第2話 真田丸の攻防、阿吽の呼吸
十二月四日、真田丸の戦い。
冬の寒空の下、徳川軍の猛攻が始まった。真田幸村が築いた出城「真田丸」には、前田利常らの軍勢が蟻のように群がっていた。
「撃てぇッ!」
鉄砲の一斉射撃が轟く。硝煙で視界が遮られる中、又兵衛は自ら槍を取り、最前線で指揮を執っていた。
「怯むな! 敵は浮き足立っている! 突き崩せ!」
その時、敵の側面から、一陣の旋風が巻き起こった。
可児才蔵である。
彼は部隊を持たない。たった一人で、敵の密集地帯へ飛び込んでいた。
「どけえッ! 笹の才蔵のお通りだぁ!」
十文字槍が唸りを上げる。
才蔵の戦い方は、教科書通りの又兵衛とは対極だった。槍の柄で敵の足を払い、石突きで顎を砕き、鎌で兜を引っ掛けて引き倒す。
その動きは予測不能。まるで戦場という舞台で踊る、狂える鬼のようだった。
(……来る!)
又兵衛は、才蔵の動きを見て直感した。
才蔵が右へ敵を弾き飛ばす。その死角となる左側から、敵の騎馬武者が才蔵の首を狙っている。
言葉はいらない。
又兵衛は、手元の槍を投擲する構えを見せた。
ヒュッ!
銀色の閃光が走り、騎馬武者の胸板を貫いた。
「……ちっ、余計な世話を」
才蔵は振り返りもせず、ニヤリと笑う。そして、お返しとばかりに、又兵衛に迫っていた歩兵の群れを、十文字槍の「払い」で一掃した。
背中合わせになる一瞬。
「腕は落ちておらぬようだな、才蔵」
「お前こそ、少し太ったんじゃねえか? 動きが重いぜ」
罵り合いながらも、二人の槍は完璧な円を描き、周囲の敵を寄せ付けない。
数十年ぶりの共闘。
それは、言葉よりも雄弁に、二人の魂が繋がっていることを証明していた。
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