間話 名槍「日本号」の嘆き
俺は、槍だ。
「日本号」などという大層な銘を付けられ、天下三名槍などと崇められているが、所詮は人を刺すための鉄の塊よ。
今の主は、福島正則という男だ。悪い男ではないが、ちと酒癖が悪く、腕っぷしに頼りすぎる。
ある夜、城の武器庫で、奇妙な気配を感じた。
隣に立てかけられた、無骨な十文字槍。銘もない、使い古された実戦槍だ。持ち主は、あの可児才蔵とかいう新入りらしい。
その十文字槍から、血の匂いと、微かな震えが伝わってくる。
『……おい、名槍殿』
十文字槍が語りかけてきたような気がした。
『あんた、羨ましいぜ。飾られて、磨かれてよ』
俺は答える。
『馬鹿を言え。俺だって血を吸いたい。だが、今の世の武士は、槍を道具ではなく飾り物にし始めている』
十文字槍は、低く笑った。
『俺の主は違うぞ。俺を石ころのように扱うが、俺の芯まで使い切ってくれる。……だがな、主は探しているんだ』
『探している?』
『ああ。遠く西の国にいる、白銀の槍をな。主が本気でぶつかり合えるのは、世界であの槍だけだ』
白銀の槍。黒田にあるという、あの名槍か。
俺は武器庫の闇の中で、身震いした。
使い手たちが惹かれ合うように、我ら武器もまた、至高の激突を待ち望んでいるのだ。
その日が来れば、俺たち「名槍」の出る幕などない。
あの泥臭い十文字槍と、白銀の槍。
本物同士が砕け散る音を聞くのが、今から楽しみでならない。
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