間話 家康の溜息
徳川家康の本陣では、勝利の余韻の中で首実検が行われていた。
家康の前に、次々と首が運ばれてくる。その中に、異様な一群があった。全ての首が、口に青々とした笹を咥えているのだ。
「……これは?」
家康が問うと、側近が答えた。
「福島家家臣、可児才蔵の働きにございます。あまりに多くを討ち取ったため、自分の手柄の証として笹を含ませたとか」
「ほう……」
家康は、その奇妙な首を見つめ、やがて低く笑い声を漏らした。
「面白い。戦の作法もへったくれもないが、これぞ真の『武』よ。笹の才蔵か。覚えておこう」
家康の視線は、次に提出された論功行賞へと移った。そこには、黒田隊の目覚ましい活躍と、その先鋒を務めた後藤又兵衛の名が記されていた。
家康の眉が、わずかに動いた。
「……才蔵は野に放たれた虎。御し難いが、使いようによっては面白い」
家康は独りごちるように呟き、小さく溜息をついた。
「だが、後藤は違う。あれは、枠に収まりきらぬ龍だ。黒田の池には、少々大きすぎるかもしれんな……」
天下人の冷徹な目は、この大戦の功労者である二人の槍使いの未来に、すでに不穏な影を見て取っていた。
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