表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/10

依頼を受けてみましょう

 教会の中は広々とした造りになっている。

 今は廃墟になってしまった私の神殿と、どこか似た雰囲気を感じるわ。そのせいもあって、少しだけ居心地が良いと思えてしまう。

 そして建物の外壁にもあった髪の長い女性の彫刻と同じ者が、教会内部の奥の一番目立つ場所にも存在していた。

 おそらく、教会を象徴するシンボルなのね。

 慣れた足取りで、ヒオラは奥へと進む。広間の奥の受付と少しだけ会話を交わし、持ち帰った魔物の部位とお金を交換する。


「終わりましたか?」


「はい」


 戻って来たヒオラの満足そうな表情を見るに、充分な額にはなったみたいね。

 これで暫くは髪の毛を引き抜く心配は無さそう。


「ところで、サリアーゼ様」


 そしてヒオラが、1枚の紙を私に見せてくる。


「これは?」


 なになに? 依頼書?

 依頼書と、そう書かれているわね。

 近隣に出現した大型の魔物討伐の依頼みたい。募集人数は5人で、枠2つは既に埋まっていると。

 もしかして、この依頼を受けたいの? と確認するとヒオラは首を縦に振る。


「大型魔物の討伐ですか……」


 大型の魔物。あのキマイラもそれなりに大きな魔物だったけど、それ以上に大きいと言うことなのでしょうね。

 募集人数が5人と言うことは、私達以外にもあと3人が同じ任務に参加するのでしょう。

 5人で協力して魔物を討伐する。まぁ、悪くはないわね。

 信徒を探したい気持ちもあるけど、私の加護の素晴らしさを知らしめるためにも、ヒオラの力を見せびらかすのは効果的だものね。

 それに、どうやら報酬も悪くないみたいだし、お金はいくらあっても困ることはないし。


「では、2人でその依頼を引き受けましょうか」


 今度は私もヒオラと共に受付へと向かう。

 そして、依頼を受けたいことを伝えて依頼書を手渡すと、受付に立っている下民が少し困惑したように口を開いた。


「こちらの依頼は、五神の加護を持つ信徒様か神官様以上の方、若しくは三等級の冒険者様しか受けることは出来ません」


「え?」


 何よソレ。

 たかだか大きな魔物を倒すだけだって言うのに、どうしてそんな面倒くさい線引きが必要になるのよ。


「私は、偉大なる女神サリアーゼ様の信徒です。きっと大丈夫です!」


 フンスと豊かな胸を張って見せるヒオラ。でも受付の下民は少し困っているようだわ。


「で、では一応、右手をお願い出来ますか?」

「は、はい!」


 受付の下民に言われる通り、ヒオラが右手を差し出す。

「失礼します」

 そう言ってから下民は、ヒオラの右手を両手で包み込むように握った。二人の手を柔らかな光が包み込む。

 どうやら、ヒオラの持つ加護の力を確認しているみたいね。

 そして――


「す、凄いっ、な、何ですかこれ、し、信じられません……もしかして、女神様ですか?」

「え!? い、いえっ、私なんかがそんな……私なんか、こないだサリアーゼ様の信徒になったばかりで」

「え……」

「え?」


 暫く見つめ合う二人。

 そして、ヒオラの加護の力を調べ終わったようで、下民はそっと手を放す。


「女神様では……ない? これは一信徒が持つ御加護ではありませんよ。こんなの、女神様本人と言われた方がまだ」

「わ、私はサリアーゼ様の一信徒に過ぎません!」


 今はまだ……ね。

 本人にも言ったように、もっと信徒が増えれば、ヒオラには多くの信徒をまとめる存在になってもらうつもりだわ。


「そ、そうなのですね。す、すみません! とても素晴らしい御加護をお持ちなのは理解したのですが……決まりですのでっ」


 と、下民は丁寧に頭を下げる。

 ここでヒオラが自分のことを神官と偽れば、おそらく依頼を受けることは可能なのでしょうね。でもそれは、女神に信仰を捧げる信徒としては恥ずべき行為。女神の格を落とす行為でもある。そんなことをする信徒は、まぁいないでしょうね。


「あの、お嬢さん。少しよろしいですか?」


 このままではヒオラが選んだこの依頼を受けることが出来なさそう。

 ココは私の出番だわ。


「え、えっと、お嬢ちゃんは?」


 受付からぴょこっと顔を覗かせる。

 この下民。私の存在に気付いていなかったわね。ま、私の背が低いせいで、受付の向こうからは隠れよ見え難いのは分かるんだけどね。


「その依頼は、このヒオラと私が御一緒しますよ? それでも駄目なのですか?」


「コチラは、私が生涯信仰を捧げると誓った女神サリアーゼ様です」


「め、女神様御本人ですか!?」


 やっぱり、女神本人が姿を現すのはこの世界では珍しいことなのね。

 神官なら依頼を受けることが出来るのだから、女神の私なら尚のこと問題はないでしょう。

 そう判断して名乗り出てみれば、やっぱり私の選択は正しかったみたい。

 ヒオラと同じく、受付の下民に手を握らせてあげると、ヒオラの時以上に驚いていたのは少し笑えたけど、私のことを女神と信じてくれたみたい。

 こうして少しずつ、私の存在を下民達に知らしめて行きましょう。

 とにもかくにも、私とヒオラは大型の魔物の討伐依頼を引き受けることにした。


お読みいただきありがとうございます。

ポチッとしてもらえると、大変励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ