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従順なる1人目の信徒 2

 

 ヒオラが、取り出したナイフの刃を先程倒した獣の角に押し当てる。そして一生懸命に力を加えてようやく、角を切り取ることに成功した。

 見た所によると、僅かな魔力をナイフに宿すことで鋭利さを増強させているみたいね。


「あなた、魔力を持っているのですね」


「? は、はい。でも……私の魔力じゃこんなことくらいにしか使い道はありません。女神様の加護がないと、私なんか……」


 そう言いながら、切り取った角を革袋の中に大事そうにしまい込む。

 聞いてみれば、魔物を討伐した証となる物を街のしかるべき場所に提出することで報酬がもらえるらしい。


「何の取り柄もなくて、行く場所の無い私を迎え入れてくれたのが、レイニア様の神殿だったんです。加護のおかげで魔法まで使えるようになったんですけど」


 と、ヒオラは無理に笑顔を見せてくれる。うっすらと目尻に涙が浮かび、光を反射した。


「そうですか。そのお金でまた、神殿に戻れると良いですね」


「はい!」


 どうやら、この時代の女神は幾つかの神殿を所有していることが多いらしい。偉大な女神であればある程、神殿の数が多く、規模も大きくなり信徒も多いみたい。ま、例外もあるようだけど。

 そして女神レイニアは、それなりに有名な女神に数えられるみたいね。神殿もかなりの数が存在しているらしいし。


「それじゃ、街まで戻りましょうか。一緒にさっきの神官に話をしに行きましょう」


「で、でも……良いんでしょうか? 他の女神様が神殿の中に入るなんて、聞いたことがありません」


「良いんじゃないですか? 既に一度入っていますし」


 それに、向こうは私のことを女神などとは露程も思っていないでしょう。言っても信じてもらえそうにないし。


「では、街まで戻るまでのあいだ、少しあなたのことをお聞きしてもよろしいですか?」


「は、はい! 私のことなんかで良ければ!」


 本当に良い子だわ。

 どこの馬の骨とも分からない女神の信徒にしておくには勿体ないくらいね。


 それから私は、ヒオラと二人仲良く街まで戻ることにした。


 この子の名前はヒオラ。年齢は17歳で、どうやら家族はいないらしい。女神レイニアの加護を授かってからは、恩恵を利用して稼いだお金の殆どを神殿に献上していたという話。どうりで、加護を受けていたと言うのに少し見すぼらしい格好をしている訳だわ。


「それで、ここ最近で神殿が大きくなってからは扱いがぞんざいになり、遂には追放されてしまったと言う訳ですか……」


 なんともまぁ、同情出来る話だわ。

 それよりも、今の女神が信徒からお金を巻き上げていることに驚くわね。


 いや、話を聞いている限り……女神と言うよりかは、あの神官ね。

 ヒオラが言うには、女神レイニアが信徒の前に降臨したことを見たことが無いらしいし。

 あの神官が、神殿では絶対的な権力を持っているように思えるわ。


 と、そんなことを考えているうちに、どうやら街に着いたみたい。


 ――サリシアの街。それがこの街の名前だと、ヒオラが教えてくれた。


「それじゃぁ、神殿に行きましょうか。と、言いたいところですけど……」


「……?」


 まじまじとヒオラのことを観察してみる。

 うん。やっぱりこうしてちゃんと見てみると、物凄い美人さんね。顔立ちは整っているし、スラリとスタイルも良くて、私程では無いけれどかなり魅力的な身体つきをしているわ。

 髪がボサボサで、小汚い格好さえしていなければ、きっと人気者になれるに違いないわ。

 いずれ私の信徒になるのだから、コレは先行投資が必要かしらね。


「少し、身なりを整えてからにしましょう。神殿に戻るためにも、清潔感は大切でしょう?」


 パン! と両の手のひらを合わせる。


「え、でも私、そんなお金……」


「大丈夫ですよ。私に任せてください!」


 やっぱりこの時代にも、人の身なりを整えたり、お色直しをしてくれるお店が存在しているみたいね。


「さぁ、行きますよ」


 ヒオラの手を取り、歩き出した。

 向かった先は、髪を整えたりカットしてくれるお店。美容室。


「ウンと綺麗にしてあげて下さい。料金は、コレで足りますね?」


 私は髪の毛を1本、プチンと引き抜く。するとあら不思議、その髪の毛はクルクルと丸まり、やがて金の塊となった。

 このお店の下民はさぞかし驚いていたけど、ソレが本物の金の塊だと分かれば、快くヒオラを案内してくれた。

 何かの魔法だと思っていたのがムカつくわ。コレは偉大な女神である私だからこそ出来る所業だと言うのに。


 その後、ヒオラに合う服や装飾品を購入していった。


「ど、どうでしょうか」


「よくお似合いです。女神レイニアの信徒に相応しく綺麗になったのではないですか? コレならきっと、神殿に戻れますよ」


 うんうん。とっても綺麗。

 ボサボサだった髪は綺麗に整えられ、緩くふわりとお上品に仕上がっているし、服装も彼女の雰囲気にあった落ち着いた色合いを選んでもらった。


 いずれ私の信徒として私に付き従うのだから、これくらいは当然よね。


「では今度こそ、神殿に行きましょうか」


 の前に、まずはヒオラが倒した獣から取った部位を、お金に交換しなければね。


「行きましょうか」


 私達は仲良く、歩き出した。


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