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Billieve  作者: sakura
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第2話「二度目の災難」

 優君と別れてから3ヶ月が経った。時が流れるのはあっという間だと、改めて実感した。あの時のことが原因で、私は、人を簡単に信じられなくなってしまった。

 学校に行っても、家に居ても、いつも人の目を気にしてしまう。

 そんなんじゃなかったのにな。

 今の私は、本当の私じゃない。

 

 今日は、久々に親友の芹沢 絢と会う約束をしていた。絢とは幼稚園から一緒で、唯一幼馴染といえる関係。

 待ち合わせた家の近くのファミレスに来たが、まだ絢は来ていない。

 私は、温かいスープを注文した。

 10分ほど待った。

 注文したスープを持ってウェイトレスが来るのと、絢が来るのは、ほぼ同時だった。

「ごめん萌。遅くなっちゃった。随分待ったよね?ホントにごめん!」

 絢は走ってきたはずなのに、全然息が乱れていなかった。

 もしあの時、今の絢と同じように、「ごめん優君。遅くなっちゃった。随分待ったよね?ホントにごめん!」って言えたら、優君は「別れよう」なんて、言わなかったかな?

 その時、誰かに思い切り肩を掴まれた。

 その「誰か」は、絢だった。

「萌!?何考えてるの?何かあった?どうしたの?ウェイトレスさん、萌が注文したスープ持ってきてくれたのに、萌が何にも反応しないから、スープだけ置いて、戻っちゃったよ?」

「えっ?あぁ、絢。ごめん。あの……何でもない。何でもないよ」

 気が付いたら、私がさっき注文したスープが目の前にあった。

「何でもなくないよ。いつもの萌じゃない」

 やっぱり、幼馴染には、何でも分かっちゃうのかな。

 絢には、3ヶ月前に私が優君に振られたことを、言っていない。絢に言ったら、毎日メールとか電話とかくれて、迷惑掛かっちゃうから。

 だから、絢の前では、必死で普通の様に振る舞った。

「本当に何でもない。絢も何か頼めば?」

 声が、かすれそうになった。絢に嘘をついたのは、これが初めて。いつもは、どんな小さなことでも、絢には正直に話していたのに。

 絢は、コーヒーを注文した。

 そのコーヒーが運ばれてくるまで、私達は一言も言葉を発しなかった。

「お待たせしました。コーヒーです」

「あ、どうも」

 絢が、笑顔でお礼を言う。

 そういえば、最近笑わなくなったな。

 絢は急に真面目な顔になって、私の目を、目正面から見据えた。

「萌。お願い。私にだけは話して。小学生の頃、隠し事は無しって、言ったじゃない」

 私は、何も答えることが出来なかった。

 その時、都合良く携帯に電話が掛かってきた。

 電話は、バイト先の上司、松宮 悟さんからだった。

 私は、絢に断って、一度席を外した。

『もしもし、朝風です』

『あ、萌ちゃん?俺。今暇?』

『あの……はい、暇です』

『今から会える?』

『はい。全然大丈夫です』

『じゃあ、駅前のファーストフード店で待ち合わせでいい?』

『はい。了解です』

 電話を切った時、私は、正直ほっとした。

 絢から逃げる口実が出来た。

 席に戻り、絢に用事が出来たことを伝えた。

「ごめん絢。私用事出来ちゃって……。また今度話すね。お金払っとくから」

「えっ?あ、うん。ありがと。気を付けてね」

「じゃあね」

「バイバイ」

 絢は、またも笑顔で「バイバイ」と、別れの言葉を言った。


 私は、待ち合わせたファーストフード店に、早く行ったつもりだったのに、松宮さんの方が、早く来ていた。

 女より、男の方が待ち合わせ場所に来るのが早いのかな。

「松宮さん。遅くなってすみません」

 優君に振られてから、バイトを休んでいた。

「いや、全然。今日は、萌ちゃんと二人だけで話したくてね。もちろん仕事の話だよ」

 私は、出版社でバイトをしている。でも、全然仕事はこなせていない。

 何となく、松宮さんから目を逸らし、俯いてしまった。

「萌ちゃんには、うちの会社を辞めてほしいんだ」

 予想通りの言葉が、松宮さんの口から発せられた。

「はい、分かりました。今までお世話になりました。今日、辞表書いてきます」

「辞表はもうあるよ。俺が、君の筆跡真似して書いた」

 分からなかった。そこまでして、私に辞めてもらいたかったなんて。

「もう来なくていいから」

 そう言って、松宮さんは席を立ち、お金も払わずに出て行ってしまった。

 今年になって、二度目の災難だった。


 

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