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間話 真田幸村の遺言
天守閣の回廊から、その様子を見つめる二つの影があった。
真田幸村と、その息子・大助である。
「……父上、あの二人は」
「見るな、大助。……いや、よく見ておけ」
幸村は、月下で酒を酌み交わす二人の老将を指差した。
「我らは、豊臣の家名のため、あるいは真田の義のために戦う。だが、あの方々は違う」
幸村の目には、憧憬にも似た色が浮かんでいた。
「家も、名誉も、恩賞も、全て捨て去っている。ただ『己の生き様』と『友との約束』のためだけに、明日の死地に赴こうとしているのだ」
幸村は、自身の愛槍・十文字槍を握りしめた。
「美しいな。……羨ましいほどに」
知将と呼ばれた男が、ふと漏らした本音。
「あの二人が行く道こそが、武士の到達点だ。大助、明日はあの二人の背中を焼き付けろ。それが、父からお前に残す、最後の軍学ぞ」
風が吹き抜け、城内の篝火が揺れる。
夜が明ければ、霧の道明寺。
伝説の幕切れが、静かに近づいていた。
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