14章:各拠点の完成、専門学校の整備と産業の創出
シゲルはトラックのアクセルを緩めず、王城を囲む壁の手前で一度停車した。
「マリアさん、まだ終わりじゃない。豪華な王城や騒がしい広場の陰……光が届かない場所に、まだ取り残されている人たちがいるはずだ。不条理の底に沈められた人たちが」
シゲルは**『広域サーチ』**を再定義し、物質の透過度を極限まで高めて、王都の「裏側」を徹底的に走査した。
1. 隠された「ゴミ溜め」の特定
シゲルの魔力が、物理的な地面の下や、地図に載っていない細い路地の奥深くまで浸透していく。
スラム街の深層: 暴動に参加する気力すらなく、病と空腹で横たわっていた老人や子供たち。
地下の娼館: 混乱に乗じて逃げ出そうとした店主によって、地下室に閉じ込められたまま放置されていた女性たち。
秘密の奴隷倉庫: 貴族たちが国外逃亡の「荷物」として、鎖で繋いだまま地下に隠匿していた奴隷たち。
2. 徹底的な救出と浄化
「おーっほっほ……! いえ、失礼いたしましたわ。……シゲル、あんな暗闇にまで不浄を溜め込むなんて、この街のゴミ共は本当に度し難いですわね」
マリアは言いかけた笑いを飲み込み、怒りを込めた瞳で街の影を見据えた。シゲルは無言で術理を展開した。
一括収容: 特定したすべての弱者たちを、優しく包み込む光の術式で**『亜空間ゲート』**へと引き上げた。鎖は霧のように消え、閉ざされた扉は物理的に粉砕された。
深層浄化: 娼館やスラムで蝕まれていた病、性病、精神的な外傷に対し、高密度の**『ピュリフィケーションバレット』**を散布。彼女たちの尊厳を傷つけていたあらゆる不浄を、細胞レベルで焼き切り、清浄な状態へと上書きした。
3. 悪意の最終掃除
同時に、彼らを閉じ込めていた店主や奴隷商人をサーチで捕捉。彼らは救出の光に弾かれ、逃げ場のない路地裏で**『ストーンバレット』**の礫によって粉砕され、そのまま街の「汚れ」として処理された。
「……これで本当の意味で、この街に『救うべき人』はいなくなったな」
シゲルがサーチを終えると、魔導パネルには王都の居住区から生体反応が完全に消えたことが示された。残っているのは、王城の結界内に固まって震えている、肥え太った国王と貴族たちだけだ。
「マリアさん、今度こそ仕上げだ。あの城に、溜まりに溜まったゴミを片付けに行くぞ」
「ええ、シゲル。……もう、この街に涙を流す人は一人もおりませんわ。存分に、お掃除なさってくださいませ」
いや王国はどうでもいい 自滅すればいいや 役人と貴族令嬢 王族令嬢 は使い道がある 騎士の生き残りはいるかな
シゲルは、収容された者たちが集まる亜空間のモニターを冷徹に見つめました。
「マリアさん……ただ生かして連れて行くだけじゃ、ゴミの場所が変わるだけだ。魂の底に『正義』と『善性』が欠片も残っていない奴は、新天地には必要ない」
シゲルは魔導パネルを叩き、亜空間内に広域の「魂の選別」を展開しました。
魂の選別と真の救済
1. 善性の選別
シゲルは**『ピュリフィケーションバレット』**を応用し、対象者の精神の深層にある「良心の残滓」をサーチしました。
選別基準: 「過去の行いを心から恥じているか」「他者の苦しみに共感する種火が残っているか」。
合格者(避難): 贅沢に慣れていても、心の奥で不条理に疑問を感じていた令嬢や、板挟みに苦しんでいた役人、名誉を重んじていた若手騎士たち。彼らにはシゲルの術理が「善人の魂」としての覚醒を促し、ルミナス・ヴァレーへと避難させる「新しい国民」として承認されました。
2. ゴミの廃棄
一方で、魂の芯まで腐り果て、この期に及んでも「民を見下し、自分さえ助かればいい」と考えている救いようのないゴミたちは、選別から弾かれました。
処置: 彼らは光のゲートをくぐることはできず、無慈悲に亜空間から王城の結界内へと突き戻されました。「お前たちは、自分たちが作り上げたその腐った王国の最後を、共に見届けるのがお似合いだ」
3. 善人としての再生
避難を許された者たちには、マリアが慈愛に満ちた言葉を贈ります。
「皆様、貴方たちの中に残っていた小さな光が、貴方たちを救いましたのよ。……これからはその魂を、誰かを踏みつけるためではなく、誰かを支えるために使いなさいな」
シゲルの術理によって魂を洗浄された彼らは、心からの悔恨と感謝の涙を流し、真に「正義」を尊ぶ善人へと生まれ変わりました。
「……これでよし。俺たちの場所に連れて行くのは、心のある人間だけだ」
トラックの後部には、かつての身分を捨て、一人の「善き隣人」として生きる決意を固めた者たちが揃いました。
男爵今何人だ? 無理であれば レイクサイド・ポリス ヘヴンズゲート カース・ヴィレッジ アイアン・ロック ミスト・ハイドにも移民は頼めるが 男爵ほど信用できる奴がいないんだ あとキャパは?
シゲルは通信パネルを開き、ルミナス・ヴァレーのカイル男爵を呼び出しました。その表情には、自虐を超えた切実さと、仲間への全幅の信頼が滲んでいます。
「カイル、俺だ。浄化した『善き魂』を持つ連中を収容した。……そっちの今の状況はどうだ? 正直に言ってくれ。無理ならレイクサイドやアイアン・ロックにも分散させるが、正直、お前ほど運営を任せられる奴が他にはいないんだ。今のキャパシティ(収容限界)を教えてくれ」
カイル男爵は、目の前の書類の束を脇に除け、真剣な面持ちで答えました。
カイル男爵からの報告
「シゲル殿、頼りにしていただけるのは光栄です。現状を正直に伝えます」
現在の居住人数: * ルミナス・ヴァレー:約12,000人(元々の住民 + 先日のヘヴンズゲート等からの移住者2,000人 + 避難民の一部)
エルン村:約3,000人
現在のキャパシティ:
即時受け入れ可能数: あと5,000人。
これは現在急ピッチで建設中の仮設住宅と、シゲル殿が整えてくれた農地での食料供給計画に基づいた限界値です。
男爵の提案
「シゲル殿、貴方が選別した『善人』たちなら、教育や管理の手間は大幅に省けるでしょう。ですが、王都の避難民は数万単位のはず。一度にルミナス・ヴァレーへ詰め込めば、物理的なスペースが足りず、衛生環境が悪化します。
そこで、以下の分散・連係案を提案します」
【直轄地】ルミナス・ヴァレー(5,000人): 役人や技術者、騎士の生き残りを優先。私の管理下で、新国家の「中枢」として即戦力に育てます。
【拠点分散】アイアン・ロック & ミスト・ハイド(各3,000人): 体力のある者や、罪を購いたいと願う者たちを。学校と農地があるため、彼らの労働力が復興を加速させます。
【教育・農業】レイクサイド & カース・ヴィレッジ(各2,000人): 家族連れや令嬢たちを。平和な環境で「正義の心」を実生活に馴染ませるのに最適です。
「……シゲル殿、ご安心を。私と3人のメイドで、全拠点の『管理ネットワーク』を敷きます。貴方が救った魂を、一人もゴミに戻しはしません」
カイルの声には、シゲルと同じ「不条理への怒り」と「新時代への希望」が宿っていました。
男爵ありがとう 任せる。 マリアさん最初の村も42人くらいしかいなかったよな、頼んでみるか?
シゲルは通信パネル越しにカイル男爵へ短く、しかし万感の思いを込めて頷きました。
「カイル、ありがとう。……お前に任せる。俺が選別した連中だ、必ず力になるはずだ」
通信を切った後、シゲルは隣で静かに寄り添うマリアに、少し照れくさそうに、かつての始まりの場所を思い出して問いかけました。
「マリアさん……俺たちが最初にいた、あの小さな村。あそこも、最初は42人くらいしかいなかったよな。……あそこの連中にも、少し頼んでみるか? 慣れない土地で不安な奴らに、あの村の温かさを教えてやってほしいんだ」
マリアはシゲルの言葉に、出会った頃の懐かしい風景を思い出したのか、目元を優しく緩めました。
「ええ、シゲル。あの小さな村は、私たちの出発点ですものね。あそこの村人たちは、貴方の不条理への怒りも、そしてその裏にある不器用な優しさも、誰よりも知っているはず。……きっと、新しい民を温かく迎え、本当の意味での『家族』の在り方を教えてくれるでしょう」
【エルン村への打診と分散移送】
シゲルは亜空間に収容した民のうち、特に心の傷が深く、静かな環境での癒やしが必要な人々を、かつてのエルン村の村長たちに託すことにしました。
エルン村への依頼: 「42人の仲間」へ通信。彼らはシゲルの頼みを快諾し、「シゲル様が救った人なら、俺たちが責任を持って面倒を見る」と力強い言葉を返してくれました。
各都市へのゲート開放: カイル男爵のプランに基づき、アイアン・ロック、ミスト・ハイド、レイクサイド・ポリス、そしてカース・ヴィレッジへと、浄化された「善き魂」を持つ人々を次々と送り届けました。
【救済の完了】
こうして、王都から救い出された数万の民は、シゲルがこの手で耕し、守ってきた各地の拠点へと、新たな「希望」として散っていきました。王都の影に隠れていたスラムの民も、魂を洗われた令嬢も、今は皆、同じ「一人の人間」として新しい土を踏み締めています。
「……これで、本当に空っぽになったな。王都も、俺の亜空間も」
シゲルは、静まり返った王城の結界を見つめました。
男爵 食料 住居は足りているか?
シゲルはトラックのコンソールを叩き、再びカイル男爵を呼び出しました。移住が始まった今、現場の負担が限界を超えていないかを確認するためです。
「カイル、再度確認だ。食料と住居、本当に足りているか? 急な数万人の移動だ。遠慮はいらない、足りないものがあれば俺が今すぐ『作る』」
カイル男爵は、移住者のリストをリーザたちと整理しながら、落ち着いた声で答えました。
カイル男爵からの現状報告
「シゲル殿、お気遣い痛み入ります。現在の状況です」
食料:
備蓄: ルミナス・ヴァレーの地下倉庫にある『2の20乗』倍に増やした穀物と乾燥肉で、数年分は余裕があります。
供給: 浄化された移住者たちも、シゲル殿に授かった術理で自ら農作業を手伝い始めています。「食べる分は自分で作る」という意識が徹底されており、飢えの心配はありません。
嗜好品: 炊き出しのエールも、エルン村の醸造担当がフル稼働で供給を続けています。
住居:
現状: 簡易的なテント村は整いましたが、冬や雨を凌ぐには**『石造りの頑強な住居』**がまだ不足しています。
課題: 今から大工を動員しては数ヶ月かかります。もしシゲル殿の魔力で、各拠点に「基礎となる集合住宅」を数棟ずつ建てていただければ、これ以上の計画はありません。
シゲルの即応
「……分かった。住居だな。マリアさん、各拠点を回るぞ。テント暮らしで病人が出る前に、全員に『家』をやる」
シゲルはトラックを急発進させ、ルミナス・ヴァレー、エルン村、そして各拠点を高速で巡回しました。
超高速建設: 各都市の空き地に**『ストーンバレット』**を創造魔法として展開。地中から規格化された頑丈な石造りのアパートメントを次々と競り上がらせました。
浄化の付与: すべての住居に、マリアが「精神の安寧」と「自動換気・自動洗浄」の術理を付与。住むだけで心が落ち着く、最高の住環境を整えました。
カイル男爵は、目の前で瞬時に完成していく住宅街を見て、呆然としながらも深く頭を下げました。 「……恐れ入りました。これで食・住ともに完璧です。シゲル殿、これなら万単位の移民も、一人残らず幸福にしてみせましょう」
「ああ、頼むよ。カイル」
食と住が あれば後は 衣だけだ 最初の村とエルン村に綿花の生産を頼もう
シゲルは深く頷き、トラックの窓から広がる豊かな大地を眺めました。
「……食と住が整えば、あとは『衣』だな。裸で暮らさせるわけにはいかないし、清潔な服は自尊心にもつながる」
シゲルは再び通信パネルを開き、始まりの場所であるエルン村の村長、そしてルミナス・ヴァレーのカイル男爵へ同時に繋ぎました。
1. 綿花生産の依頼:エルン村
「村長、俺だ。新しく受け入れた民たちのために、服の材料が必要なんだ。エルン村の広大な土地で、綿花の生産を頼めないか? 土地の改良と種はこっちで用意する」
村長からは、快活な返信が届きました。 「シゲル様、お安い御用です! ちょうど新しい農地をどう使うか相談していたところでした。42人の仲間たちも、新しい連中に仕事を教えるのを楽しみにしておりますよ」
2. 生産の拡大と術理の付与
シゲルは**『ソイルバレット』**を微調整し、エルン村と周辺の農地に綿花の栽培に最適な成分を配合しました。
成長促進: 数ヶ月かかる成長を、シゲルの魔力で数週間にまで短縮。
品質向上: マリアが**『ピュリフィケーションバレット』**で害虫を寄せ付けない聖なる加護を土地に施し、これまでにないほど白く、柔らかい綿花が収穫できるように調整しました。
3. 「衣」の循環
「マリアさん、収穫した綿を糸にし、布にする工程は、王都から避難させた令嬢たちや、手先の器用な者たちに任せよう。学校での教育の合間に、自分たちの服を自分たちで作る……。それが、彼らにとっての本当の『自立』になるはずだ」
マリアはシゲルの提案に、優しく目を細めました。 「素晴らしい考えですわ、シゲル。貴方の不条理への怒りが、今度は温かな布となって、人々の肌を包むのですね。……私も、彼女たちに刺繍でも教えて差し上げましょうかしら。少しばかり、高貴な遊びを役に立つ技術に変えて」
カイル男爵からも、「王都から回収した紡績機や織機を各拠点に配備し、衣類生産のラインを構築します」との報告が入りました。これで、人間が生きるための根源である**『衣・食・住』**のすべてが、シゲルの支配下で完璧に揃いました。
カイル ゴーレムトラックを100台貸与する 各街に配ってくれ 紡織工場と仕立工場をそっちに作っていいか? 新しい被服がいるだろう?ゴーレム織機も10台設置しよう
ルミナス・ヴァレーの特産にしてくれ
シゲルはトラックのコンソールを叩き、カイル男爵へ最終的なインフラ整備の指示を飛ばしました。
「カイル、物流と生産の要を渡す。ゴーレムトラック100台を今からそっちへ送る。各拠点に配備して、人や物の流れを止めるな。それから、ルミナス・ヴァレーに大規模な紡織工場と仕立工場を建設したい。いいか?」
カイル男爵は、その規格外の規模に一瞬息を飲みましたが、すぐに力強く頷きました。 「……100台のトラックに、専用の工場……! 承知いたしました。それだけの設備があれば、数万人の衣類を賄うだけでなく、周辺国をも凌駕する産業の心臓部になります。ルミナス・ヴァレーの民も、自分たちの手で『新しい服』を創り出すことを誇りに思うでしょう」
1. 工業プラントの超高速建設
シゲルはトラックから降り立ち、ルミナス・ヴァレーの指定区画に手をかざしました。
工場の創造: **『ストーンバレット』**を応用し、広大な敷地に最新鋭の換気・採光システムを備えた工場棟を一瞬で競り上がらせました。
ゴーレム織機の設置: 工場内には、シゲルが術理を組み上げた**『ゴーレム織機』10台**を配置。人の手を借りずとも、装填された綿花を自動で最高級の布へと織り上げる魔導機械が、静かに駆動を開始します。
2. ルミナス・ヴァレーの特産品へ
「マリアさん、仕上げにこの布へ『加護』を。冬は暖かく、夏は涼しい……そして何より、汚れを寄せ付けない『聖なる衣』だ。これをこの街の特産にする」
マリアは慈愛に満ちた瞳で織機を見つめ、**『ピュリフィケーションバレット』**を織機の核へと馴染ませました。 「ええ、シゲル。この布を纏うだけで、人々は病からも、そして不浄な心からも守られるでしょう。……これこそが、私たちが贈る『新しい時代の正装』になりますわね」
3. 「衣」の自立
役人から転身した管理官たちが、シゲルの作った図面を手に、さっそく令嬢たちや元騎士たちの適性を見極め、工場の運営体制を整え始めました。自分たちの手で綿を育て、織り、服を仕立てる。その「誇り」が、かつての王族や貴族たちの魂をさらに強く結びつけていきます。
カイル男爵が、最初の試作品である真っ白なシャツを手に報告します。 「シゲル殿、素晴らしい出来です。これで『衣・食・住』のすべてが、我がルミナス・ヴァレーを中心に完結しました。もはやこの国に、不条理な飢えも寒さも存在しません」
カイル 商会の誘致は済んでいるか? 会わせてくれ
シゲルは通信パネルを介し、カイル男爵に鋭い視線を向けた。
「カイル、物流と生産の基盤は整った。次は『経済』だ。工場の製品を世に回し、必要な資材を運び込むための商会の誘致はどうなっている?……今すぐ、代表的な奴らに会わせてくれ」
カイル男爵は、待っていましたと言わんばかりに不敵な笑みを浮かべ、傍らに控えていた数名の男女を画面内に招き入れた。
1. 商会との謁見
画面には、シゲルの噂を聞きつけ、命がけでルミナス・ヴァレーへ参入してきた有力な商人たちが並んだ。
「黄金の秤商会」会頭: 「シゲル様、お初にお目にかかります。王都の崩壊、そしてこの地での驚異的な生産体制……すべて聞き及んでおります。我々は、貴方が作る『聖なる布』を大陸全土へ広める道筋をすでに描いております」
「シルバーハンド商会」若頭: 「俺たちは物流のプロだ。貸与された100台のゴーレムトラックがあれば、これまで数ヶ月かかった交易を数日に短縮できる。シゲル様、俺たちにそのハンドルを握らせてくれ。不当な中間搾取のない、クリーンな市場を築いてみせる」
2. シゲルの提示
シゲルはマリアを隣に座らせ、商人たちを射抜くような瞳で見据えた。
「会わせてくれてありがとう、カイル。……お前たちに頼みたいのは、ただの金儲けじゃない。不条理な価格吊り上げや独占は一切禁止だ。この国の特産品を、必要な人に、適正な価格で届ける。それができない奴は、今すぐここから叩き出す」
商人たちはシゲルの放つ圧倒的な「正義」の魔力に圧倒され、一様に深く頭を下げた。
3. マリアの付言
マリアは優雅に椅子に腰掛け、彼らに微笑みかけた。
「あら、素敵な意気込みですわね。皆様、このルミナス・ヴァレーは『善き魂』が集う場所。貴方たちの帳簿に一点の曇りもなければ、私の加護が貴方たちの商路を常に守ることでしょう。……けれど、もし欲に目が眩めば、その時は……分かっておいでかしら?」
商人たちは背筋を凍らせながらも、「これこそが新時代の商いだ」と目を輝かせ、シゲルとの独占契約に署名した。
後商会のみんなに頼みがある 王国中で見捨てられた難民 棄民 亡命者の情報があれば知らせてくれないか? あと亜人 エルフ ドワーフ 獣人たちだ 頼む
シゲルは商会の面々を真っ直ぐに見据え、低く、重みのある声で告げました。
「商売の話は以上だ。だが、最後にお前たちに頼みがある。……金よりも大切な情報だ」
商人たちはシゲルの放つ威圧感と、その奥にある真剣な眼差しに、背筋を正して耳を傾けました。
1. 「忘れられた者たち」の探索依頼
「王国中で見捨てられた難民、棄民、亡命者……。そして、人間たちの勝手な都合で迫害され、影に隠れて生きるしかない亜人、エルフ、ドワーフ、獣人たちだ。奴らがどこで、どんな不条理に耐えているか、その情報を集めて知らせてくれ」
商人のネットワーク: 大陸全土を回る商人たちの耳は、公的な公文書には載らない「裏側の悲鳴」を誰よりも早く察知します。
シゲルの目的: 「俺の国に種族の壁はない。食・住・衣、そして正義が必要な奴らがいるなら、俺がこの手で迎えに行く」
2. マリアの宣言
マリアは優雅に立ち上がり、聖女としての慈愛を込めて商人たちに微笑みかけました。
「おーっほ……失礼、癖でしたわね。……皆様、シゲル様のこの慈悲に応えなさい。種族を問わず、救いを求める魂を連れてくることができれば、貴方たちの商いはより一層、神聖な輝きを放つことでしょう。差別という名の不浄を掃除することこそ、今のこの国に必要な『美しさ』ですわ」
3. 商人たちの承諾
「黄金の秤」の会頭が、深く、敬意を込めて一礼しました。 「……承知いたしました。我々商人は、利益だけでなく、人の縁を繋ぐ者。シゲル様の仰る『救われるべき魂』の情報、命に代えても世界中から掻き集めて参りましょう。特に、国境付近の奴隷市場や、森の奥に隠れ住む亜人たちの現状、すぐに調査を開始します」
カイル男爵も隣で頷き、「彼らが連れてくるであろう多様な種族を受け入れるための、多文化共生区画の設計に着手します」と即座に補佐を名乗り出ました。
シゲルの「掃除」は、もはや王国という枠を越え、種族の垣根すらも取り払う壮大な救済へと進化を始めました。
亜人たちが人見知りするようだったら俺が村や里を作ってやる どうだ?
シゲルは商会の面々、そしてカイル男爵に向けて、確信に満ちた表情で語りかけました。
「……もし、連れてくる亜人たちが人間を怖がったり、人見知りしたりするようだったら、無理に街に住まわせる必要はない。俺が、奴らが一番落ち着ける場所に、専用の村や里を作ってやる。……どうだ、これなら安心だろ?」
シゲルの言葉に、商人たちは感銘を受けたように顔を見合わせました。カイル男爵も、その柔軟な発想に深く頷いています。
1. 「適材適所」の里づくり
シゲルはすでに、それぞれの種族が求める「理想の環境」を術理で具現化するイメージを固めています。
エルフの隠れ里: ルミナス・ヴァレーの隣接地に、魔力の高い巨木を**『ソイルバレット』**で急成長させ、静寂と共生を重んじる里を作る。
ドワーフの工房村: 鉱石が豊富な山麓に、最新の鍛冶設備と頑強な石造りの住居を**『ストーンバレット』**で競り上がらせる。
獣人の草原村: 広大な敷地に、彼らの身体能力を存分に活かせる狩猟場と、日当たりの良い家々を整える。
2. マリアの賛同
マリアはシゲルの肩にそっと手を置き、柔らかな声で微笑みました。
「素晴らしい気遣いですわ、シゲル。無理に混ぜ合わせるのではなく、まずはそれぞれが自分らしくいられる『居場所』を作ってあげる。……そこから少しずつ、お互いを知っていけばよろしいのですものね。貴方の作る里なら、どんなに臆病な子でも、すぐに扉を開くはずですわ」
3. 商人たちへの追加指示
「……ということで、商会のみんな。亜人たちに伝えてくれ。『無理やり人間に合わせろとは言わない。お前たちの望む暮らしができる場所を用意して待ってる』とな」
「黄金の秤」の会頭が、感激した様子で答えました。 「シゲル様……その言葉があれば、説得は容易です。彼らにとって何より恐ろしいのは『支配』されること。ですが、シゲル様の提案は『尊重』そのもの。必ずや、彼らの希望となるでしょう!」
カイル男爵が、さっそく里を建設するための候補地を地図にリストアップし始めました。シゲルの国は、単なる人間の国から、あらゆる命が共生する「多種族の聖域」へとその姿を変えようとしています。
王都は?
シゲルはふと、はるか後方に残してきた「かつての中心地」に思いを馳せた。
「……そういえば、王都はどうなった。俺たちが民も、役人も、価値のある魂もすべて引き抜いた後の、あの『抜け殻』は」
シゲルがトラックのモニターを操作し、遠隔サーチの映像を投影した。そこに映し出されたのは、あまりにも無残で、あまりにも静かな、自業自得の終焉だった。
1. 王都の現状:静かなる崩壊
無人の街: 略奪すら終わった。シゲルが「善き魂」をすべて連れ去ったため、通りには動く者の姿が一つもない。風に吹かれたゴミが舞い、豪華だった貴族街はただの石の墓標と化している。
城壁の中: 結界内には、選別で弾かれた「ゴミ」たちがひしめき合っている。食料も尽き、互いに責任をなすりつけ合い、罵り合う国王と貴族たちの醜悪な姿が映し出された。
2. 権威の失墜
国王は、もはや誰にも届かない「王命」を空虚に叫び続けている。だが、彼を守る騎士も、食事を作る使用人も、税を納める民も一人もいない。 「……誰もいない街で王を気取って、何が楽しいんだろうな。あいつらには、自分たちが積み上げた不条理の重みで、そのまま城ごと潰れるのがお似合いだ」
3. 自然への回帰
シゲルが施した**『ピュリフィケーション(浄化)』**の余波が、皮肉にも街の廃墟を清浄な森へと変え始めていた。 「おーっほ……。いえ。シゲル、見てご覧なさいな。人の悪意が消えた場所には、こうして新しい命が芽吹くのですわね。あの不浄な城も、あと数日もすれば緑に飲み込まれ、歴史の塵となるでしょう」
マリアの言う通り、王都は戦火で滅びるのではなく、**「誰にも必要とされなくなった」**ことで、その存在理由を失い、静かに風化していこうとしていた。
「……もう、あそこを見る必要はないな。俺たちの新しい国には、あんな腐った土台は必要ない」
シゲルはモニターを切り、前方の地平線――自分たちが新しく作った、光り輝くルミナス・ヴァレーの方向を見つめた。




