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双璧の槍 ―笹と亀―  作者: beens
第五章 月下の杯、無言の槍

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間話 真田幸村の遺言

 天守閣の回廊から、その様子を見つめる二つの影があった。

 真田幸村と、その息子・大助である。

「……父上、あの二人は」

「見るな、大助。……いや、よく見ておけ」

 幸村は、月下で酒を酌み交わす二人の老将を指差した。

「我らは、豊臣の家名のため、あるいは真田の義のために戦う。だが、あの方々は違う」

 幸村の目には、憧憬どうけいにも似た色が浮かんでいた。

「家も、名誉も、恩賞も、全て捨て去っている。ただ『己の生き様』と『友との約束』のためだけに、明日の死地に赴こうとしているのだ」

 幸村は、自身の愛槍・十文字槍を握りしめた。

「美しいな。……羨ましいほどに」

 知将と呼ばれた男が、ふと漏らした本音。

「あの二人が行く道こそが、武士もののふの到達点だ。大助、明日はあの二人の背中を焼き付けろ。それが、父からお前に残す、最後の軍学ぞ」

 風が吹き抜け、城内の篝火かがりびが揺れる。

 夜が明ければ、霧の道明寺。

 伝説の幕切れが、静かに近づいていた。

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