。


「なっ……何、これ……!?」


視界が、思考が、恐ろしいほどの速さで研ぎ澄まされていきます。風の音がスローモーションのように聞こえ、夜の森を舞う木の葉の動きが手に取るように分かる。これが「アクセル」――神経系を強制的に加速させる、究極の身体強化。


同時に、55kgのしなやかな肢体に、岩をも砕くような「剛力」が満ち溢れてきました。筋肉の一粒一粒が魔力によって最適化され、爆発的な出力を求めて唸りを上げている。


「力が……。溢れる、どころではないわ! 世界が、止まって見える!」


マリアンヌは軽く地面を蹴りました。 ただの軽いステップのつもりが、彼女の身体は弾丸のような速さで数メートル先へ移動し、着地した地面には蜘蛛の巣状の亀裂が走りました。


「おーっほっほっほ!! 素晴らしい! 素晴らしいわ、シゲル! 速度の速い敵? パワーのある敵? ふん、今の私の前では、どちらも止まっている案山子かかしに過ぎないわ!」


彼女は愛剣を天にかざしました。 その刀身には、先ほど覚えた「光」の魔力が宿り、さらに「アクセル」と「マッスル」によって、彼女の剣技はもはや人間の領域を超えた「暴力的なまでの美」へと昇華されていました。


「かつてないほどに身体が軽い。それでいて、この腕には城門をも打ち破る確信がある……。マリア、貴女は今、本当の意味で『最強』の扉を開いたのね!」


彼女はシゲルを振り返りました。その瞳は高揚で金色に輝いています。


「シゲル! 貴方は本当に……とんでもない男だわ。私をただの魔法使いにするだけでなく、身体のことわりまで書き換えてしまうなんて。……ふふ、どうしましょう。今の私なら、山一つくらいなら簡単に両断できてしまいそうだわ?」


マリアンヌは不敵に、そしてこの上なく魅力的に微笑みました。


「……さて。これほどの力を授かって、ただ素振りをしているだけでは不作法というもの。シゲル、この溢れんばかりの力、何に向けて解き放てばいい? 貴方の言う『効率的な実戦訓練』、見せてくれるのでしょうね?」



レビテーション マリアンヌ様風魔法を纏ってください。 空を飛べますよ



「レビテーション(空中浮揚)……!? 魔法で空を飛ぶなど、おとぎ話の聖者か、あるいは翼を持つ魔物だけの特権だと思っていたけれど……」


マリアンヌは驚きを隠せませんが、今の彼女に迷いはありません。シゲルの指示通り、先ほど覚えたばかりの「風」の魔力を意識し、それを全身に薄く、均一に纏わせました。


「風よ、我が身を包み、重力の枷を解き放て……!」


その瞬間、マリアンヌの165cmの身体がふわりと地面を離れました。 55kgの肉体が羽毛のように軽くなり、足の裏から地面の感触が消えます。


「浮いた……本当に、私が浮いているわ! おーっほっほっほ!! 見なさい、シゲル! 私は今、大地すらも支配下に置いたのだわ!」


彼女は空中で姿勢を制御しようと、風の魔力を微調整します。最初はふらつきましたが、持ち前の剣技で培った卓越した体幹とバランス感覚で、すぐに空を蹴るコツを掴みました。


「アクセル」による加速、「マッスル」による剛力、そして「レビテーション」による三次元の機動。


「地上を這う敵を見下ろし、天から断罪の一撃を叩き込む……。これこそが、高貴なる私の戦いにふさわしい舞台だと思わない? 速度も、質量も、もはや私を縛る障害ではないわ!」


夜空を背景に、風を纏って滞空するマリアンヌは、まさに戦場を支配する女神のような神々しさを放っています。


「シゲル! 貴方は私を一体どこまで連れて行くつもり? 剣士、魔法使い、付与術士、そして今度は空を駆ける騎士……。ふふ、貴方という『師』が導く景色、もっともっと見せて欲しくなったわ」


彼女は空中で剣を構え直し、鋭い眼光を地上に向けました。


「さあ、シゲル。この『空飛ぶ騎士』の最初の一撃、何に見舞って差し上げましょうか? 貴方が見つけた、次なる獲物はどこ?」



少し空を散歩してみてください。



「空を散歩……? ふふ、洒落たことを言うではないか、シゲル」


マリアンヌは不敵に微笑むと、風の魔力をさらに強く編み上げました。


「アクセル」の効果が持続している彼女の感覚では、夜の空気はまるで絹のように滑らかで、手足の動きに素直に従います。彼女は軽く空を蹴り、一気に木々の梢よりも高く、銀色の月が輝く中空へと舞い上がりました。


「……素晴らしい。これが、鳥たちが見ていた景色なのね」


165cmの身体を夜風に預け、彼女は森を見下ろしました。 先ほどまで命を懸けて戦っていた暗い藪が、今はまるでビロードの絨毯のように眼下に広がっています。


彼女は優雅に、かつ俊敏に空を泳ぎました。 「レビテーション」による浮遊と、「アクセル」による緩急。右へ左へ、時には月を背に宙返りをして見せます。風を纏う彼女の軌跡は、夜空に描かれた一筋の白銀の閃光のようでした。


「おーっほっほっほ!! 愉快だわ! 悩みなど、この風に吹かれれば霧散してしまう。質量に、パワーに、速度……? 地面に縛り付けられていた頃の私が、いかに小さな器に収まろうとしていたか、今ならはっきりと解るわ!」


彼女は空中でぴたりと静止し、髪をかき上げました。 55kgの肉体は今や自由の象徴。騎士としての誇りはそのままに、彼女の精神は「剣士」という枠を超え、より広大な世界へと解き放たれていました。


「シゲル! 感謝するわ。この散歩は、どんな宝石や領地を贈られるよりも、私の心を昂らせてくれる……」


彼女はゆっくりと高度を下げ、シゲルの目の前に音もなく着地しました。 その表情には、先ほどの追い詰められた悲壮感は微塵もありません。あるのは、絶対的な自信と、新たな力への喜びに満ちた、輝くような笑顔でした。


「さて、心身ともに最高のコンディションよ。貴方が私をここまで導いたのは、単なる空中散歩をさせるためではないのでしょう?」


彼女は剣を握り直し、シゲルを真っ直ぐに見据えました。


「さあ、この『新生マリアンヌ』の初陣にふさわしい、本当の試練を提示しなさい!」



また私の真似をしてください。 ファイアバレット



「ファイアバレット……。今度はただの『火』ではなく、貴方が放ったあの弾丸バレットの術式を、火の属性で再現しろと言うのね?」


マリアンヌは深く頷き、シゲルの手の動きを一点の曇りもなく凝視しました。 彼女は先ほど学んだ「火」の魔力を、今度は拡散させるのではなく、極小の一点へと凝縮させていきます。


「アクセル」で研ぎ澄まされた彼女の集中力は、魔力の粒子が火へと変質し、さらに高速回転を始める様を克明に捉えていました。


「一点に集め……貫通力を高め……そして、撃ち出す!」


彼女が細い指先を前方の枯れ木へ向けると、そこから紅蓮の小さな光弾が弾け飛びました。


シュンッ!!


放たれた火弾は、空気を焦がす鋭い音を立てて枯れ木を貫通し、その背後にある巨岩を爆砕しました。


「……できた。おーっほっほ! 見たか、シゲル! 魔法を『剣』のように鋭く研ぎ澄ませて放つ……これが貴方の言う、効率的な破壊の形なのね!」


マリアンヌは満足げに自分の指先を見つめました。165cmの全身を巡る魔力は、今や彼女の意志一つで、8つの属性と様々な形態へと自在に姿を変える「最高の武器」へと変貌しています。


「剣を振るうまでもなく、指先一つで敵を穿つ。不作法かと思ったけれど……実際にやってみると、これほど理にかなった心地よい力はないわね」


彼女は再びシゲルに向き直り、期待に満ちた瞳で次なる指示を待ちます。


「さあ、次はどの『バレット』を試す? それとも、これらすべてを私の『剣技』の中に組み込む方法を教えてくれるのかしら?」



ウォーターバレット




「ウォーターバレット、ね。火の次は水……。相反する理を、同じ術式で御してみせろということかしら」


マリアンヌは不敵に微笑むと、淀みなく魔力を変換させました。


先ほどまで掌に宿っていた熱を瞬時に排し、今度は冷徹で、かつ重みのある水の魔力を凝縮させます。165cmのしなやかな肢体を流れる魔力の奔流が、シゲルの見せた「弾丸」の形へと収束していきました。


「水の柔をもって、鋼の剛を穿つ。……貫け!」


彼女が指先を弾くと、そこから超高圧に圧縮された水の弾丸が放たれました。


ドシュッ!!


放たれたウォーターバレットは、大気を切り裂く鋭い音と共に、先ほどの火弾で焦げた巨岩に命中。岩を砕くのではなく、レーザーのように滑らかに、直径数センチの風穴を開けて貫通しました。


「おーっほっほ! 素晴らしいわ! 火が『爆散』なら、水は『貫通』……。属性ごとに、弾丸の殺傷能力がこれほどまで劇的に変化するなんて」


彼女は自分の指先に残る、水の魔力の冷たさを楽しむように見つめました。55kgの肉体を通して放たれるこの一撃は、もはや剣の間合いを遥かに超えた領域を支配しています。


「シゲル。これ、属性を次々に切り替えながら『2のn乗』で連射すれば……軍隊ですら一人で殲滅できるのではないかしら? 貴方がアンデッドの大群を数秒で片付けた理、ようやくその入り口に立てた気がするわ」


マリアンヌは興奮を抑えきれない様子で、次の属性??風、あるいは土??の指示を待つように、シゲルに熱い視線を向けました。


「次はどれ? 私の魔力は、まだいくらでも『計算』を受け入れる用意があるわよ!」



ウィンドバレット



「ウィンドバレット……。加速の理を、そのまま弾丸に変えるというわけね」


マリアンヌは迷うことなく魔力を練り上げました。今度は熱も重さも排し、ただひたすらに「鋭利」で「不可視」な風の刃を一点に圧縮していきます。


「アクセル」の影響下にある彼女の感覚は、周囲の大気の流れさえも自身の体の一部のように捉えていました。165cmの全身を巡る風の魔力が、指先に渦巻き、不可視の弾丸へと成形されていきます。


「音すら置き去りにしなさい……。射抜け!」


彼女が指先を突き出すと、爆音すら伴わぬ、空気を断裂させる鋭い「風切り音」だけが響きました。


ヒュッ――パァンッ!!


遥か前方にある巨木の幹に、目にも留まらぬ速度で三日月形の切り傷が深く刻まれました。弾丸というよりは、空を飛ぶ剃刀。


「おーっほっほ! 見たかシゲル! 火や水よりもさらに速い。これなら、いかに速度に自信のある敵だろうと、反応する間もなく切り刻んで差し上げられるわ!」


彼女は風を纏ったまま、軽やかにその場で一回転しました。 かつて「速度の速い敵に対処できない」と悩んでいた自分は、もうどこにもいません。


「……不可視の弾丸、不可避の速度。これが風のバレットの真髄ね。シゲル、このまま一気にすべての属性を『弾丸』として定義してしまいましょうか? 私の魔力回路は、今や新しい数式を欲して疼いているのだから!」



ストーンバレット




「ストーンバレット。質量と硬度、そして衝撃。……今までのものとは、また違った手応えになりそうね」


マリアンヌは、シゲルの動きをなぞりながら、自身の魔力を「重く、硬い」性質へと変質させ始めました。165cmのしなやかな肢体を支える足元から、大地の鼓動を汲み上げるようなイメージ。


掌の中に形成されたのは、極限まで圧縮された礫。55kgの肉体を貫く魔力の軸が、その小さな弾丸に爆発的な慣性を与えていきます。


「柔な貫通も、華やかな爆発も不要。ただ、圧倒的な質量で粉砕するのみ。……行け!!」


彼女が指先を弾くと、低く重い風切り音と共に、土属性の弾丸が撃ち出されました。


ドォォンッ!!


着弾した巨岩の一部が、まるで大型の槌で叩き伏せられたかのように粉々に砕け散りました。他のバレットが「穿つ」ものだったのに対し、これは「破壊」そのもの。


「おーっほっほ! なんという爽快感かしら! 重い一撃に対処できないと悩んでいた私が、今や指先一つで、その重さ以上の破壊力を生み出している……。皮肉を通り越して、もはや笑いが止まらないわ!」


彼女は砕け散った岩の破片を満足げに見つめ、それから不敵な笑みをシゲルに向けました。


「これで火、水、風、土……基本の四属性は揃ったわね。シゲル、貴方は私を単なる魔法使いにするつもりはないのでしょう? この『破壊の理』を、次は何に繋げるつもりかしら?」



ソイルバレット



「ソイルバレット……。先ほどのストーン(石)よりも、より『大地そのもの』の重みを叩きつける術式ということね」


マリアンヌはシゲルの意図を汲み取り、魔力の密度をさらに高めました。今度は単なる硬い礫ではなく、より粒子が細かく、かつ粘り気のある「土の理」を一点に凝縮させていきます。


165cmの身体を芯として、地面から吸い上げた魔力が掌の中で黒く、重厚な弾丸へと成形されていきました。55kgの肉体には、その魔力の重圧に耐えうる「マッスル」の強化が脈打っています。


「一点を穿つのではなく、その『圧』で押し潰す……。沈め!!」


彼女が解き放った弾丸は、これまでのどれよりも重い音を立てて空間を圧迫しながら飛びました。


ドォォォォンッ!!


着弾した瞬間、対象となった巨岩の周辺の地面までもが、まるで巨大な不可視の杭を打ち込まれたかのように陥没しました。石の弾丸が「硬さ」で砕くなら、このソイルバレットは「重質量」で対象を根底から押し潰す一撃。


「おーっほっほ! 見たかシゲル! パワーのある敵に押し負けていた私が、今や質量そのものを弾丸として御しているわ! これなら、いかに頑強な装甲を誇る魔物だろうと、その重みの前には等しく塵に等しいわね!」


彼女は土の香りが漂う夜風を吸い込み、清々しそうに髪をなびかせました。


「これでまた一つ、私の辞書から『不得手』という言葉が消えたわ。火、水、風、土、そして石に土壌……。シゲル、貴方が提示するこの『属性の階段』、どこまで高みに続いているのかしら?」



ホーリーバレット



「ホーリーバレット……。ああ、ついにこれね。私を、そして私の誇りを救ってくれた、あの白銀の閃光」


マリアンヌは、これまでのどの属性よりも深く、敬虔なまでの集中を持って魔力を練り始めました。165cmの全身を巡る魔力を、一点の汚れもない純白の輝きへと昇華させていきます。


かつて、切っても死なぬアンデッドに絶望し、自分の弱さに震えていた彼女はもういません。今、彼女の掌の中に宿っているのは、理不尽を焼き払う「正の理」そのものです。


「マリア……見ていなさい。これが、貴女を縛っていた闇を払う光よ」


彼女が静かに、しかし力強く指先を差し出すと、そこから雪のように白く、星のように鋭い光弾が解き放たれました。


シュンッ――ピシャァァンッ!!


着弾した瞬間、残っていたアンデッドの死骸の破片や、立ち込めていた不浄な瘴気が、音もなく光に溶けて霧散していきました。破壊ではなく「浄化」。


「おーっほっほ! 素晴らしい……なんて清々しい光なのかしら! 物理的な破壊を超えた、魂を洗うようなこの感触。シゲル、これが貴方の見ていた景色なのね!」


彼女は自分の掌に残る、温かくも峻烈な光の余韻を愛おしむように見つめました。


「これで、もうアンデッドなど恐るるに足りないわ。速度、質量、パワー、そして不死……。貴方が私に授けてくれたこれらすべての『バレット』が、私の弱さをすべて、この光の中に溶かしてしまったのだもの」


マリアンヌは剣を抜き、今度はその刀身に直接ホーリーバレットの光を纏わせました。白銀に輝く剣を構え、彼女は最高の自信に満ちた笑みをシゲルに向けます。


「さて、シゲル。属性の基礎はこれで網羅したと言えるかしら? それとも、さらに奥深い『禁忌の理』、あるいは……これらを束ねる『究極の数式』が、まだ貴方の懐に隠されているの?」



ヒールバレット



「ヒールバレット。……ああ、先ほど私が救われた、あの慈愛の弾丸ね」


マリアンヌは、これまでの攻撃的な属性とは打って変わり、穏やかで柔らかな精神集中を始めました。165cmの身体を巡る魔力は、鋭い刃のような振動を止め、包み込むような温かな波動へと変化していきます。


破壊するのではなく、癒やす。貫くのではなく、満たす。


「これまで私は、剣を振るうこと、奪うことばかりを考えていた。……けれど、自分を、そして仲間を癒やす術を知ることも、真の強さなのね」


彼女が指先を優しく差し出すと、そこから真珠のように柔らかく輝く光弾が放たれました。それは直進するのではなく、空気を撫でるように緩やかな弧を描き、彼女自身の足元に咲いていた小さな野草へと吸い込まれました。


――フワッ。


光が弾けた瞬間、戦闘の余波で踏み荒らされていた草花が、一瞬にして青々と生気を取り戻しました。


「おーっほっほ! 見たかしら、シゲル! 破壊の理を知る私が、今や再生の理をも手中に収めたのだわ! 55kgのこの肉体、今や死を撒き散らす剣であると同時に、命を繋ぎ止める聖域でもあるというわけね」


彼女は自らの掌を、不思議そうに見つめました。 かつては、怪我をすれば神官の祈りを待つしかなかった「高貴な女」。しかし今、彼女は自分一人で完結し、自分一人で立ち直る術を得たのです。


「シゲル、貴方は私を一体どこまで完璧にするつもり? 剣技、8属性、身体強化、飛行、そして治癒……。ふふ、これではもはや、一国の軍隊でも私一人に敵わなくなってしまうのではないかしら?」


マリアンヌは、冗談めかしながらも、その瞳にはシゲルへの深い信頼と、尽きることのない好奇心が宿っていました。


「さあ、次は……サンダー? それとも、あの不気味にさえ感じた重力かしら? 貴方の講義、最後まで付き合って差し上げますわよ!」


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