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もっと信徒を獲得しなければ

 

 神殿を出た私達は、ひとまずゆっくりと休める場所を探すことにした。

 どうやら、このサリシアと言う街はかなり大きいみたいで宿屋はすぐに見つけることが出来た。大きな街と言うことだけあって宿屋の数も多い。パッと目に止まった場所に入って受付を済ませる。

 勿論、今の私達は無一文。また髪の毛を一本引き抜き、金の玉に換えてお金の代わりに渡すと、若干引き気味に困らせてしまったけど、私のこの素敵な笑顔に免じて通してもらえた。


「す、すみませんサリアーゼ様。女神様に代金を払ってもらうことになるなんて……」


「良いのですよ。今の私に信徒はヒオラひとり。暫くはふたりで協力して行かなくてはね」


 申し訳無さそうに縮こまるヒオラを連れて部屋へと入る。

 悪くない部屋。暫くは使っても良いみたいだし、あの受付の下民、なかなかに分かっているじゃないの。


「と、ところで……サリアーゼ様は神殿をお持ちでは無いのですか?」


 と、少し落ち着いたところでヒオラからあまり触れては欲しくない質問が飛び出た。

 ま、仕方がないわ。どんな女神も、神殿を持っているのが普通みたいだしね。

 勿論、私にも神殿はあるにはある。ソレも広大で立派で、私の力を存分に誇示する程の物だったけど――今は廃墟だ。


「あるにはあったのですが……少し古くなってしまって、とても使える状況ではありません」


「そうなんですか?」


 不思議そうに首を傾げるヒオラ。

 今のこの世界の女神をよく知るヒオラにとっては、私という女神はさぞ不思議な存在なのでしょうね。

 ヒオラには、私のことを知ってもらうために全て話しておきましょうか。


 ◇◇◇


「えぇ!? サリアーゼ様は、500年前の女神様なのですか!?」


 全て包み隠さず話すと、ヒオラは心底驚く。

 500年前はほぼ全ての下民が私を信仰していたと言うのに、今は誰もいない。今日、新たに私の信徒となってくれた目の前のヒオラただひとり。本当、泣きたくなるわね。


「そ、そんなに凄い女神様だったのですね」


「今では私の信徒はヒオラひとり……悲しいですトホホ」


「大丈夫です! サリアーゼ様が素晴らしい女神様なのは、加護を授けてもらってよく分かりました! 私がいっぱいお金を稼いで、立派な神殿を建てて見せます!」


「ありがとうございます。でも、あなた一人では大変でしょうから、これからもっと信徒を増やして皆で頑張りましょうね」


 そう。もっと信徒を増やす必要があるわ。

 私の力を取り戻すためにも、もっと信仰心を集めなければ。可能なら、全盛期の私よりも更に強く美しくなる程の信仰心を集めたいわね。

 人間の数が増えたこの時代なら、きっとそれも可能な筈。

 良いわ。今は別の女神を信仰している下民にも私の素晴らしさを知らしめて、私の信徒としてあげましょう。


「信徒の数が増えれば、ヒオラには神官……いえ、ゆくゆくは神官長を超えて大神官になってもらいましょうか」


「え、えぇ!? 私がですか!? そ、そんなの無理ですよ!」


「あら? ヒオラならきっと大丈夫だと思いますよ?」


 もっともっと先の話だけれど、加護を得たばかりであれ程の魔法を扱って見せたのだから……ヒオラにはそれだけの資質がある筈。

 何より、役職は信頼の置ける信徒に任せたいものね。

 もう、裏切られるのは御免よ。

 もしまた裏切られでもしたら、女神にあるまじき行為に走ってしまいそうだわ。それだけは絶対にあってはならないのだから。


「そのためにも、今はやっぱり信徒を獲得しなければなりません。明日はお金を稼ぎつつ信徒に出来そうな人がいないか街で探してみましょう」


「はい! サリアーゼ様!」


 信徒も必要だけど、お金も必要よね。

 いつまでも髪の毛を引き抜く訳にはいかないし、貧乏な女神と思われるのも気分が良くないわ。

 はぁ、ほんと、どうしてこんなことになってしまったんだか……。


 ◇◇◇


 女神の信徒となった者が手っ取り早くお金を稼ぐには、やっぱり魔物退治なのだとヒオラは言った。

 私の加護を獲得したヒオラは、それはもう以前とは違ってありとあらゆる魔物を簡単に倒してしまう。


「凄いです、ヒオラさん」


 パチパチパチと、思わず拍手してしまうわ。流石、私の加護ね。


「サリアーゼ様の御加護のおかげです」


 うんうん。分かってるじゃない!


 先日倒したキマイラと言う魔物に加えて、小さな魔物も何体か。

 これは大漁と言うやつだわ。

 これだけあれば暫くはお金に困ることはないでしょう。お金って、簡単に稼げちゃうのね。

 魔物を倒した証明となる部位を回収し、私達はさっさと街へ戻る。

 街の様子は、昨日とは少しだけ違っていた。

 女神レイニアの神殿が取り壊しになってしまったからだ。街の住民の間で、それがちょっとした騒ぎになりつつある。

 女神レイニアの神官が信徒を騙していた。そんな噂がこの街の下民の間に流れつつあり、この街での女神レイニアに対する信仰心が失われつつあるみたいね。

 良いじゃない。これはチャンスだわ。

 女神レイニアの神殿が取り壊しになって、この街の下民は新たに信仰する女神を求めているに違いないわ。つまり、次の信徒を選びたい放題と言う訳だわ。


 うふふふふ。


 思わず笑ってしまいそうになるのを我慢しつつ歩いていると、目的の場所に到着した。


「着きましたサリアーゼ様。教会です」


 魔物を討伐した報酬としてお金をもらう場所。

 でも基本的にこの教会は、困り事のある人が相談に来る場所。その困り事は依頼として受理されて、誰かが引き受け解決すると、その人に教会を通じて報酬が支払われたりするらしい。

 昨日も来たけど、相変わらず立派な建物だわ。

 教会のシンボルなのか、建物の一番目立つ場所に髪の長い女性のシルエットが彫刻されている。昔の私に似て、魅力的な体型の女性だ。

 うん。なかなか良い趣味をしているわ。

 そんな立派な教会に、私とヒオラは再び足を踏み入れる。

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