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双璧の槍 ―笹と亀―  作者: beens
第五章 月下の杯、無言の槍

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第2話 真田丸の攻防、阿吽の呼吸

 十二月四日、真田丸の戦い。

 冬の寒空の下、徳川軍の猛攻が始まった。真田幸村が築いた出城「真田丸」には、前田利常らの軍勢がありのように群がっていた。

「撃てぇッ!」

 鉄砲の一斉射撃が轟く。硝煙しょうえんで視界が遮られる中、又兵衛は自ら槍を取り、最前線で指揮を執っていた。

「怯むな! 敵は浮き足立っている! 突き崩せ!」

 その時、敵の側面から、一陣の旋風が巻き起こった。

 可児才蔵である。

 彼は部隊を持たない。たった一人で、敵の密集地帯へ飛び込んでいた。

「どけえッ! 笹の才蔵のお通りだぁ!」

 十文字槍が唸りを上げる。

 才蔵の戦い方は、教科書通りの又兵衛とは対極だった。槍の柄で敵の足を払い、石突きで顎を砕き、鎌で兜を引っ掛けて引き倒す。

 その動きは予測不能。まるで戦場という舞台で踊る、狂える鬼のようだった。

(……来る!)

 又兵衛は、才蔵の動きを見て直感した。

 才蔵が右へ敵を弾き飛ばす。その死角となる左側から、敵の騎馬武者が才蔵の首を狙っている。

 言葉はいらない。

 又兵衛は、手元の槍を投擲とうてきする構えを見せた。

 ヒュッ!

 銀色の閃光が走り、騎馬武者の胸板を貫いた。

「……ちっ、余計な世話を」

 才蔵は振り返りもせず、ニヤリと笑う。そして、お返しとばかりに、又兵衛に迫っていた歩兵の群れを、十文字槍の「払い」で一掃した。

 背中合わせになる一瞬。

「腕は落ちておらぬようだな、才蔵」

「お前こそ、少し太ったんじゃねえか? 動きが重いぜ」

 罵り合いながらも、二人の槍は完璧な円を描き、周囲の敵を寄せ付けない。

 数十年ぶりの共闘。

 それは、言葉よりも雄弁に、二人の魂が繋がっていることを証明していた。

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