ウインドミラクル打法
まだあわてるような時間じゃない?
秘密子先生は、バットをかついで教室に入ります。
「今日の午後の授業は、ソフトボールにします!ざわ…ざわ…
私、球技はバスケしか経験ないけど。いちばん
完成度が高いのは野球かなって思っていまして。
習うより慣れよの精神で、一緒に学びましょう!」
秘密子先生の授業スタイルはいつもこんな感じです。
トップダウンでもボトムアップでもなくて、課題を
持ってきて生徒たちと議論しながら答えを探します。
全員参加のフリースタイルバトルみたいなものです。
「そうと決まれば、善は急げですよ。体操服に
着替えたら体育館に集合ね。インドアでもいい
のがソフトのいいところよね。異議はないわね?」
鬼谷子「やれやれですわね」
生徒たちはあきれながらも教室から移動します。
「今回はバッティングの練習をしてみましょう。
私キャッチャーやるから闘戦子ちゃんが投げて。」
闘戦子「まっすぐいくわよ」ズドーン
「うん。期待どおりの剛速球ね。スカウターが
壊れちゃいそうだわ。見事なウインドミル投法
ってやつよね。じゃあ、順番に打席についてね。」
孔子「やさしくなげてよ」あえなく三振
孟子「ガンガンうつわよ」ごうかい空振り
荘子「あんぜんだいいち」みのがし三振
墨子「あらそいよくない」いとてき空振り
孫子「とにかくよけるわ」にげごし三振
荀子「フォームだいじに」どうどう空振り
朱子「りろんがだいじよ」あっさり三振
韓非子「こんなのはんそく」やっぱり空振り
陽明子「ぜんしんぜんれい」げんきに三振
「みんな情けないわね。まあでもこれは簡単には
打てないわよね。じゃあ、最後に鬼谷子ちゃんね。」
鬼谷子ちゃんはふだんあまり積極性はありませんが
いざというときには、必ず決めてくれる存在でした。
それでも、鬼谷子なら、きっとなんとかしてくれる…!!
生徒たちの熱い視線が、彼女の背中に集まりました。
闘戦子「てかげんなしよ」
鬼谷子「のぞむところよ」
闘戦子はすさまじくパワフルなボールを放ちました。
鬼谷子もそれを力強くバットの芯で受け止めました。
そしてついにゆっくりとボールの圧力を押し返して。
打球は壁と天井を勢いよくひし形に跳ね返りました。
さらに最後に床に落ちたボールがなんとバスケット
ゴールを下から通過したのでした。なにこれすごい。
「これヒットなの?ホームランなの?わかんないけど
えらい勝負だったわ。もう二人とも勝ちでいいわよね。」
こうしてクラスの絆は、ふんわり強くなったのでした。
イメージソング。
Outkast「Player's Ball」。
https://youtu.be/v8vkjU5O6n8?si=6kxGB0XiT01uC7OD
前回のお話。
「ウェンズデイ・マジック」。
https://ncode.syosetu.com/n1674ki/
次回のお話。
「サイレント・シーキング」。
https://ncode.syosetu.com/n3777ki/